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今月9日10日の二日間、パリで「Breaking Bitcoin」が開かれた。Breaking Bitcoinはビットコインのセキュリティに焦点を当てたカンファレンスで、スピーカーにはPeter ToddやAdam Backなどの著名な開発者が名を連ねた。スピーカーのトップバッターを務めたビットコイン開発者Jimmy Songの講演「Socialized Costs of Hard Forks(ハードフォークの社会的コスト)」が興味深かったので、本記事ではその内容を紹介する。

フリーランチはフリーではない

8月に発生したビットコインキャッシュのハードフォーク以降、BTC+BCHの合計価格は大きく上昇した。7月の警戒ムードから一転して、8月のビットコイン市場はお祭り騒ぎであった。BTC価格の10%を超える価値をもつBCHがタダでもらえた上に、SegWitアクティベーション効果もあってかBTC価格も大幅に上昇したため、ビットコインのハードフォークに対して好意的な意見を表明する人も多かったように思う。

そのような状況の中で、Jimmy Songはハードフォークの是非を論じる上で重要なコストについて講演を行った。彼の主張は「BCHはフリーランチのように見えるが、実際には一時的コストと永続的なコストの両方がかかっている」というものだ。

講演では、経済学における外部性という概念を用いて説明を行っている。外部性とは市場での取引を通さず、別の経済主体の効用関数に影響を与えることである。正の影響を外部経済、負の影響を外部不経済という。ハードフォークに伴う外部経済は明確に金銭的リターンのことだ。ユーザーは資産を、マイナーはマイナー報酬を、取引所はビジネスの機会を増やした。ではハードフォークによる外部不経済とは何だろうか?

一時的なコスト

Jimmy Songによれば各ステークホルダーに対する一時的なコストには以下のようなものが含まれる。

  1. 取引所
    • 入出金の停止
    • コールドストレージ対応
    • 新しいソフトウェアの監査
    • 新しいトークンの出金対応もしくは上場
    • 新しいインフラ
  2. 商業利用ならびに支払手段提供者
    • 支払いの一時停止
    • チェーンの識別
    • 新しいインフラ
  3. ウォレット開発者
    • チェーンの識別
    • コインの分割機能(一つのアドレスから二つのコインを別々に取り出す機能)
    • 新しいトークンのサポート
  4. マイナー
    • ハッシュパワー振り分けアルゴリズム開発(収益最大化のためのハッシュパワーの自動振り分け)
  5. ユーザー
    • コールドストレージ対応
    • プライベートキー管理
    • プライバシーの喪失

取引所や支払手段の提供者に対するコストに比較して、ユーザー側が強いられるコストが圧倒的に小さく見えることも、ハードフォークに対する是非が論じられにくい一因だろうか。

永続的コスト

永続的コストはハードフォーク発生後も存在し続けるコストのことで、これらは今後ビットコインネットワークにおいても顕在化してくる可能性がある。

  1. 同一のアドレス
    アドレスによる識別が困難なため送受信時に混乱が生じる。
  2. 信用できないブロック
    想定されたブロックタイムでされないブロックによるネットワークの遅延、手数料の高騰が発生する。
  3. Reorg Attackの容易化(Reorgとはリオーガニゼーション=再編成の意味で、分岐したネットワークが一つに戻ること)
  4. Chain Hopping Attack
    ビットコインとビットコインキャッシュビットコインの採掘難易度や価格に依存する収益性に応じて、マイナーがハッシュパワーの振り分けを変更することでネットワークが不安定になる。
  5. プライバシーの喪失
    同一のアドレスに二つのコインが生じることにより、個人を特定するためのデータ(=チェーン)が倍になる。この意味でJimmy Songはエアドロップにも警戒が必要であると述べている。
    ※エアドロップは特定のコインの保有を条件に、その保有量に応じたコインが無料で配布されること。ByteballやStellarのエアドロップが有名。
  6. リプレイアタック
    リプレイアタックは分岐したチェーンの両方で有効になるトランザクションを悪用することにより、取引所等から意図しない形で二つのコインを送信させる攻撃のこと。ビットコインキャッシュにはリプレイアタック対策がなされていたのでリプレイアタック被害は発生しなかった。

ハードフォークの魅力

  1. オルトコインとして有利なローンチ
    多数のユーザーが存在、特別なマーケティングが不要。
  2. 素晴らしいコード
    最も開発が進んでいるビットコインのコードを基盤に開発できる。
  3. フェアなディストリビューション
    最も広く使用されているビットコインユーザーに配布できる。
  4. 受託者義務のハック
    ビットコインを取り扱う各取引所には受託者としての義務が生じるため、ユーザーのビットコインキャッシュを配布する必要がある。
  5. その結果、各取引所への上場も容易になる

ハードフォークの是非は

今回の講演では語られなかったがハードフォークのポジティブな側面もあるだろう。ビットコインでは思想を異にする開発者の離脱、あるいは離脱という選択肢の発生により、長年アクティベーションが叶わなかったSegWitがついに実装されることとなった。

ハードフォークには常にネットワーク分裂の可能性がある。ハードフォークの合理性についてはセキュリティのみならず経済性や市場へのインパクト等、様々な要因を考慮に入れた研究が今後もなされていくだろう。


Breaking Bitcoin
Socialized Costs of Hard Forks

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