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iPhone6の発売と同時に、Appleは新たな決済機能Apple PayをiPhoneへと組み込んだ。Apple Payはおサイフケータイと同じようにNFCを利用しており、店頭の読取機にスマホをかざすだけで決済可能な機能だ。この機能は間違いなくビットコインのマイクロペイメントと真っ向から対峙することとなるだろう。普及規模と利便性、安全性の面でビットコインに勝機はあるのだろうか。

Apple Payとビットコインの比較を行っているいくつかの資料を見つけられたので、私自身の考えを交えながら比較してみようと思う。参考にした資料は次の2点だ。

(1) Why Apple Pay Is a Threat to Bitcoin – CoinDesk
(2) Apple Payとビットコインの比較(2014年9月23日時点) from GOTO_A

※どちらもわかりやすく考察しており、特に後藤氏のスライドは理解を深めるには最適な資料のため、閲覧を推奨します。

Apple Payの圧勝?三位一体が鍵

Apple Payの強さは、Appleが三位一体の強固な基盤を持っていることにある。AppleはiPod、iPad、iPhone、Macbookなど洗練されたプロダクトを生産し続け、業界の最先端をリードしてきた実績がある。そのため固定ファンの数は多く、また、国内スマホ種別での所有率でiPhoneが70%弱であることからも強く支持されていることが窺える。

Apple Payの三位一体とはすなわち、ユーザー数、リテーラーとの連携、利便性の高い決済手段だ。Apple Payはまず米国からサービス開始するとアナウンスされているが、アナウンスされる以前より、既に米国の主要ブランドとの契約を締結している。リテーラーの内容は様々であり、フード、日用品、総合デパート、薬局、地下鉄など、その数なんと22万店舗以上となっているが、今後更に提携店を増やしていくことが予想される。

そして利便性の高い決済手段、つまりApple Payの本質とも言えるNFC(近距離無線通信技術)を利用し、”ユーザーの個人情報や取引記録を記録せず、匿名性を維持”したまま決済が可能であるということ。Appleは、StripeやSquareなどと業務提携をし、クレジットカード決済の簡略化ならびに安全性の向上を実現しようとしている。

Apple Payによる決済は次のように行われると予想されている。資料(2) 7-8pより抜粋

①店舗が代金を請求
②iPhoneで指紋認証し、NFCにてカード番号の代わりにデバイスナンバーを送信
③業務提携する決済代行会社にデバイスナンバーを送信し、デバイスナンバーと一緒に保存されたカード番号へ変換。カード会社へ情報を送信
④決済が承認されると、決済代行会社にトランザクション情報が返され、対応するトークンを発行し、店舗とユーザーに通知
⑤決済情報が通知され、決済完了

通常のクレジットカード決済と最も異なる点は、②クレジットカード番号を店舗に知らせない点、④のトランザクション情報を店舗に知らせず、トークン(ワンタイム取引番号)を返す点だ。これらの方法が、個人情報やカード番号を店舗へ知らせることなく、匿名性を維持することが可能とされている理由だ。

Apple Payはこれらの要素が三位一体となっており、サービスが開始されれば、いよいよNFC決済が爆発的に流行すると言われている。

これだけを見るとビットコインに勝ち目はないように見えるが、本当に全く勝ち目がないのか。Apple Payの弱点についても触れておかねばなるまい。

手数料の増加と、設備投資の増加と…

Apple Payは企業の持つ力のために、一瞬で世界のシェアを奪うことのできる力を持っている。しかしながら、必ずしも消費者や店舗との利害が一致するわけではない。それは、カード決済にAppleが加わる場合、カード会社への2%程度の手数料に加えて、Apple Payに対しても追加で手数料を支払わなくてはいけなくなるということだ。更に、NFCを読み取るためには250ドルほどする専用端末を導入しなくてはいけないため、店舗にとってかなりの負担となってしまう。

利便性を得る代償に、手数料を上乗せで支払うことになるのが真に幸福なことかというと甚だ疑問である。実際、米国でも小売最大手のウォルマートをはじめ、セブンイレブン、Best BuyなどはApple Payの導入を拒否している。これらの企業はNFCを使用せず、iOSやAndroidのアプリを使った独自のクレジットカード決済サービスを展開しようとしている。Appleに手数料を支払うくらいなら、自分たちで仕組みを作ってしまおうということだろう。このサービスが開始されると、11万店舗で利用出来る見込みだ。

ビットコインの強み

Apple Payの弱み。それはまさにAppleが中央集権機関であることに他ならないだろう。

反して、ビットコインは特定の権力を持たず、分散的な取引システムが完成している。利用するのにクレジットカードは必要ないし、すべての取引は分散的な監視の上でブロックチェインに記録されるため、支払う必要のある手数料は10円未満のネットワーク使用料だけだ。

そして、ビットコインの決済は、手打ち、QRコード読み取り、URLからアプリ起動など行うことが出来るため、必要なのはカメラ付きのスマホのみである。また、最近ではスイス大学の研究チームにより、Android4.4で追加されたNFCの「ホストカード・エミュレーション」機能を用いたビットコイン決済手段が開発・試験されているという。Apple PayのNFC決済と同じように使うことも可能となれば、クレジットカードを必要としない分、ビットコイン決済の利便性が上回るのではないだろうか。

短期的にはApple Payが優勢

先に普及が進むのはやはり、Apple Payだろう。しかし、ビットコインがApple Payに破れ、希望が潰えるということでは決してない。Apple Payの指紋認証は素晴らしく、現時点において明らかに他の追随を許していないが、決済システムの中身自体はクレジットカード決済システムの焼き直しをしただけである。機能性、拡張性、匿名性の保護と言った面ではビットコインが大きくリードしている。

また、ビットコインには多くの課題があるのも確かだ。税を納めるためには法定通貨に変換しないといけないし、ビットコインを採用する業者はまだまだ少なく、公共料金や家賃なども同様にしばらくは円などに変換して支払う必要があるだろう。小額決済、少額の手数料が売りのビットコインを購入するためにクレジットカード会社へ手数料を支払う必要があるなどという本末転倒な状況には、改善する余地が大いにある。

長期的に見ればビットコインに軍配を上げたいが、ビットコインの取引所やウォレットなど、インフラが構築された後にもおそらく新たな問題に直面し、それを乗り越えなければ本当の意味で認められることはないのではないだろうか。ビットコインを継続的に入手する仕組み、つまり、労働賃金としてビットコインを給付する文化が根付かなければ、Apple Payならびにクレジットカード決済に取って代わる決済手段にはなりえないと感じる。

もっとも、ビットコイン技術は通貨としてのマイクロペイメント機能以外にも、たくさんの利用機会を想定出来る。最近では、ブロックチェインをデータベースとして利用するなど(ワインの出自をブロックチェインに刻むなんてことも)、通貨以外の使われ方が考えられているのだ。何も決済だけに拘る必要はないだろう。本末転倒なことではあるが、ビットコインを決済技術としてのみ想定するのは、全くもって野暮なのである。

この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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