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whatisbitcoin記事番号 010

目次
1. ビットコインの登場
2. ビットコインの特徴
3. ビットコインの仕組みが実現できた背景
4. ビットコインを支える技術
5. 発行上限が決まっている意味
6. Mt.Gox交換所の破綻とはなんだったのか
7. ビットコインのもたらす未来


 

1. ビットコインの登場

2008年、「ナカモト サトシ」という人物により「Bitcoin: A Peer-to-Peer Electronic Cash System」http://www.bitcoin.co.jp/bitcoin.pdf)という論文が公開された。これがビットコインが世に出た始まりであり、そして2009年にはこの論文の仕組みがプログラムとして実装され、ビットコインの運用が始まった。

その後ビットコインはインターネット上の「電子マネー」のような感覚で、徐々に世界中に広がりを見せてきている。特に日本では2014年2月のビットコインと現金を交換するMt.Gox交換所(東京渋谷)の破綻により、一躍知名度が高まることとなった。日本においてはこの事件で、世間一般の人には、何やら怪しいインターネット上の仮想的な通貨が破綻したように認識されてしまった。

しかしMt.Gox交換所の破綻とビットコインの仕組みとは無関係であり、今でも世界中でビットコインは使われ続けており、特にアメリカなどでは次々と大手企業が決済手段として採用するなど普及を続けている。Mt.Gox交換所の影響でビットコインについてはイメージのみで怪しいなどと語られることが多いが、その仕組みはインターネットの発明に匹敵するような技術革新をベースとしており、今後世界中で決済手段として使われ、また仕組みの様々な分野への応用が期待されている。

インターネットも、その登場初期は一部のコアなユーザーだけが使用していたが、今ではなくてはならない社会インフラへと成長している。ビットコインも、インターネット同様、大きな可能性を持っており、使う、使わないに関わらず、どういうものなのかを知り、そこにある新しい考え方・発想に触れることはとても意義が大きいと考えられる。

 

2. ビットコインの特徴

ビットコインは、一般的には楽天EdyやSuicaなどの電子マネーのようなものと認識されており、確かに、ビットコインを使用してインターネット上で支払いをしたり、現実の店舗で飲食代金の支払いに使用することも可能なため、知らない人に対しては、「電子マネーのようなもの」と説明することが一番早いかもしれない。

しかしその仕組みは電子マネーとは非常に大きく異なる。

電子マネーは、「チャージする」というように、まずは現金を前払いして電子マネーに交換し、残高を支払い時に引き落とすことで決済が行われる。また、使える場所は加盟店舗など限定されている。電子マネーの価値の裏付けは前払いした現金であり、電子マネーの発行企業が管理している。発行企業は、電子マネーの発行・管理について、資金決済法と金融庁からの厳しい管理監督を受けるため、発行企業が倒産しない限りは、電子マネーの健全性は一定程度確保される仕組みとなっている。

一方、ビットコインも、ビットコイン販売所等で円やドルを支払い購入、使用時は支払先に送金するという電子マネーと似た使い方をする。しかし、電子マネーと大きく異なるのは、ビットコインは裏付けとなる価値がない「情報・データ」でしかなく、また、管理する発行企業もないという点にある。ビットコイン購入時に、販売所等で円やドルを出して購入するので、この代金が裏付け価値に思えるかもしれないが、この代金がどこかの管理会社に集められて、ビットコイン破綻時に備えた返却用の資金になることは一切ない。

この点だけを見ると、とても怪しくて使えないと普通は考えるだろう。しかし、使われている革新的な技術・仕組みにより、世界中の人がビットコインを「価値の交換手段」として利用し始めている。世界中で利用可能なため、電子マネーのように国内の加盟店舗でのみ使用可能ということもなく、世界共通通貨のように考える人もいる。

そもそも「お金」は、大昔は、「石」などであった。それ自身に裏付けとなる価値や管理する発行者もなかったが、「皆がそれを価値がある」と認識することで、流通し、価値の交換手段、価値の貯蔵手段として利用されてきた。ビットコインも同様に、それ自体に価値はないが、「価値の交換手段として利用する人、受け取る人が世界中で増えること」、これが価値となり流通しており、電子マネーなどと比べ、より本質的に「お金」に近いものと考えることもできる。

