LINEで送る
Pocket

 2016年3月4日、ビットコインを法的に定義する新規制法案を含む改正案が閣議決定され、5月25日に可決した。これを契機に、国内でも大手企業が続々と参入表明を行うなど、本市場はますます盛り上がりの兆しを見せている。

 本連載では、ビットバンクの廣末が聞き手となりビットコインとブロックチェーンの市場に参入表明を行なっている企業、または既に参入している企業にインタビューを行っていく。この領域に取り組む企業が、どのような背景から関心を抱き、市場参入を決めたか。そして、この技術を通じてどのような将来を描いているか。「ビットコイン/ブロックチェーン×事業」をテーマに、仮想通貨に挑む企業の狙いを全8回の対談で明らかにしていく――。

infoteria_interview

第七弾は、インフォテリア株式会社<3853>の平野洋一郎 代表取締役社長/CEOです。同社は同社製品のASTERIA WARPにおいて、国産ブロックチェーンの「mijin」と既存システムとを繋ぐmijinアダプタを今年5月から提供。また4月25日に組成されたブロックチェーン推進協会(BCCC)の理事長も努め、業界の健全な発展を目指して邁進しています。


廣末:まず、御社のビジネスについて簡単に教えていただけますでしょうか。

平野:一言で言うと、企業向けパッケージソフトウェア開発です。その中でも、当社は自社製品のカスタマイズや導入コンサルといった受託開発はやっておらず、100%が製品開発となっております。主力製品としてはASTERIA(アステリア)とHandbook(ハンドブック)の2つがあり、現在ブロックチェーンを使っていこうとしているのが、ASTERIAです。

 こちらは2002年に出荷してからずっと育ててきた製品で、一言で言えば様々なシステムを繋いでいくというものです。どのようなところに使われているかと言うと、例えば全社のデータ統合や、オムニチャネル(O2O)のデータ連携であったりとか、クラウドとオンプレミスを繋げると。こちらは販売代理店モデルで現在5600社ほどのユーザーさんに使っていただいております。

廣末:Handbookはどのような製品ですか?

平野:Handbookは2009年に出した製品で、モバイルデバイス向けの情報共有・コンテンツ管理サービスになります。これは、繋ぐところがシステムとシステムではなく、中の人と外の人を繋ぐというサービスです。企業内にある色々なデータやファイルをクラウドで配信することで、安全・確実に管理することができます。配布するだけならメールでもいいのですが、金融機関など情報漏えいに対してセンシティブな組織の場合、ファイルの転送ひとつ取っても厳重に行わないといけませんし、誰がいつ閲覧したかということもわかる必要があります。

 なので、中央管理ができる、集中管理ができるというのが売りです。現在契約は通算で1000件を超えまして、三菱東京UFJ銀行様や野村證券様をはじめ、アクティブラーニングを推進されているよう東京工業大学様などにおいても導入が進んでおります。

廣末:最近は情報漏えいで問題になることがよくありますから。

平野:はい。例えば野村證券様では法人営業が持ち歩く情報はずっと紙だったんですね。ノートPCは情報漏えいの危険性があるということで持ち出せないので、紙をずっと持ち歩かれていたそうです。法人営業の方だと、よく使うカタログだけで大体7kgの重さがあると。iPadであれば、700gの中にすべてのカタログが入ります。営業先で、いきなり「NZドル建ての投信の情報を見せて」と言われてもすぐにお見せできるわけです。

 あとは、金融機関ですと市場がリアルタイムで変わりますから、情報を随時アップデートしないといけないんですね。そういう時に、今までは役員会議に向けて朝から大量のコピーが発生していたのがなくなったと。また、HandbookではHTML5のアプリも配布できますので、例えば日本ミシュランタイヤ様では見積もりアプリの配信にも使っていただいております。

廣末:こちらのビジネスモデルは、ライセンス課金というかたちでしょうか?

