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ビットコインの分裂物語も佳境に入った。

BIP91がSegwit2xに先駆けてフライング・スタートし、21日の朝方にアクティベートされた。このままいけば、23日中にビットコインが新生BIP91チェーンとしてSegWitのアクティベーションに向かうこととなり、8月1日の大規模分岐の懸念も晴れる。その一方で、8月1日にはBitcoin Cashのようなハードフォーク計画も走り、新たなアルトコインが生まれる可能性も出てきた。

BTCNはこの度、今年4月にBlockstream最高戦略責任者(CSO)に就任したサムソン・モウ(Samson Mow@Excellion)氏へのインタビューに成功。Blockstreamは多くのコア開発者が在籍し、同氏を含め数人の精力的なUASF支持者もいる。本インタビューでは、同氏が一連のビットコイン分裂騒動についてどのように行動を起こし、考えているのか聞いた。

ニューヨーク協定(NYA)はリスク多い

Q. ハローSamson、あなたはUASF(BIP148)の支持者として知られていますが、NYA(ニューヨーク協定; Segwit2x)についてはどのように考えているのでしょうか。

NYAは複数の段階で間違いを犯しています。まず、NYAは分権的に運営されるOSSプロジェクトをコントロールしようとするマイナーや少数の事業者による秘密裏の合意です。少数のグループがビットコインに起こることを決めるという、悪しき前例を作ることになります。NYAは多くの企業に考える時間を与えず、SegWitがアクティベートされてから3ヶ月後に、議論の渦中にあるハードフォークを実行することを推奨しています。SegWitをアクティベートすることで実質的にブロックサイズが引き上げられるにもかかわらず、再びブロックサイズを引き上げることになります。その結果ブロックは8MBまで拡張され、ネットワークの大きな負担となります。おそらくは、ブロック伝搬の問題を誘発するでしょう。

総合的に判断して、NYAが優れている点は完全に、一切ありません。これに合意し、支持するコア開発者もまた、誰ひとりとしていません。

Q. BlockstreamのAdamは、企業としてのスタンスを取りたくないと言いました。そしてアダムは個人として、Segwit2xを完全に否定していないとTweetしています。Blockstreamの内部でBIP148を支持している開発者はどの程度いるのでしょうか? 他の意見もあるのでしょうか。

社内のかなりの人間が、BIP148、BIP149いずれかのUASFに賛成しています。CTOのGreg Maxwellは、BIP148に公然として反対しています。私は、BIP91のほかに理に適った提案があるとは思いません。BIP91は、Segwit2xの一部で、BIP148と互換性があります。BIP91は言うまでもなく理に適っており、分岐を防ぐことができるでしょう。現時点において、Segwit2xのコードはテストされていないため、多くのマイニングプールはBIP91パッチを稼働させています。

Q. もし他にアイデアがあるなら教えて頂けますか?

スケーリング提案じゃないんですが、Adamと私は「Bunker Mode」と呼ぶ、マイノリティ・ハッシュレートでもチェーンを保護できる方法について検討しています。

Q. SegWit2xに関して、github.com/btc1リポジトリではJeff GarzikのPRに多くの開発者が「検証されていないコードを使用するのはなぜか」と批判しました。実際、Segwit2xにはどのような問題があるのでしょうか。

btc1/SegWit2xにはたくさんの問題があります。たとえば開発者の一人であるJeff Garzikですが、彼は自身をコア開発者だと述べているものの、ビットコインのコンセンサス・クリティカルな部分に携わったことがないのです。

コメントをしている人々は、BIP91を使うべきだと正しいことを言っています。これは病院に行く時のようなものですよ。あなたの奥さんは働きに出ていて(BIP148待ち)、しかしガソリンがないので補充しないといけない(BIP91)。それでいて、あなたは、じゃあ次の子供が生まれることまで考えて、ガソリンなしで動くエンジンの再設計を作り始めようとしますか(3ヶ月後のHFを含めたSegWit2x)? まったく合理的ではありませんし、実用的でもない。論外です。経験不足の開発者がビットコインのP2Pネットワーク・コードに触れるのは実にリスクです。SegWit2xは既にテストネットでフォークさせてしまっています。そして全マイニングノードがブロックの生成を停止してしまいました。実際のネットワークでこれが起こったらと思うと、ゾッとしますよ。

