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本寄稿は、Pavel Kravchenko氏のブログ記事の翻訳です。Kravchenko氏はDistributed Labの共同創業者で、openbankITをはじめインターネット・マネーのためのオープンソースプロジェクトに携わっています。

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未来について考えるのは良いことだ。我々は常にそうしてきた。金融業界に多かれ少なかれ関係している人々に質問を投げかけると、2050年までに小切手を使うのを諦めて、ペイメントがWhatsappくらい簡単になるということに大半が同意してくれる。

つまり、こういうことだ:

  • すべてのペイメントがデジタル化する
  • すべてのペイメントが一瞬になる
  • お金の移動が自由になる
  • すべての取引がプライベートになる(なんらかのKYC/AMLを通じて)
  • 資産の出自が証明できる
  • ユーザーが資産の究極的なオーナーになる

※筆者は最後の項目について懐疑的だ。

はじめに

暗号通貨(ビットコイン)が登場したとき、まさに未来の素晴らしいプロトタイプだと感じた。

ビットコインの移転は、(通常は)ほぼ瞬時だし、格安で(はじめの頃は少額決済だった)、プライベートかつ(深く調べない限り)、透明で(Moneroは除外して)、技術的に、ユーザーは彼ら自身の資産をコントロールできる(ハードフォークがなければ)。

初期に多額の投資を行なった多くの人々は、ビットコインの素晴らしい未来が、2~5年ほどで到来すると信じていた。そして彼らは、ビットコインが以下のような日常生活の多くを置き換え、人々が利用すると考えていた:

  • あらゆる事に課金する銀行
  • 規制
  • 富の偏在
  • 第三者による、意図しない富の損失

初期のビットコイン支持者と、初期の投資家/所有者グループとのメンバー構成がかなりの割合で重複しているのは偶然ではない。多くの人々がビットコインを使えば、その分だけ価格をより高く押し上げる。これは自明である。それゆえ、彼らのような「ビットコイン富豪」は声高に、コインの輝かしい(そして差し迫った)普及と成功物語を語った。あまたの暗号通貨が誕生したのは、これが理由のひとつでもある。新しいコインのクリエイターとなり、その人気を勝ち取ることが出来たのならば、あなたは晴れて富豪の仲間入りを果たすことになるからだ。

ビットコインは今や、180億ドルの時価総額に達した。そしてニュースを通じて、数億人がそのことを知っている。にも関わらず、なぜだか知らないが、ビットコインはそれほど広まっていない。昨年夏に発表されたChanailysisのレポートは、大多数のビットコインユーザーは、投機か、グレー経済で利用していることを指摘している。

その理由は、以下のとおりだ:

  • グレー経済でビットコインの実需がある
  • 多くの国でビットコインの法的な地位が確立されておらず、イメージが悪い
  • ボラティリティが高すぎる
  • ビットコインの所有に関わる、高い紛失率(99%の所有者が、少なくとも1度は紛失・盗難に遭ったことがあるのではなかろうか)

悪意を持った人々は、ビットコインが法的地位を確立するまで利用を避ける。そして、善人はビットコインが違法になるのではないかと思い、利用を避ける。

また、ビットコインをグレー経済で利用できると考えるごく少数の人間は、現在既にそれを利用していると私は考えている。ビットコインの成長可能性について考えてみてほしい。いずれにしても、制度が整わない限りは1000万ドル単位の資金流入は起こりにくいのではないかと思う。今は、であるが。

まとめると、私の意見は次のとおりだ。ビットコインは偉大な発明であり、大きな可能性を秘めている。主な理由は、 — 最も重要な問題を解決しうること — 、早く、安く、トラストレスで、匿名の国際的な資金移動手段として成功するということだ。これはビットコインならば実際に解決できる。

誇大広告

中央が不要などといったビットコインの利点のいくつかは、主要な銀行、当局にとって明らかに不愉快に映ることだろう。たとえ一部の銀行がビットコインを嗜好したとしても、当局が認めない限り、殆どの場合彼らは決して活用することはない。