しかし、当然使う人が増えるには、仕組みに信用が必要であり、簡単に改ざんされたり、発行量が増えすぎて価値が暴落したりするようなことがあってはとても使い物にならない。この点、ビットコインには、価値の裏付けがない、発行者・管理者がいないという点をカバーする、以下のような非常に信用力の高い仕組み、そして支払い手段としても利用しやすい特徴が備わっている。

ビットコインの信用力を裏付ける特徴

(1)発行上限が定められている
ビットコインは2,100万枚以上は発行されない仕組みとなっている。
このため恣意的な発行数の増加によりインフレになり、保有しているビットコインの価値が薄まることはない。
なお、2014年10月には既に1,300万枚が発行済みとなっている。

(2)暗号化技術を用いることで改ざんや別人を装うなどの不正なデータを検出する仕組みが備わっている
「誰が送付し、誰が受けとったのか」という情報の改ざんが難しい仕組みのため、安心してビットコインを送ったり、受け取ったりすることができる。

(3)取引について、数学的技術を利用した(不特定多数による)ネットワーク全体での維持管理作業が行われ、すべてのコインの取引履歴と所在が一意に定められる仕組みを持つ
これがビットコインの非常に革新的な仕組みであり、発行者・管理者がいなくてもビットコインの仕組みが適切に維持される要因となる。すべてのコインの取引履歴と所在が、いわば参加者全員で管理されているので、金額の改ざんや、コインの二重使用が防止されることになる。

ビットコインの維持作業への参加はインターネットを介して、自分のパソコンの計算パワーを提供する事で誰もが自由に行うことができ、オープンな仕組みとなっている。改ざんを行うには世界中のビットコインの維持作業に参加している人の過半数を超えるパソコンのパワーが必要となる。維持管理作業の内容は,取引に不正がないか、保有している残高以上の送金が行われていないか(二重使用が無いかなど)のチェックとなり、承認されない場合は、不正取引が行われた取引内容は第三者に対する対抗要件を持たず、不正に受け取ったコインをその後使用することができなくなる。

なお、送金取引自体は送金者・受取人間で即時に完了するが、承認には10分以上の時間がかかる。このため即時提供サービスが求められる実務においては、送金完了とともにサービスを一旦提供開始しておき、承認が得られず不正取引が判明した時点でサービス提供を中止するなどの対応が考えられている。

(4)不特定多数によるネットワーク上の維持管理作業に対する報酬対価としてのみ、新規コインの発行が行われる
発行者がいないのに、ビットコインは上限枚数まで新規発行が行われることになるが、ビットコインにおける新規発行とは、ビットコインの仕組みの維持へ協力した報酬という形で支払われることで行われる。支払いはプログラムにより自動で行われており、この報酬がビットコインの維持管理作業へ参加するインセンティブとなる。

なお、2,100万枚の発行上限へ達した後は、新規発行としての報酬は無くなるが、個々の送金取引から支払われる取引手数料が分配される。

(5)上記仕様がプログラムに組み込まれており、恣意的な変更ができない
プログラム内容を変更するには参加者の過半数が変更後のプログラムへ乗り換える必要があり、ビットコインを保有する人、維持する人に不利となるような改悪を行うことは非常に難しい仕組みとなっている。

ビットコインの支払い手段としての特徴

(1)支払取引は相対2者間(P2P)で完了
クレジットカード決済や銀行送金では、大規模な決済ネットワークを利用するが(システム維持のため割高な手数料が発生)、ビットコインは支払いにインターネットの仕組みを利用し、送金先と受取先の2者間(P2P、Peer to Peer)で送金取引は完了する。インターネットの仕組みを利用するため、銀行口座も不要で、スマートフォンやパソコンなどネット接続環境さえあれば世界中のどこででも24時間ビットコインの受け払いが可能となる。

(2)手数料
送金取引は2者間で完結するが、外側でビットコインの維持管理ネットワークにより取引の事後的な承認作業が行われ、手数料はこの維持管理ネットワークに対して支払われる。手数料は維持管理ネットワークに対する報酬という位置付けのため、送金者が負担し自由に金額を決めることが可能であるが、一般的に金額に関わらず0.0001ビットコイン(レートにもよるが数円~数十円程度)を払えばよいことになっている。

銀行での国内送金は数百円、国際送金は金額比例で数千円以上、カード払いは金額の3%など(店舗負担)の手数料となっていることと比較すると、ビットコインの定額で低い手数料は非常に魅力的と言える。