これにどんなベネフィットがあるのでしょうか? いいえ、ありません。ピアレビューやテストが間に合わないほど爆速で開発されています。メンツを保つ以外にはね。SegWit2xにはハードフォークのためのコードがありますが、ユーザーは簡単にこれを拒否できます。SegWitがアクティベートされても、なんら強制力のあるハードフォークは起こらないのです。

BIP148のリスクは?

Q. BIP148に関して、これは後方互換性がなく、SegWitをシグナルしないブロックが拒否されますよね。つまり、フォーク(分岐)が起こるわけです。誤解を恐れずに言えば、支持者がこれを「安全」とする理由がわかりません。事業者やユーザーから見れば、はた迷惑ではありませんか。

マイニングプールがSegWitのアクティベーションを拒否すると、チェーンの分岐が起こるのです。NYA署名者の側も、SegWitをアクティベートすると言っていますよね。SegWitには何も問題がないんですよ。視点を変えれば、BIP148の足を引っ張ったり、BIP148に従わないこと自体がネットワークへの攻撃と見ることもできるのではないでしょうか。BIP148が安全でないとか、何らかのリスクがあると言っているのではありません。障壁がない(パーミッションレスである)が故に、ビットコインのネットワークは常に攻撃を受け続けているのです。

支持者がBIP148を安全だと考えている理由に関してですが、私は彼らがBIP148にリスクがないと考えているわけではないと思っています。ただ、それ以上にビットコインが中央集権化してしまう、あるいは少数の人間がビットコインにハードフォークを強制できてしまうということが、より大きなリスクとして問題視されているのです。

BIP148はビットコイン・ネットワークの均衡を元に戻すための最初の一歩です。さらに言えば、BIP148が分岐を起こしたとしても、それは恒久的なものではありません。もしマイナーがnon-SegWitチェーン(レガシーチェーン)からBIP148チェーンに移れば、すぐにBIP148チェーンにマージされるからです。つまりただひとつのビットコインが残るのです。ハードフォークではそうなりませんよね。ハードフォークは恒久的に、ビットコインを2つに分割してしまいます。イーサリアムのようにね。

Q. BIP148が成功すると、どうなると思いますか?

今のところ、BIP148よりも先にBIP91がアクティベートされそうですね(編注:インタビューは18日時点のもので、21日9:00AMに有効化された)。SegWitがアクティベートされると、たぶんビットコインの価格が雲を突き抜けますよね。それと、LightningやSmartcontractに携わる開発者が慌ただしくなります。トランザクション手数料も下がるでしょう。一度SegWitがアクティブになれば、ビットコインのコア開発者は、いよいよSegWit上でMAST(マークル化抽象構文木)やSchnorr署名(シュノア)の作業に取り掛かることができます。これらはビットコインをよりいっそうスケールさせられます。

今後の想定シナリオは

Q. SegWit2xとBIP148の対立における、(A)最悪のシナリオ、(B)現実的なシナリオ、(C)最高のシナリオは何でしょうか? また事業者はどのような対応に迫られますか?

A) 最悪なシナリオは、SegWit2xが期日までにアクティベートされず、BIP148がアクティベートされることです。ネットワークに分岐が起こり、同時に2つのビットコインが生まれます。全員がこの解決策のために奔走させられれば、経済活動が停滞します。レガシーチェーンがBIP148チェーンにRe-orgされるか、Re-orgが起こらないことを確認した上でリプレイ・プロテクションが実装されるまで、事業者は入出金を停止せざるをえません。

