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「仮想通貨元年」とも言われる2017年。利用者が急増する中、仮想通貨規制の波が世界で広がりつつある。規制の最新動向をレポートするこの企画、最終回の今回は、いろいろな意味でカオスな国々を紹介しよう。

米国、規制のるつぼ イノベーションに不安

米国では仮想通貨規制の議論が非常に活発だ。しかしその結果自らカオスをつくりあげてしまった。連邦政府のあらゆる機関が仮想通貨を勝手に解釈、規制し、加えて50ある各州がさらに独自の法律を作っているのだ[1]。主な連邦機関からみていこう。

証券取引委員会(SEC)は、有価証券(株・投信など)や取引所を監督する。ウィンクルボス兄弟による世界初のビットコインETF(上場型投信)の申請を今年3月に却下したことは記憶に新しい。

商品先物取引委員会(CTFC)は、仮想通貨を「商品」と定義している。また外貨の免除事項に該当しない「通貨」だとも定義している。先月には香港の大手取引所Bitfinexに対し、先物取次業者としてCTFCに登録せずにビットコインの信用取引を提供していたとして罰金を言い渡した[2]。また今月6日にはLedgerX社を、ビットコインのスワップやオプション取引等が行える業者として認可した[3]。

金融犯罪捜査網(FinCEN)は、取引所に対し、同機関に登録し、口座開設に係る本人確認(KYC)とマネーロンダリング防止(AML)プログラムを持つよう要求している。

内国歳入庁(IRS)は2014年に仮想通貨を日本同様「資産」と定義し、取引による利益はキャピタルゲイン課税対象としている[4]。昨年11月には米最大手の取引所Coinbaseに対し、数百万人にのぼる全顧客の2013年から2015年における取引履歴等を提出するよう要求した[5]。ビットコインの価格がその期間で約85倍になったにもかかわらず、損益を実際に申告した者が802人しかいなかったためだ。Coinbaseはこれに反発、一部顧客は匿名で提訴した。今月18日には連邦判事も「そんな広範囲の裁量権が通るわけがない」とIRSに苦言を呈した。IRSは今月初めに対象を大口顧客のみに限定したが、裁判はまだ継続中である。

次に各州の規制を見ていこう。

ニューヨーク州で仮想通貨関連事業を営むには、通称「ビットライセンス」を取得する必要がある。世界初の仮想通貨規制として2015年から施行されているが、申請費用が高く(5千〜1万ドル)、厳しい取得条件を満たすのに負担とコストが膨大にかかるなど批判が多い。資金力のないスタートアップが取得するのは実質不可能だ。もともとマネロン対策に重点を置くあまり、零細企業の立場では作られていないが、多くの大手取引所(Poloniex、Kraken、Bitfinexなど)ですら見切りをつけて次々と撤退し、同州住民の口座を閉鎖する結果となった。現在までにこのライセンスを取得できた企業はCoinbaseやRippleなど5社のみである[6]。

ワイオミング州とハワイ州は、仮想通貨取引所を送金事業者と位置づけ、顧客が口座に保有するビットコインと同価値の法定通貨を準備金として保有することを義務付けた。Coinbaseは2016年にワイオミング州、今年2月にハワイ州からの撤退を余儀なくされた[7]。

デラウェア州は、米国におけるタックスヘイブンだ。米国上場企業の約50%が本社を置くといわれ、Fintechのスタートアップも多い。今月初め、州内の企業が記録管理をブロックチェーン上で行うことを法的に認める州会社法の修正案を可決した[8]。Symbiont社が開発したスマートコントラクトを用いる。自社株式の売買もブロックチェーン上で可能となる。複雑で高コストな株主名簿管理、配当、議決権行使等を迅速に行い、中間コストを削減できる。来月から施行される。

他にビットコイン・フレンドリーな州としては、州法で売買が非課税となったネバダ州や州民に広く受け入れられているニューハンプシャー州などがある[9]。

上記の通り、米国の規制は非常に複雑かつまだ発展途上の段階にある。州法の扱いも厄介だ。連邦法との二重規制になる恐れもある。州法が連邦法の先を行く例もあるが、今後連邦法が施行された際に矛盾が生じる可能性も指摘されている。企業の中には、遵守しているつもりでも罰金や業務停止命令をいつ受けるのではと恐れているところも多いという。