平野:その通り、月額でいただくモデルです。

廣末:ですよね。比較的ストック的なビジネスモデルになってらっしゃる。

平野:ほぼ完全にストックですね。出した当初は実はオンプレミスモデルもあったんですが、基本的に月額か年額でして、月額基本料金に加えて1ユーザー300円/月になっております。

廣末:なるほど。大手さんであればバーンとみんな使ってもらって、ストックで。

平野:そうですね。製品の認知や評価が高まるなかで大口のユーザー様が増えている状況です。

廣末:ASTERIAもライセンスなのでしょうか?

平野:これはまだ、売り切りのほうが圧倒的に多いですね。一昨年の冬から月額モデルである「サブスクリプション」を導入しまして、ただサブスクリプションですから積み上がるのに時間かかる。まだ売り上げ小さいですが、確実に伸ばしてきてます。

廣末:そこで今回は、ASTERIA WARP(アステリアワープ)のほうをブロックチェーンと組み合わせて、それを拡販していくっていうのを行われたということですね。

平野:そのとおりです。

何十億とコストを掛ける時代は終わった

廣末:今年のはじめに、御社とさくらインターネットさん、テックビューロさんとで提携されましたが、御社がmijinを評価したポイントについて教えていただけますでしょうか。

平野:もともと、私がビットコインを知った当初、ちょうど騒がれ始めた頃は使えると思ってなかったので気にしてなかったんですね。ところが、2年半ほど前にYコンビネータ―のDEMO DAYに参加しまして、ブロックチェーンが単独で使えるという話を聞いた。その時「あ、そう考えるとASTERIAと組み合わせて使えそうだ」と思いまして。

 そこで、ブロックチェーンを使えるようにするということに価値を感じました。ただ、当時はプライベート・ブロックチェーンという言葉が出てきておらず、企業内で閉じて使えるものがありませんでした。そうしたなかで「見えないかたちで、ブロックチェーン単体で使えるものはないか」と考え、アメリカを中心に提携先を探していた経緯があります。

廣末:なるほど。

平野:当時は、国内にブロックチェーンを開発する会社なんてないと思っていましたが、ある人から「国内でブロックチェーンを開発してる会社がある」と紹介を受けまして。それが大阪のテックビューロさんだったんです。

我々としては、やはり「通貨」という観点では興味はなかったんですね。たとえば製造業ですとか、流通業ですとか、色んな企業で使えるということを考えると、仮想通貨ではなくてブロックチェーンだと。結果として、プライベートなブロックチェーンに行き着くのは自然なことでした。

パブリックブロックチェーンも繋ぐ価値はあるかもしれませんが、企業内利用ではプライベートブロックチェーンが適しています。そしてご紹介を受けた「mijin」を評価したところ、その時点では機能も性能も抜きん出ていることがわかりました。

廣末:せっかくなので、最近出されたミャンマーにおけるマイクロファイナンスの実証実験(編注:取材は6月時点)のお話をお聞きしたいんですけれども。マイクロファイナンスということは、要するに小口のお金を貸しますよってことですね。

平野:その通りです。小口融資のほかに、貯金もできるんですね。マイクロファイナンスといえば融資のことですが、小口融資を受けたい人たちの多くは銀行に相手にしてもらえてないわけです。なので、今回は融資だけでなくセービング口座も対象にしています。

廣末: BCファイナンス(BCF)さんのデータにアステリアを噛ませて、mijinのブロックチェーンに流し込んで、データの整合性が取れることが確認できたと。

平野:そのとおりです。

廣末:元々ブロックチェーンは勘定系のシステムと相性はいいと思いますが、実際、この技術を使うことによって既存の金融機関のモデルに適用する具体的なメリットはどのようなものがあるのでしょうか。

平野:はい。今後マイクロファイナンスが普及していく中で、大きな課題としては2つ。ひとつはファイナンスのリスク、あとはオペレーションコストですね。

BCFさんの場合、3年前にサービスが立ち上がったのですが貸し倒れが一度もない。つまり、本業のリスクは既にかなり低いということです。一方で増えてきているのが、オペレーションコスト。今後も増大するのはわかっているので、これをいかに減らしていくかというところ。ここでブロックチェーンが使えないかという検討をしているわけです。BCFさんがシステムを拡大していかなければならないという話になった時、システムコストがどんどん膨れ上がっていくという課題の解決に使えないかという考えです。

