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日本銀行は11月17日、中央銀行によるブロックチェーン・分散型台帳技術(DLT)の活用について論考した「中央銀行発行デジタル通貨について ―海外における議論と実証実験―」レポートを公開した。

「フィンテック」の文脈で語られることの多いブロックチェーン・DLTは、ウォール街だけでなく多くの金融機関、政府、中央銀行の注目の的だ。最近では、ロシア連邦中央銀行やイングランド銀行など、中央銀行が自ずから実証実験に参加し、DLTの潜在的可能性を見出すための検討を始めている。

日本銀行のブロックチェーン・DLTに対する歩みは、昨年12月21日に公開された「「デジタル通貨」の特徴と国際的な議論」レポートから表立った動きは確認できていない。しかし、世界中からの注目の例外に漏れず、日本銀行もまたブロックチェーンに強い関心を抱いている中央銀行のひとつだ。

レポートの中では、中央銀行が発行する銀行券に取って代わる「中央銀行発行デジタル通貨」に対する論考と、「日本銀行当座預金(日銀当預)のDLT化」に対する可能性に言及されている。

(略)ここで留意すべきは、「中央銀行によるブロックチェーン・DLT の活用」を巡る議論は、必ずしも「現在流通している紙の銀行券をデジタル形式のものに置き換える」という、いわゆる「中央銀行発行デジタル通貨」に関する議論に限られている訳ではないということである。すなわち、既に実質的にはデジタル化されたデータとして管理されている中央銀行当座預金について、データの管理方法を集中的なやり方から、ブロックチェーン・DLT を活用した分散的なやり方に移行させたらどうなるか、といった議論も含まれている。

中央銀行がデジタル通貨を発行することで起こりうる影響については、①ユーザー利便性の向上、②金融政策の有効性確保、③通貨発行益について言及された。日本銀行は、キャッシュレス化に伴う効用として「紙幣ベースの支払手段の利用にかかる、GDPの0.52%を占めるコストの削減」(KPMG・シンガポール)、「銀行券・硬貨製造にかかるコスト1億クローネ/5年の削減」(デンマーク中銀)などを例に挙げた。

また、昨年のレポートでも述べられていたように、 ビットコインなどの仮想通貨がソブリン通貨を駆逐する可能性にも言及。仮想通貨が取引に利用されるとすれば、中央銀行のコントロールが及ばなくなり、金融政策の有効性低下は免れないとの主張もあることを紹介している。そうなれば、中央銀行は自身のデジタル通貨を発行する流れに逆らうことはできない。

この点において、7月にD3 WEEK 2016で行われた『ブロックチェーンの衝撃』特別対談の中で野口悠紀雄氏が興味深い考察を残している。それは、中央銀行がデジタル通貨を発行することで、「すべての取引が監視」される、中央銀行・政府によるがんじがらめの世界になる恐れがあるというものだ。野口氏は、これが実現すればジョージ・オーウェルの小説『1984年』に登場するビッグ・ブラザーの有名なスローガン「Big Brother is watching you」よりも生きにくい世界がくるという。

レポートによれば、中央銀行によるブロックチェーン・DLT等を活用したデジタル通貨の発行に関して、オランダ、カナダ、イングランド、ロシア、中国などの国は既に検討や実証実験を始めているとのこと。日本銀行がデジタル通貨を発行する可能性については言及しなかったものの、「興味深い論点」として「中央銀行口座を一般に解放する」ことについて言及したことは、銀行券の利用者としても極めて興味深い。

中央銀行が広く一般向けに、銀行券を代替し得るような形でデジタル通貨を供給する場合、これは中央銀行口座を広く一般に開放することと近くなる。このことは、「中央銀行はいかなる主体に口座を提供すべきか」という観点からも、興味深い論点を提起するものといえる。


日本銀行

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この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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