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ビットコインは集権機関に頼らず、P2Pによるインターネット上の分散的な「契約」の形を定義した。ビットコインでは、ブロックチェインと呼ばれる公共の取引元帳にすべてのアカウントの残高を記録し、取引を行うたびに内部的にブロックチェインへアクセスし署名を行っている。

また、ブロックチェイン上の取引はすべて「あなたは今、このビットコインを使えます」という形式で記述されている。つまり、ユーザーは実際にビットコインの現物を持っているというよりも、厳密には、持っているのは秘密鍵だけであり、対となる公開鍵に紐付けられたビットコインの帳簿の所有権を持っているということである。

900人以上の弁護士を擁するビッグ・ローファーム:パーキンス・コイエは、現在のビットコインのエコシステムにおいてビットコインが「無形資産(general intangibles)」であれば、新しい所有者が経済的損失を被る可能性があると述べた。また、このことは不動産法上の担保権の下に管理される可能性があり、しかしながらビットコインを購入する際、ブロックチェインには住宅ローンで提示されるような「情報」は存在せず、所有権のみが保証されているという。

パーキンス・コイエは、これを「ビットコインの欠陥」であると主張する。筆者はこの見解について否定的な立場にあるが、それでもひとつの意見として紹介しようと思う。

 

ビットコインの致命的な欠陥

上述したように、ビットコインの取引元帳ブロックチェインにはすべての取引が記録されている。ブロックチェインはブロックチェインエクスプローラーなどを使用することで、すべての取引、すべてのアカウント(正確にはアドレス)の残高を閲覧することが出来る。ブロックチェインの透明性はそれだけでユーザーの所有権を担保する画期的なツールであるが、リアルの世界のユーザー情報とは紐ついておらず、すなわち、リーエン(Lien:担保権)を満たしていない。

“ビットコインのような無形資産における担保権は、販売、許可、あるいは権利譲渡にもかかわらず、担保権の自由な移動に対する担保権者の合意がない限り、担保義務を満たすか、担保権は終了する。[…]無形財産における担保権は、とりわけビジネスのための銀行とのクレジットライン構築において極めて一般的だ。ビットコインが無形資産であり、無形資産における担保権が取引の際に自動転送されず、担保権が偏在することは矛盾であり、致命的な欠陥である。ビットコインの所有者は、一つ前以上の所有者によって担保権を侵害されている。”

パーキンス・コイエはこれをUCC第8条「投資有価証券」とすることで解決できるとしているが、ちょっと待ってほしい。ビットコインはそもそも新しい「暗号通貨」という概念であり、既存の法律の上では縛りにくいということが既に多く議論されている。

ビットコインはP2Pのデジタルマネーとして誕生したものであり、思想の上では有価証券でも無形資産でもなく、現金と同じように使われることを意図した「お金」だ。ビットコインで支払いを受け付けているマーチャントも、ビットコイン決済代行サービスを運営する企業も、ビットコインを受け付ける際に後々返済してもらおうと考える人はいない。そう、ビットコインは円やドルのように、殆どの場合お金だからだ。故に、ブロックチェインの上で行われる取引には債務やリーエンは存在し得ない。

エスクローなどの特定領域においては、ビットコインを債務と捉えることもできるだろうが、ビットコインの技術を理解していればこのような「こじつけ」には至らないのではないだろうか。仮にビットコインを担保として融資を受けたい場合には、銀行などは2of3マルチシグネチャアドレスを使用することで、債務不履行に陥った際にも債務の一部は回収可能だ。

しかしながら、ビットコインを無形資産として分類することが不可能であることがわかったという点で、有益なレポートと言えるだろう。ビットコイン自体は今年6年目に突入する浅い歴史の概念であり、その革新的な技術は既存の枠に囚われない新しい価値を創造しようとしている。これを規制するには一筋縄ではいかず、少なくとも数年単位の時間が必要になるだろう。

通貨のような側面を持っているため、規制の内容如何ではビットコインの革新は有効に働かず、使いにくいものになってしまうことにもなりかねない。(とはいえ、革新性はそれだけではないのだが。)新しい価値を生み出すビットコインビジネスが制限されないような良い仕組みが形成されることを願うばかりだ。

参考:CoinDesk – Perkins Coie: What Bitcoin Can Learn from Real Estate Law

この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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