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仮想通貨の取引で利益が出た場合、どのような課税が適用されるのかについては明確な指針がなく不明瞭な状況となっていたが、国税庁のHP(タックスアンサー)において、ビットコインを使用することにより生じる損益については原則雑所得に区分されることが公表された。

国税庁HP(タックスアンサー)
https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1524.htm
No.1524 ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係

ビットコインは、物品の購入等に使用できるものですが、このビットコインを使用することで生じた利益は、所得税の課税対象となります。

このビットコインを使用することにより生じる損益(邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益)は、事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き、原則として、雑所得に区分されます。

公表された内容では、仮想通貨ではなくビットコインとされており、広く仮想通貨全般に適用可能であるかなど解釈の余地はあると思われる。本記事では、この内容から具体的な課税にかかる対応内容について考えてみることにする。

なお、本記事は平成29年9月16日時点の著者の個人的な見解であり、今後の当局からの課税方針の変更や、追加コメントの公表、個別事例によって課税内容が変更となる可能性などもある。あくまで参考程度とし、仮想通貨で利益を得たと考えられる場合は、必ず税理士などの専門家に相談してください。

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1 雑所得とは?

雑所得とは、本業以外での原稿料や印税、講演料などが該当し、今回ビットコイン取引での利益もこれに含まれるとされた。

雑所得の金額は、「雑所得にかかる総収入金額▲必要経費」として求められ、これと給与所得などの他の所得と合計して総所得金額を算出、この総所得金額に応じて納める税率が決まることになる。つまり、総所得金額が高くなれば累進税率が適用されるので、最高45%の税率が適用されることになる(この所得税に加え、住民税10%の適用も追加である)。

また、雑所得は課税年度単位での計算となるので、ある年に損失が出て、次の年に利益が出ても、損失を繰り越すことはできない。

なお、馬券の課税方法で訴訟となっていたケースのように、課税年度内に売却益と売却損が発生した場合、売却益だけを取り出して課税されるようなことはなく、売却益と売却損をネットして益が出た場合に、その益の部分が課税対象となる。必要経費は売却益から控除できるため、マイニングを行う場合は、マイニングの電気代などを控除可能と考えられる。

所得金額 税率
330万円~695万円以下 20%
695万円~900万円以下 23%
900万円~1,800万円以下 33%
1,800万円~ 4,000万円以下 40%
4,000万円超 45%

※ 国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/2260.htm
※ 上記は所得税率であり、これに加え住民税として、所得の10%+均等割額の納税も必要となる。

2 20万円以下なら確定申告不要という点について

給与所得を得ており、確定申告が不要な(年末調整をしている)サラリーマンは、給与所得、退職所得以外に得た所得の合計額が20万円以下の場合は、確定申告を行わなくてもよいルールとなっている。

このため、ビットコイン取引の利益が20万円までなら“所得税”の支払いを行わないことも可能になる(雑所得が他にない場合)。

しかし、利益が20万円以下で確定申告を行わない場合も、“住民税”の支払いは金額に関わらず別途必要になる。住民税は利益が1円からでも納めることが必要であり、確定申告を行わないで住民税のみを納める方法は自治体により異なっている。

確定申告を行えば別途での住民税の申告手続きは不要になるため、利益が出た場合は確定申告を行っておく方がよいであろう。

3 株式売買益との違い

雑所得と異なり、金融商品である株式を売却して譲渡益が出た場合は、申告分離課税として、他の所得と分離して課税が行われるため、税率は、所得税と住民税を合わせて一定の20%となる。利益の大きさに関わらず一定のため、ビットコイン取引で大きな利益を得た人には不平等感があるかもしれないが、現状のルールなのでしょうがなく、今後、ビットコイン(仮想通貨)取引での利益についても、この株式等の譲渡益課税の適用範囲とするよう求める声が高まることが予想される。
(参考 国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1463.htm

4 ビットコイン以外の仮想通貨の取り扱いは?

今回の国税庁HP上には、「仮想通貨」ではなく、「ビットコイン」と記載されており、ビットコイン以外の仮想通貨にも適用されるのか明確ではない。

おそらく税務当局もビットコイン以外の仮想通貨が現状のように急激に多数登場し、相応の取引量となることはあまり想定していなかったため、書きぶりに苦慮しているのではないかと推測される。

ビットコイン以外の仮想通貨の取引で得た利益について、ビットコインと異なる税務処理を行う方法が示されているわけでもないため、税務当局から特段の指示がない限り、ビットコイン同様に、雑所得として処理することが合理的と考えられる。

5 ビットコインを使用することの利益とは?

課税対象となる利益の範囲が不明瞭と言われているが、現状税理士等専門家のコメントは総じて以下の解釈がなされている。なお、単にビットコインを持っているだけで、含み益が生じている場合は、課税対象とはならない。

取引 課税について
ビットコインを円に売却した 「売却額▲取得価格」の売却益が課税対象と考えられる
ビットコインを他の仮想通貨と交換した ビットコイン取得時から交換時点までの間の値上がり益が課税対象と考えられる。
※円にしなければ課税対象とならないわけではなく、値上がり益を実現し、それにより他の仮想通貨を得たとして課税対象となると解される。
ブロックチェーンが分岐し新規コインが無償で付与され、それを円に売却した(他の仮想通貨と交換も同様) 「売却額▲取得価格」の売却益が課税対象と考えられる。
※取得価格はゼロとみなされる可能性
マイニングで得たビットコインを円に売却した(他の仮想通貨と交換も同様) 「売却額▲マイニング費用」で出た益が課税対象と考えられる。
ビットコインで物品を購入した ビットコインの取得価格から値上がり益が出ていた場合は、その値上がり益が実現したとして、値上がり益部分が課税対象となると考えられる。
(事業者側)売買代金の対価をビットコインで受け取った 国税庁の「事業所得等の各種所得の基因となる行為に付随して生じる場合を除き」の箇所から、事業者は雑所得ではなく、事業所得として把握することになると考えられる。