廣末:では実際にコスト削減効果が得られそうだというところはこれから実証していくのですね。

平野:まだわからないです。ですが、銀行のようなシステムを入れると数億円と掛かる話になるので、そういうわけにはいかない。例えばBCFのシステムですと、本店と支店の連絡は日次バッチでの処理なんですね。Excelのデータを送ると。そんなことは、これからはやってられないわけです。

 一方で、ブロックチェーンなら元々勘定系システムですから、アプリケーションも組み込まれているといっても過言ではありません。お金のやり取りや残高、信用を管理できるわけです。今回の実証実験では、システム全体を対象としてはしてませんが、フェーズを分けてさらに進めていければと考えています。

廣末:まずは、一番最初のハードルをクリアしたということですね。

平野:はいその通りです。

廣末:今回、mijinとデータ連携ができるようになったアステリアですが、ミドルウェアとしてSIerさんですとか、どのように使っていただくイメージなのでしょうか。

平野:やはりまだまだ、ブロックチェーンを扱えるエンジニアの方々というのは少ないんですよ。なので、コードを書かなくても作れるというところは価値があると思っています。ASTERIAはノンコーディングなんですよ。画面でフローチャートを書けば繋がるんです。データ変換が必要な場合も、Mapper(マッパー)があるのでいちいちプログラムを書かなくていい。

廣末:とすると、設計開発段階が非常に簡単になる。

平野:そのとおりです。

廣末:先日さくらインターネットの田中社長にも話をお聞きしましたが、多種多様な業種の方々が関心を持ってやってらっしゃるみたいですね。

平野:はい。特に、金融系の顧客層が増えてきていることは重要なポイントだと思っています。

 というのも、今まで国内の金融系のシステムはパッケージを使わないのが普通でした。これはセキュリティの問題も言われますが、根本は開発資金が潤沢にあるという点。公共に関しても同様です。この領域は今まで、大手ベンダーがフルスクラッチで何十億円、何百億円とかけて受注して作るという世界だったんです。

 一方で製造や流通のような世界競争に晒されている領域は、そこまでコストを掛けられないため、段々とパッケージシステムを使う方向へとシフトしてきています。

 しかし金融や公共はそうではありませんでした。ところが、フィンテックの流れやブロックチェーンの出現によって、その構造が変わり始めているわけです。アメリカでは既に、他社製品やサービスを取り入れていかなければ競争に負けて潰れゆくという状態です。であれば、日本の金融機関が世界への競争力を維持するためには、何十億とコストを掛けてやっていくのでは厳しい。

廣末:ありがとうございます。テックビューロさん以外との取り組みというところでは、何か展開されているのでしょうか?

平野:今はmijinだけですが、ASTERIAはアダプターを開発すれば何でも繋がりますので、ほかのブロックチェーンたとえばEthereumなどに関しても、ニーズがあれば対応していきます。

廣末:なるほど。これまで御社が実験をされてきた中で、金融以外でブロックチェーンが適しているんじゃないかという領域はありますか?

平野:金融以外ですと、例えば製造業、流通業。あとは医療や公共も適用可能だと考えております。例えば流通であれば、トレーサビリティ、製造であれば検査・検証、医療であれば治験データ、公共であれば登記。こういった「ブロックチェーンに記録する」という機能を使うことで、今までよりも強固な信頼性を得ることが可能ですし、コストも下げられると考えています。

廣末:そういった領域への拡販という点では、どのくらいのスパンで考えられているのでしょうか?