ビットコインによりもたらされるのは、分散型システムだ。高額の資産を自己で管理し、自律的な牽制と統治を実際に行うP2Pプロトコルだ。

ふたつの人々のグループ(銀行のバジェットの一部を奪いたいテック・ドリーマーとビットコイン熱狂者)は、2015年頃から話題をすり替えブロックチェーンについて話しはじめた。一部の人々はビットコインについて話すかわりに、より政治的な用語として「ブロックチェーン」を選び、そして「ブロックチェーン・ペイメント」という言葉を発明した。これは”HTTP payment”や”.NET payment”と言うのと同じように、支離滅裂だ。

「ブロックチェーン」が異なる人々により、異なる解釈のされかたをしているという事実は、あまりに多くの混乱を生んだ。ブロックチェーンに熱狂する人々は、それが数億人の人々に信用と幸福をもたらす奇跡の賜物だと考えている。私の定義において、彼らが「ブロックチェーン」について語る時は3つのグループに分けられると考えている:

  • ビットコインのブロックチェーン
  • 技術としてのブロックチェーン
  • いくつかのプロジェクトにおけるブロックチェーン技術の実装

定義の混乱に加え、メインストリームメディアは、あまりにも用語の利用に注意を欠いている。多くのメディアが展開する長談義は、ビットコインと、純粋な技術としてのブロックチェーンをごっちゃにしている。あまりにも大げさで、事実に基づかない間違った期待でハイプを誘発している。

抵抗勢力

ブロックチェーンを本当に理解している人々は、「国家政府がブロックチェーンに置き換わる」「銀行がブロックチェーン・ペイメントを採用した」「ブロックチェーンは変更履歴を不変にする」のような言葉を聞くと怒りを露わにする。こんなことだから、世界的にブロックチェーン技術の採用があまりにも進まないことに気がつくべきだ。そうした話を展開する人々は、キメラのようにブロックチェーンを語り、銀行や政府ののすべての活動がブロックチェーンに接続されるなどという幻想を抱く。

私は、プライベート・ブロックチェーンのコンセプトはもう少し広いと考えているが、多くの人々が先進的なデータベース技術と然程変わりがないということを話しているのを多々耳にしてきた。しかし、この議論に関係なく、コアバンキング、プロセッシング、ウォレットソフトウェアの市場は、すべての暗号通貨を合計した時価総額よりも遥かに大きい。銀行は、彼らの技術を近代化しなければならないことに気がついている。ビットコインのおかげで、銀行は何かをすぐにでも変えられることを理解している。そして、銀行はそこに競争があり、インターネットによりビジネスモデルがいかに変化したかも知っている。

定義

ブロックチェーンは、広義には互いに信頼を必要としない、未知数の組織間で共有台帳の状態に関して合意に達するためのメカニズムのことをいう。

ブロックチェーンとビットコインとは直接比較すべきでない。それは、たとえばC++とWindowsXPを比較する、あるいはHTTPとWhatsappを比較するようなものだ。

金融マンの期待

今、改めて思考実験を行い、金融マンにブロックチェーンの利点についてどう考えているのかを尋ねるには頃合いだろう。私は、彼らが次のようなキーワードを思い浮かべているのではないかと考えている:

  • 安い
  • 早い
  • 安全
  • 透明性… え?

インフラストラクチャ

基本的に、金融マンたちは実際のところインフラについて話している。それ以上に複雑で重要なことはない。インフラとは、会計、紛争解決、バックアップ、「その他」のことだ。

余談ではあるが、「インフラとしてのブロックチェーン」(Blockchain as Infrastructure)の機能的なポテンシャルは、多くのスタートアップがイーサリアム上に構築しようとしている顕著な理由だと私は考えている。セオリー通りにいえば、インフラとしてのブロックチェーンは常にインフラ開発者の頭を悩ませる問題を排除してビジネスを走らせることができる。彼らのロジックは、「私はインフラのことを知りたいとは思わない。スマートコントラクトだけがほしい」ということだ。私はこれを、「インサリアム」(Inthereum)と呼んでいる。