B) 最も現実的なシナリオは、マイナーがBIP91を使い8月1日よりも前にSegWitをアクティベートすることです。これはCoreクライアントに最小限のパッチを当てるだけで動きます。もし失敗したとしても、そのままBIP148を動かしてSegWitをアクティベートすればいいのです。マイニングプールやマイナーとて、ネットワークの分岐で自分たちの資産を失いたくはないでしょう。BIP148は分岐が起こってもいずれ1つのチェーンにRe-orgされるものの、それすらもマイナーにとっては望ましくありません。ひと度分岐が起こってしまえば取引所は事態の収束まで入出金を停止せざるをえないので、マイナーたちは機材の電気代を支払い期限までに支払えない恐れがあります。

C) 最高のシナリオは…、BIP141でSegWitが数ヶ月前にアクティベートされることでしたね。そうすれば、一連のドラマに耐え忍ぶ必要もありませんでしたよ。

Q. 少数はこれを「Jihanの戦争」と位置づけ、Eric Lombrozoなどはかなり感情的なポストを投稿していました。私の主観としては、部分的には正しいと思っています。ビットコイン全体のエコシステムの均衡が、パワーバランスが崩れているからです。全てのプレイヤーが絶妙にバランスを保ってビットコインのネットワークが維持されている。そう思いませんか?

私はJihanの考えや動機、なぜそう思うかについても理解できます。ただ、彼の意見には同意できません。スケーリングとセキュリティのトレードオフ関係には、いまだ議論されつくされていないものが多いのです。スケールは、依存関係を考慮せずにはできません。ビットコインは多くの相互依存性をもつ、非常に複雑なシステムです。たとえばブロックサイズを引き上げると、いくつかのノードが強制的に除外されます。Jihanはシステムの中央集権化というトレードオフを許容し、スケールを実現しようとしています。私はそれを許容することができません。コア開発者であるJohnson Lauは最近、JCBA(日本仮想通貨事業者協会)のプレゼンテーションで次のように述べました:「ビットコインは既存システムと違うものでなくてはなりません。そうでなければ、このシステムにこれだけのリソースを掛ける理由がありません。」

現在のパワーバランスに問題があることには同意します。その最たる例が、中央集権化が何故問題なのかということです。もしマイニングが今ほど少数のプールに集中していなければ、SegWitのようなアップグレードに拒否することも極めて難しくなります。別の観点で、たとえば1つの企業がビットコインのトランザクションのうち90%を承認している場合を考えてみましょう。その企業はトランザクション手数料を極限まで引き下げることで、小規模なマイナーを失業に追いやることができます。

すべてのグループがそれぞれ異なるインセンティブで動いており、必ずしもそれらのインセンティブが整合するわけではありません。ですから一部のグループが強大なパワーをもつと、ネットワークに悪影響を及ぼしてしまいます。我々にとって、ビットコインにおける最大の関心は、本質的な非中央集権型構造が侵害されることをいかに防ぐかということです。

今後の展開について

Q. Samsonはこれから、どのようにこの問題に取り組んでいく予定ですか?

現時点においては、誤った情報を正し、情報発信をしていくことが誰にとっても最重要事項です。ビットコインがどのように動いているのか正確に理解している人々は非常に少なく、筋が通っていない誤った情報がたくさん拡散されています。例えば、「SegWitコインはビットコインじゃない」。「SegWitアドレスからは誰でもコインを引き出せてしまう」はその一例ですね。これらの偽情報に反証することは非常に簡単です。例えばライトコインユーザーはSegWitアドレスに200万ドル相当のLTCをデポジットし、取れるものなら取ってみろと懸賞を出しています。未だ誰も獲れてませんけどね。ですが殆どの人は徹底的に調べることはしないので、嘘の情報を流すだけでダメージを与えることができてしまいます。

つまり、ビットコイン・コミュニティは常に一定の競合状態にあることを私たちは受け入れる必要があります。ビットコインに関する方針やアイデアを各自がそれぞれ持っています。そしてどんな技術であれ、ひとびとの根底にあるイデオロギーの違いまでを埋めることはできないのです。

<インタビュー:山崎大輔>

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この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
BTCN編集長 bitbank CSO
ブロックチェーンの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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