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ブロックチェーンの分散型台帳技術は、金融だけでなくあらゆる分野に適用できるといわれる。いま注目されているのは、食品流通業界への応用だ。

食品は店頭に並ぶまでに、国内外の生産者、加工業者、運送業者、倉庫、卸業者、小売店などで構成される複雑なサプライチェーンを通過する。これまでは各自が個別の台帳で取引を管理しており、場合によっては紙媒体のことすらあった。しかし、こうしたすべての流通過程を全関係者がブロックチェーン上で一箇所に記録できれば、だれもが簡単に管理・追跡することができる。書類作成は自動化・効率化され、データ改ざんも困難だ。そのメリットは計り知れない。

本記事では、食品業界におけるブロックチェーンを駆使した最新の取り組みを紹介し、さらには将来の食品流通の新しいカタチを模索してみようと思う。

食中毒の汚染源が数秒で判明

IBMは先月22日、ウォルマート、ネスレ、ユニリバー、ドールなど大手10社と提携し、Hyperledger Fabricをプラットフォームを用いた流通管理プロジェクトを行うと発表した。実はIBMとウォルマートはすでに昨年10月から、米国でパッケージ食品2品目、中国で豚肉を対象に実証実験を行い成功させている。今回は新プロジェクトとして参加企業を拡大し実施することになる。

例えば、食品スーパーでレタスを購入した消費者が食中毒を起こしたとしよう。これまでは食品スーパー側が流通過程を遡って、汚染源を正確に突き止めるのに、数日から長ければ数ヶ月もかかる場合があった。

しかし、農家から食品スーパーの棚までの全ての過程がブロックチェーン上に記録されていればどうだろうか。該当するレタスのパッケージに印字されたバーコードをスキャンするだけで、ものの数秒でそのレタスがどこで生産され、同じロットのレタスが他のどこで売られているかを正確に知ることができる。食品スーパーは即座に該当する商品を棚から取り除き、食中毒の拡大を防ぐことができる。商品の無駄な廃棄もなくなるため大幅なコスト削減にもつながる。

食品の偽装阻止にも一役

ブロックチェーン上の流通データを活用できるのは何もサプライチェーンだけではない。食品偽装の蔓延が深刻な社会問題となっている中国では、消費者にこうしたデータを積極的に公開しようとしている。

大手食品通販会社のJDは、内モンゴル自治区の牛肉製造業者Kerchinと提携し、冷凍牛肉を購入した都市部の消費者に、今年5月から流通過程の詳細なデータを提供し始めた。Kerchinが管理するサプライチェーンは、バーコードをスキャンすることで各過程のデータを取得する。JDはデータをKerchinから入手し、Hyperledgerブロックチェーンに記録する。

一旦記録されると、変更は両者の合意がないとできない。データ改ざんが非常に困難なブロックチェーンの特徴を利用して食品偽装を防止し、食の安全を消費者にアピールする狙いだ。

商品を受け取った消費者は、パッケージに印刷されたQRコードをJDのアプリで読み取り、流通データを閲覧する。下の例は、7月14日に注文し翌日に配達された牛ステーキの場合だ。

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1. 「牛肉の奇想天外な旅」
2. ステーキのシリアル番号と64桁の取引番号
3. 生産者番号1556
4. 部位は外もも肉、包装日は7月5日、産地は内モンゴル自治区通遼市

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5. ジンメンタール品種、3歳、飼料はトウモロコシ・大豆・藁・乾草、獣医師名は那欽
6. 7月2日に屠殺、7月5日に包装
7. 倉庫に7月11日に入庫
8. 細菌・成長促進剤の有無、水分含有量などの検査を受け合格

(※画像はQuartzより引用)

中国ネットショッピング最大手のアリババも今年3月、豪州産の輸入牛肉を追跡するのにブロックチェーンを用いると発表している。

食品流通の新しいエコシステム

データ改ざんが非常に困難なブロックチェーンをもってしても、完全に食品偽装を撲滅できるわけではない。まず、入力する時点のデータの真偽が問題だ。不正を働く内部関係者もいるからだ。またデータ入力がなされなかったり遅れたりすると、正確な情報を迅速に共有できない。JDは定期的にKerchin社に立ち入りスポットチェックなどを行うことによって、データの信憑性を担保しようとしている。

食品ブロックチェーンはそれでも、不正や汚染を防止するのにこれまでにない威力を発揮する。ただしまだまだ発展途上であり、完成には程遠い。現在、サプライチェーンは相互にデータを共有することには積極的とはいえない。例えば牛肉の例でも、実際にブロックチェーンへのデータ入力に関わっているのは2社だけである。サプライチェーンが長ければ長いほど、世界中に広がれば広がるほど、関係者に個々にデータを入力させるには、食品業界や流通業界の協力体制と透明性が不可欠となるだろう。

しかし、そうした困難を乗り越えた先には、全く新しい食品流通の世界があり、我々の食生活をますます豊かで多様なものにしてくれることは間違いない。

日本では中国ほどの食品汚染の問題は少ないにせよ、ラベルでの産地偽装は度々問題となっている。しかしブロックチェーンを導入すれば、生産者は格段に信頼度の高い方法で産地、品種、有機農法などの高品質を証明することができ、価格に反映させることができる。

小規模生産者たちは地域を超えたデジタル協同組合を結成し大きな購買力や販売力を得て、より価格競争力のある商品を提供できる。

スマートコントラクトを用いることによって、一般家庭やレストランは農家と簡単に直接契約できるようになる。Peer-to-Peer食品市場が発達し、食品業界に大変革をもたらすことになるかもしれない。

そして、スーパーでは消費者が食品パッケージのQRコードをスマホでスキャンする姿が、近い将来当たり前の風景となるに違いない。


IBM
Quartz
Nasdaq

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