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「仮想通貨元年」とも言われる2017年。利用者が急増する中、仮想通貨規制の波が世界で広がりつつある。初回のアジア編では、各国政府が未整備の規制へ取り組む様子をリポートした。今回は優等生編ということで欧州を中心に、すでにある程度規制が整っている国々を訪れてみよう。

シンガポール、アジアの「スマート・フィナンシャル・センター」

ロンドン、ニューヨークに次ぐ世界3位の金融センターとなったシンガポール。監督官庁かつ中央銀行はシンガポール金融管理局(MAS)。仮想通貨を日本と同様「資産」と分類する。性善説に基づき規制は最小限に留め、仮想通貨交換業者の認可も必要ない。ただし口座開設に係る本人確認(KYC)とマネーロンダリング防止(AML)だけは関連業者に厳しく徹底させ、テロ・犯罪資金を封じる[1]。

法人税は安く、住民税、相続税、贈与税はない。株式取引の利益にかかるキャピタルゲイン課税もないため、富裕層が多く移住している。世界に先駆けて2014年にビットコインの課税方針も示した。ビットコインをサービスや商品に利用すると消費税(GST)がかかる。ビジネスが仮想通貨取引や採掘(マイニング)で得た利益は法人税の対象となるが、長期保有後の売却の場合、キャピタルゲインとみなされ非課税となりうる[2]。

MASは昨年から、「Project Ubin」と呼ばれるブロックチェーン技術を用いた送金システムの開発を、世界中の大手銀行が参加する「R3コンソーシアム」やデロイト社と共に進めている[3]。自国通貨シンガポール・ドルのトークン化によって、迅速かつ低コストな送金を可能にする。ブロックチェーン研究開発分野でもリーダーシップをとり、世界の「スマート・フィナンシャル・センター」を目指す。

先月ICOを行い注目されたTenXは、2015年の設立時にシンガポールを拠点に選んだ。イーサリアムベースのデビットカードを開発している。仮想通貨をカードにチャージする際に換金するこれまでのタイプとは異なり、口座に保有する仮想通貨が、店舗で使用する際に自動的に換金されるシステムだ。

スイス、世界で一番仮想通貨フレンドリーな国

シンガポール同様、国土の小さいスイスは金融関連産業を誘致するため規制を最小限とする政策をとっている。監督官庁はスイス連邦金融市場監督機構(FINMA)、仮想通貨はやはり「資産」として扱われる。仮想通貨交換業者に認可は不要だ。国外から移転してくる企業に対する優遇措置も多い。過去にスイス銀行の匿名性や守秘性が悪用され、大富豪や政治家の不正蓄財に関わったと非難されたこともあり、KYCとAMLは徹底されている[3]。シンガポールと共通点が多いが、実のところ両政府はFintechの規制に関して提携関係にある。

スイスは「非中央集権化」が最も進んだ国家と言われており、各州によって税率も大きく異なる。ツーク州は所得税が一番低く、外国企業に優遇税制もとっており州都ツークには仮想通貨関連のスタートアップが集結する。シリコンバレーならぬ「クリプトバレー」と呼ばれる所以だ[4]。市は公共料金の支払いにもビットコインを採用しており、今月7日には市民にイーサリアムベースのIDを今秋から発行すると発表した[5]。ツークに拠点を持つConsenSysなどによる開発で、市民の個人情報がブロックチェーン上のアドレスとリンクされ様々なデジタルサービスに使用できる。来年春にも住民投票を実施し、具体的な用途を決定する予定だ。ツーク市長は「わが街では、デジタルIDは中央集権ではなくてブロックチェーン上で管理することを望んだ」と述べている。

同じくツークに拠点を持つBitcoin Suisse AGは、ビットコインのATMを国内外に配置し、ICO参入のアドバイスも行っており、今月にはプライベートバンクと提携し、銀行内でのビットコイン運用管理に乗り出した。

英国、「サンドボックス」でベンチャー育成も、法整備は様子見

欧州最大の金融センターであるロンドンを擁する英国では、特にFintechなど有望な分野のスタートアップやベンチャー企業に対して「サンドボックス(砂場)」と呼ばれるアプローチをとる。これは管理された環境の中で、現行の規制を適用せずにイノベーティブな実験をさせることで、新たなサービスやビジネスモデルの有効性を迅速に検証し、商品化まで支援する手法だ。親が注意深く監視する中で、子供を砂場で自由に遊ばせるイメージに近い。規制当局である金融行為規制機構(FCA)が昨年から開始しており、その成果を待って仮想通貨関連企業に対する規制を決定する。

現状、仮想通貨は「プライベート通貨」とされ取引による利益はビジネスでは法人税、個人では所得税やキャピタルゲイン課税の対象となる[6]。

なお、欧州連合(EU)諸国では、ビットコイン売買にかかる消費税(VAT)が非課税となる。採掘による利益にも消費税はかからない。EUはまた、仮想通貨の「価値保存手段」や「支払い手段」としての研究を始めた。

EU各国は様子見の姿勢だが、それではイノベーティブな企業が根づきにくいとの指摘もある。仮想通貨関連のスタートアップらにとっては、自分たちがどう規制されるか不明瞭だからだ。前述したように、例えばスイス各州は企業誘致を狙って外国企業などに対して特別優遇措置として極端に低い税率を維持しており、そちらに流れているのが現状だ。ただ一般スイス企業の税率と開きがあるため、EUなどは不当な税制優遇だとして批判している[7]。

Fintechブームが過熱する中、各国はその恩恵にあずかろうとするものの、仮想通貨の位置づけや法整備に躊躇する国が多い。現状を見る限り、他国に先立って政府のスタンスを決め、大胆な規制や税制を採用している国に軍配が上がっていると言えそうだ。


[1] CoinDesk
[2] IRASシンガポール
[3] Deloitte
[4] BitcoinMagazine
[5] CoinDesk
[6] HM Revenue
& Customs

[7] ロイター

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