平野:これはですね、年単位で時間がかかるという認識です。

廣末:それはどういうところで。

平野:やはりうちが取り組んでいるところっていうのは、いわゆる企業向けの上方システムですから、そう簡単に置き換えが起こるということにはなりません。検討するにしても1年以上かけるようなものが少なくありませんから。

 それを考えると、月単位ではなく年単位かけて進んでいくんじゃないかと思っています。フィンテックという潮流に乗ってすら、日本の場合は進みが遅いです。金融システムのリプレースに関しては、何十億円、何百億円と掛けてしまっている手前、検討だけでもかなり掛かるんじゃないでしょうか。

sizerefine_DSC04032

ブロックチェーン推進協会にかける想い

廣末:平野CEOは、今年の4月にBCCCを立ち上げ理事長に就任されていますが、設立の経緯や趣旨についてお聞かせいただけますでしょうか。

平野:元々、ブロックチェーンをやろうと決めた時から、この技術を推進し普及させていかないといけないなということを思っておりました。というのも、XMLの時の状況が似ているなと思ったんです。うちはXMLの専業ということで会社をスタートさせましたが、世の中で全然普及していないと。ビジネスを拡大していくには、まず技術を世の中に広めていかないといけないと考えました。

 そこで、私はXMLコンソーシアムというものを作りまして、XMLマスターという認定制度も作りました。その時に重要視していたものの1つとして、ベンダーに依存しない、「非依存」だということ。あるベンダーとベンダーを繋ぐ時、いずれかによらないニュートラルに扱える非依存なフォーマットというのは非常に重要なわけです。たとえばWindowsでもMacでも扱える、ということですね。

 ブロックチェーンをやられてる方、ビットコインをやられている方などたくさん参加されていますが、「つなぐ」ということを生業としているうちがこの中心になって進めていくことに価値があると思いました。新しい技術が注目をエビル初期の段階では、マスコミをはじめ盛り上がるんですよ。でもまだ商売にはならない。そして技術そのものがもう騒がれなくなってようやく売り上げが立ち始めます。

廣末:そうですね。

平野:XMLも同じで、当時はXML万能と騒がれましたが、当然のごとくガートナーのハイプカーブが如く幻滅期も来まして。ブロックチェーンも同じで、今はいろいろと騒がれていますが、今のうちに踊らずに情報収集や実証実験を続けていく必要があります。皆が別々にやっていると、コストが掛かるだけで消耗していきますから。

 それとブロックチェーン関連にはスタートアップも多いので、アドバイザーにVCの方にも入っていただいておりまして、資金調達活動も支援しますよと。そういった業界の底上げ支援といったところも考えております。

廣末:今後はどのような活動を構想されているのでしょうか?

平野:委員会を中心に活動を行います。普及委員会、技術委員会、運営委員会があります。具体的な内容としては普及委員会はセミナーや勉強会、広報活動。技術委員会は加盟メンバー間で実証実験ですとか、つながってプロジェクトを進めるということをやっていくつもりです。

廣末:これからもBCCCで色々な取り組みや発表をされていくと思いますので、いち参加企業としても期待しております。本日はありがとうございました。

インタビュー連載「仮想通貨×事業」

第一回 セレス都木聡 社長 仮想通貨のソーシャルインパクトは計り知れない
第ニ回 DMM 亀山敬司 会長(前編) ビットコインは将来的に化けたらすごい
第ニ回 DMM 亀山敬司 会長(後編) 水族館からモノづくりまで、"なんでもアリ"の先にあるもの
第三回 GMOメディア森輝幸 社長 ブロックチェーンはインターネットに次ぐ"変革"だ
第四回 マネパ奥山泰全 社長 いちはやくマーケットインしている会社でありたい
第五回 マイクロソフト大谷健 氏 日本のロールモデルを提示したい
第六回 さくらインターネット田中邦裕 社長 ブロックチェーンで社会は既に変化し始めている
第七回 インフォテリア平野洋一郎社長 ブロックチェーン推進協会設立のワケ
第八回 WiL久保田雅也パートナー 人類は未知の領域<テレポーテーション>に突入した

  • ビットコインニュースを毎日お届け!

  • BTCN公式アカウントをフォロー

    follow us in feedly
シェアする

この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
monacoin:MTn7hiNovBHyN7gjtvD1Hh7W96Zmghp41B
bitcoin:1NK8S4ep9ZUZ9H9AmTAfvrCVVAKLbpmi36