そう、私はこの点においてビットコイン熱狂者やビットコインエキスパートとは完全に異なる見解を持っている。

しかし、銀行が理解する「プライベート・ブロックチェーン」は、私が意味するところのブロックチェーンとも違う。なぜなら、そこにお互いに信頼を置かない複数の組織は存在しないからだ。「ブロックチェーン」は、金融業界において分散化を意味することはない。その用語が銀行に広く知られた時、「ブロックチェーン」は銀行にとっての「変化と革新」(Change and Innovation)を意味するようになったと私は理解した。

ブロックチェーンが失敗している理由

今、日常生活の中で周りを見渡して「ブロックチェーン」を探したとしても、実用的なものは何もない。少数の企業は、現在のデータベース技術よりも高価なブロックチェーン・メカニズム(プライベート・ブロックチェーン)を正式に開発した。それは彼らの業務プロセスをいくらか効率化し、改善するだろう。しかしがながら、組織全体として見た時、その影響は軽微なものに限定されるということも付記しておかなければならない。

さらには、「ブロックチェーン業界」に対する標準的なビジネスアプローチ — 特許や専有コンポーネント — の適用も、何の意味もなさない。例えばコンピュータ業界においては、製造者によらず、どの商用デバイスもインターネットを通じて動かすことができる。LinuxやeTorrent、Android、Bitcoin、このいずれもオープンソースであり、ライセンスフリーだったからこそ、世界に変化をもたらしたのだ。すなわち、金融業界に求められるのは、ApacheウェブサーバーとTCP/IPだけが必要なインターネットと同じような理念を業界内で共有することだ。

私が取り組んでいるプロジェクトは、銀行システム(アプリ、銀行コア業務、プロセッシング、規制ソフト)のためのフルスタック技術であり、そのために開発をしている。もちろん、オープンソースだし、無料だ。私に言わせれば、ブロックチェーン・プラットフォームは開発者キットのようなものだ。ワールド・エコノミック・フォーラム(WEF)で、登壇者が開発者キットについて話しているのを想像できるだろうか?

ブロックチェーン技術は、それでも金融サービス業界にとって重要なのか

しかしながらブロックチェーンの要素技術は実際のところ、かなり有用だ。覚えておいてほしいのは、どんな発明でも最初のアイデアが実用化されるわけではないということだ。ブロックチェーン・プロジェクトのために書かれたコードベースは、以下のような開発においても、開発者の時間を節約できる:

  • 暗号ベースのアカウント管理機能
  • データベース間の同期
  • インテグリティの証明
  • 分散型の紛争解決(このケースは、100%ブロックチェーン技術だ)

上記は例の一部だが、この点においても、ブロックチェーン技術はデータベースの実装よりも遥かに広範な技術であることが明らかだ。

未来

技術研究は継続する。コンセンサス・プロトコル、暗号技術、スマートコントラクト、データベースなどはその一例だ。暗号通貨市場は、すべての発明を喜んで受け入れるだろう。そして、スマートな人々のために富を生み出す。

あらゆる「画期的」で新しい技術と同じように、ブロックチェーン・ハイプは、人々がそこから期待した結果を得ることができないと気付くにつれて収まっていく。市場にとって不可避な革命的プロセスは低水準なビジネスモデルを追いやり、ごく僅かの、本当に価値のあるものだけを生き残らせることができる。用語としての「ブロックチェーン」だけでは価値を生むことはできない。殆どのブロックチェーン・プロジェクトは、必然的な帰結としてエンタープライズ・ソフトウェア企業として生まれ変わることで生存を遂げるのではないだろうか(Coinbaseを見てごらん、彼らは銀行になったよ)。

金融業界に来たる革命への高い期待——。「ブロックチェーン基盤」の製品は、その礎を築く可能性は充分にある。

しかし、ブロックチェーンそれ自体は私たちの人生を大きく変えたりはしない。本当に世界を変えるのは、オープンソースだ。


原文: Why Bitcoin suceeded and “blockchain industry” failed so far

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この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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