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【シリコンバレーの視点】

先日行われたアメリカ大統領選挙で共和党のドナルド・トランプ氏が勝利し、その選挙結果によって世界の金融市場が大きく揺れた。大統領選でのトランプ氏優勢の速報が伝えられると、ビットコインの価格は上昇を始め、就任演説を行った11月8日には直近4か月の最高値$740を付けた。

多くの市場関係者は、同氏のマイノリティに対する差別的な発言や中国やメキシコへの弾圧的な発言などから経済に悪影響を及ぼすのではないかと懸念を示していた。その証拠に、日本市場では大きく円高に振れ、日経平均は1000円以上下落した。しかしトランプ氏の大統領就任演説ではこれまでの過激的な発言から一転し、同盟諸国との融和について言及したことから、アメリカ市場では大きなパニックが起こらず日経平均も翌日には回復した。

ポピュリズムと隠れ支持者

選挙期間中、多くの米メディアはトランプ氏を「暴君」と表現し、悪の印象を植え付けようとしていた。その裏には、同氏が当選した後の経済不安を想定しての行動であったと推測される。しかし、その結果として、表立って同氏をサポートすることができない多数の隠れトランプ支持者を作り上げた。

事実、筆者が住むカリフォルニア州では、同氏のサポートを口にするだけで人々の反感を買い、時には口論に発展する場面も見られた。選挙前の事前調査にて、大方の予想が共和党のクリントン氏の優勢を伝えており、今回の市場での一時的なトランプ・ショックが引き起こされた原因となった。隠れトランプ支持者が表層に出てこなかったことが、大番狂わせを引き起こしたといっても過言ではないだろう。

今回の選挙結果はアメリカの不安定な社会情勢を表している。多くのトランプ氏の支持者は労働者階級であり、特に低所得者層からの支持を集めていた。同氏の支持者は既存の金融システムや政府に対し不信感を持っており、30 年間政治機関のトップとして活動していたクリントン氏よりも、劇薬的なトランプ氏のショック療法による経済システムの立て直しを期待したようだ。同氏は年収が約250万円以下、または世帯年収が約500万円以下の所得者には所得税を免税すると公約していたため、この層からの支持が厚かった。選挙後、ダウ平均株価で最高値を更新しながらも、このような政策に注目が集まることに、市場参加者と一般市民の生活水準の違いが見受けられる。

米国回帰とシリコンバレーの反目

また、トランプ氏は行き過ぎたグローバリズムがアメリカ人の労働者階級の仕事を奪っていると公言し、TPPなど自由貿易協定に対して保護主義的な立場を取っている。事実、グローバリズムは他国に富を分配させるかわりに、国内での商品製造は減り労働者の行き場を失わせてきた歴史がある。グローバリズムで恩恵を得てきたのは、経営者階級の一部の人々であり、現在の富の集中や賃金格差につながった。同氏は法人税の最高税率を35%から15%に減らすことも公約に掲げており、企業のアメリカ回帰を狙っている。

とりわけ興味深い点として、大統領選が終わった日の翌朝、FacebookやAmazon、Netflix、Googleなどのネット関連株が軒並み暴落したことにも触れておきたい。巷では「ネットバブル崩壊」と騒がれるまでに発展したが、筆者の肌感としては少々大げさだ。しかし、シリコンバレーの企業とトランプが対立しているのは間違いないだろう。トランプ氏は中国からの輸入に対して45%の関税を掛けると公言していたことから、これが実現すると、アップルなど中国に製造工場を移している企業は大打撃を受けることになる。また、移民に対する風当たりが強くなることも予想されるため、これまで以上に就労ビザの発行が渋ることも懸念される。既にシリコンバレーの企業に多数在籍する非米国籍のIT開発者に対しても、就労ビザの更新審査が厳しくなる恐れがあることも、マーケットが反応した要因のひとつかもしれない。ただし大統領就任後、どのような政策が行われるかは未知数であるため、単なる予想で終わる可能性も当然ある。

大統領選が注目を浴びる一方、米国各州では住民投票も同時に行われた。カリフォルニア州では大麻を嗜好品としての売買が合法化され、一部のヒッピー思想を持つ若者などはこの結果を歓迎している。筆者の周りの若い世代のアメリカ人の間では吸ったことがない人を探す方が難しいほど社会に浸透している。これは特にカリフォルニアという新しいものを常に受け入れるヒッピー思想やリバタリアン思想を持つ人々が多く暮らしているからだろう。 また他の面白い住民投票としては、アメリカンポルノの作成にあたりコンドーム装着の義務化を目指した提案が否決されている。

今回のアメリカ大統領選挙もそうだが、先日のイギリスのEU離脱なども踏まえると、グローバリズムによる一部の権力者階級の富の支配にその国に暮らす一般市民が耐えきれなくなってきているように思える。そこでビットコインのようなどの政府にも管理されない、全く別の金融エコシステムに需要が集まっていることは必然的なのかもしれない。もちろん、既存の金融システムや政府システムに非があるわけではない。だが、個々の人々が持つ多様性に合わせた政策を実行するのは極めて難しいのが現実だ。

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