6 ビットコインの取得価格をどう考えるか

ビットコインの売却益を計算するうえで、取得価格をどう考えるかがポイントとなる。

たとえば、1万円で仕入れた1BTCと、40万円で仕入れた1BTCの2BTCを保有しており、0.1BTCを売却したとする。このときの取得価格はどう考えるべきかという問題となる。

ビットコインのUTXO単位で取得価格を管理し、売却も、UXTO単位で行えば、出金と取得価格を紐付けることは可能と考えられる。しかし一般的に出金時は複数のUXTOを利用し、また交換所に預け入れている場合などにおいてこのような考え方はできない。

税務の専門家からは、取得価格の特定方法としては、平均法、先入先出法、後入先出法などの利用と、一貫して同じ方法で計算するのであれば、どれでもよいのではないかとのコメントがされている。なお、課税対象額引き下げのために、売却直前に高値でビットコインを購入し、平均取得価格を引き上げる処理は、やりすぎると税務当局から認められない可能性もある。

課税対象額の計算には、適切に取得価格を記録していることが肝要ということになるが、取得価格が不明な場合は、ビットコインブロックチェーンを見れば、受取トランザクション別に日時は把握できるため、事後的にも価格の把握はある程度可能と考えられる。また、このときに、どの時価を利用するかという点は、交換所公表時価など、合理的に妥当と考えられるものを利用していればよいのではないかと思われる。

ブロックチェーンが分岐し、新規コインが無償で付与された、ビットコインキャッシュのようなケースでの取得価格については、分岐時点で、時価総額が、分岐コインとの間で綺麗に割れたのであれば、分岐前コインの取得価格のうち、分岐コインに紐付くと考えらえる部分を分岐コインの取得価格とする考えもあるが、合理的にそのような疎明が難しい場合は、取得価格ゼロとして取り扱うことになるのではないかと考えられる。

7 ビットコインの売却益と他の仮想通貨での売却損をネット出来るか?

ある課税年度において、ビットコインの取引で、売却益と売却損が発生した場合、売却益だけを取り出して課税されるようなことはなく、年間での売却益と売却損をネットして、益が出た場合に、その益の部分が課税対象となる。雑所得では、年度内で発生した損益はネット可能となっている。

この考え方は、ビットコインで売却益が出て、他の仮想通貨、たとえばイーサリウム(ETH)で売却損が出た場合も、雑所得の範囲内で同様であり、損益はネット可能と考えられる。

なお、雑所得では翌年度への損失の繰り越しはできないため、1年毎に損益を確定していくことになる。

年間売却益 年間売却損 年間損益額
BTC +10万円 ▲3万円 +7万円
ETH +2万円 ▲6万円 ▲4万円
+12万円 ▲9万円 +3万円(課税対象額)

8 秘密鍵を紛失した場合、ビットコインの損失として処理できるか?

秘密鍵の紛失は、ビットコインの紛失と同義であるが、秘密鍵の紛失を税務当局に合理的に疎明することがなかなか難しいと考えられる。

また、秘密鍵の紛失による損失は、雑所得での必要経費には認められないと考えられる。

一方、雑損控除として、災害又は盗難若しくは横領によって資産について損害を受けた場合等には、一定の金額の所得控除を受けられる仕組みがある。
(参考 国税庁HP https://www.nta.go.jp/taxanswer/shotoku/1110.htm

しかし、雑損控除可能額は、損失額が総所得金額等×10%以上の場合や、原因が災害、盗難、横領等に限定されている。
自分の管理ミスで秘密鍵を紛失した場合、雑損控除を受けることは難しいと考えられる。

9 ビットコインの含み益は、出国税の対象?

国外転出時課税制度において、富裕層(1億円以上の対象資産を所有等)が海外転出する場合には、有価証券の含み益に課税されることになっている。
https://www.nta.go.jp/tetsuzuki/denshi-sonota/kokugai/01.htm

この対象にビットコインの含み益が入るかという点では、現状ビットコインや他の仮想通貨は有価証券との取り扱いではないため、対象外になると考えられる。

10 仮想通貨にかかる税金について

ビットコイン等の仮想通貨は、納税ルールが不明瞭な状況で、取引参加者、ボリュームが急激に増えてきた状況にあり、また利用者としても、ルールが不明瞭な中、進んで納税を行うことに心理的抵抗がある側面もある。

一方で、日本においてはMt.Gox事件があったにも関わらず、他国に先駆け、仮想通貨について前向きな対応が行われ、資金決済法の改正により、交換事業者登録制による取引環境の整備などが進められている。

この背景には、2014年の自民党IT戦略特命委員会で公表されたガイドラインにおいて、イノベーションを阻害せず、発展を後押しし経済成長を行い、その結果として税収を高めていくという思想が大きく影響していると考えられる。

今後も、日本において環境整備が進められ、仮想通貨取引をより一般化していくためにも、今回の国税庁からの指示に従い、仮想通貨取引にかかる利益について、適切な納税を行っていくことが利用者には必要と考えられる。

この記事を書いた人

後藤 あつし
大手金融機関における市場リスク管理、信用リスク管理、流動性リスク管理、バーゼル規制対応等の長年の経験を有する。ビットコインおよびその技術であるブロックチェーンについては初期の頃から金融イノベーションに繋がる可能性を感じ調査・研究を行うとともに、主に金融の側面から関連事業者・団体への助言、各所記事や資料等の作成サポート、BTCNへの寄稿なども行なっている。

連絡先 gotoa123tアットマークyahoo.co.jp