また、ニューヨークの「ビットライセンス」が批判される原因の一つに、各州が類似した州法を作り始めるのではないかとの懸念がある。米国全土でビジネスを展開するのに50州それぞれからライセンスを取る必要があるとなれば、膨大なコストと労力、時間がかかってしまい、スタートアップなどは参入しようとも思わなくなるだろう。このまま規制がさらに進めば、米国のイノベーション産業の先行きが心配になってしまう。

南米ベネズエラ、生き延びるためのビットコイン

輸出の9割以上を石油に頼るこの国は、昨今の石油価格低迷で経済が大崩壊、通貨ボリバルは昨年だけで800%ともいわれる超ハイパーインフレに見舞われている。国民は食料すら品薄で確保できない状態だが、政府は外貨取引を完全に掌握し、国民は米ドルなどにもアクセスできない。そこにやってきたのが文字通りの命綱、ビットコインだった[10]。

人々はビットコインで資産の目減りを防ぎ、Amazonバウチャーなどに交換、ネット通販で食料を海外から輸入することで日々の生活を凌ぐようになった。電気代が格安で月収が2000円程度の国で、採掘(マイニング)は高収入ビジネスとしてブームとなった。2014年には国内初の取引所も開設された。

政府も黙ってはいない。マイニングを違法とし、国境でマイニングマシンの摘発を始めた。2015年には取引所やマイニングプールのインターネット接続を強制的に遮断し業務を一時停止させた。マイナーへの不当逮捕も横行する。それでも国民は、政府高官に多額の賄賂を払いながら採掘を続けた。最近はビットコインの手数料が高騰、数ドルの送金手数料ですら国民の平均月収の4分の1にあたるようになり、人々はアルトコイン(イーサリアム、ZCash、Dashなど)に移行しつつある。採掘も安価で小型のGPUを用いるため、輸入時にも目に付きにくいとのことだ。

実にカオスなベネズエラ。しかし希望の光が全くないわけではない。現在ベネズエラでは仮想通貨に関する法整備がなされていないが、今月30日の議会選挙を控え、ホルヘ・ドマール候補は11日、ベネズエラの政治家として初めて仮想通貨の合法化を訴え、国民が政府に依存せずにすむシステムを提唱した[11]。政府が簡単にビットコインを認めるとは思えないが、中央集権への不信が非中央集権の仮想通貨を普及させている代表例として、今後も目が離せない国であることは間違いない。

まとめ

世界を周ってみて感じたのは、国内情勢や法整備の段階は全く違えども、仮想通貨やブロックチェーンというこの最先端技術に対する各国政府・大企業・ベンチャー・国民それぞれの期待と思惑、そしていい意味でも悪い意味でも熱いエネルギーとバイタリティに溢れているということだった。

また、いわゆる先進国が必ずしも仮想通貨のイノベーションに有利だとは限らないこともわかった。むしろ逆で、例えば金融の世界に君臨する米英が苦戦する中で、シンガポールやスイスが大健闘している。インドなど台頭する途上国にも今後注目だ。日本にもまだまだチャンスはあると思う。

もし数年後に同じ国々を再訪してみたら、その景色は今とは全く異なったものになっているに違いない。


[1] CoinDesk – The State of ICO Regulation?
[2] CFTC – pr7380-16
[3] CoinTelegraph – Bitcoin Exchange Receives CFTC Approval
[4] IRS – Virtual Currency Guidance
[5] Fortune – Judge Blasts IRS Over Bitcoin Probe, Lets Coinbase Customer Fight Summons
[5]’Fortune – Coinbase Moves to Fight IRS Demand
[6] BitcoinMagazine – Some Small Movement in Cryptocurrency Regulatory Challenges
[7] CoinDesk – Coinbase Just Stopped Serving Bitcoin Customers in Hawaii
[8] CoinDesk – Delaware Introduces Bill to Legally Recognize Blockchain Stocks
[9] CoinTelegraph – New Hampshire: The World’s Most Bitcoin-Friendly Community
[10] CoinTelegraph – Ethereum is Rising in Popularity in Venezuela Along With Bitcoin
[11] CCN – Venezuelan Candidate Bitcoin Legalization

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