また、ビットコインの低い手数料は、従来“手数料負け”していた少額決済ビジネスを切り開く大きな可能性として期待されている。特にネット上の記事など小さなコンテンツ単位で課金を行うビジネスは、送金手数料負担がネックとなっているが、ビットコインによる即時少額決済導入により利益率の向上が実現できるだろう。

(3)既存の電子マネーと違い
電子マネーは加盟企業グループ内でのみ流通し、チャージした後に使うと残高が消えるという、譲渡不可の「前払い支払い手段」であるが、ビットコインは世界中で制限なく流通可能であり、譲渡可能で、使っても消えることが無く流通し続けるという、円やドルのような通貨に近い性質を持っている。

(4)クレジットカードのように与信が発生しない
ビットコインは相対で直接送金を行うので、クレジットカード払いのように与信が発生することがないため、カード会社との契約が不要であり、従来カード決済導入の敷居が高かった個人や中小企業などが、簡単にネット決済を利用可能になる。

 

3. ビットコインの仕組みが実現できた背景

ビットコインは、インターネット上で、発行業務、維持管理業務をみんなで行い、みんなで支払い手段として使い、仕組みの維持管理を手伝ってくれたみんなに手数料を払い、価値の裏付けはないけどみんなで使っていこう、というものである。

これを特定の国や地域ではなく、世界規模で行い、そしてうまく稼働している。これは従来ではとても考えられなかったことである。仕組みを考案したナカモト サトシは、悪意のある人が参加することを前提に、非常に巧妙なアイデアでこれを実現させたが、実現には以下の前提が必要であったため、近年になって初めて実用可能になったものだと言える。

(1)モバイル環境も含め、高速なインターネットが普及し、世界中の人が自由に繋がり情報交換をできる環境が出来上がっている。
(2)高性能のパソコンが広く個人レベルで保有されている

ビットコインでは改ざんを防ぐために、維持管理作業では世界中のネットワーク参加上のパソコンに非常に負荷の高い計算を競って行わせており、上記の2つの環境が揃っていなければ、ビットコインの信頼性は実現不可能であった。

 

4. ビットコインを支える技術

ビットコインは支払い手段としての側面だけではなく、それを支える革新的な技術も注目されており、技術を「お金」だけではなく様々なことに利用しようという流れもある。ビットコインはインターネット上の単なる「データ」でしかないため、如何にしてコピーをさせないかが技術的なポイントとなるが、これに対しナカモト サトシは、コピー可能な電子データに、所有権を付与するという仕組みを考えだし、ビットコインを実現させた。

音楽ファイルのようにインターネット上でやりとりが行われる電子データは、簡単にコピーされてしまう。一方、現実の紙幣や硬貨は実物資産であり、誰かにあげると手元には残らず、持っている人が所有権を保持していると容易に分かる。ビットコインでは、インターネット上というデータが自由に動き回る空間で、誰が今あるコインを持っているのかを可視化し(この仕組みをブロックチェーンと呼んでいる)、現実の紙幣や硬貨のようにデータ(コイン)に一意に所有権を定め、コピーされても所有権が無ければ使えない仕組みを実現している。

これにより、ビットコインはデータでありながら従来にない非常に強力な改ざん対策が実現できている。そして、この「データに所有権を付与できる仕組み」はビットコイン以外にも様々な応用可能性が注目を集めており、「ビットコイン2.0」という概念でビジネスへの応用などが検討されている。

 

5. 発行上限が決まっている意味

ビットコインは発行上限が2,100万枚と固定されているため、普及した場合、世の中の決済をこの2,100万枚で行わないといけない、とてもそれでは数が足りないと考える人もいるかもしれない。しかしビットコインは、コインの流通数が足りなくなることを防ぐため、普及するにつれ単位が細分化されていくことを想定した設計となっている。

ビットコインは仕組み上、例えば1ビットコインを持っている場合、0.1ビットコインや0.001ビットコインなど、自由に単位を分割して送金することができる。これはつまり、コーラ1杯=1ビットコインだったものが、普及するにつれビットコインの価値が上がり、コーラ1杯=0.01ビットコインとなっていくような状況が想定されているということになる。

ビットコインは発行上限数が固定されていることからインフレ対抗力が強く、また普及につれ単位が細分化されることが想定されているため「デフレ通貨」とも言われている。なお、この細分化して送金可能という性質があるため、例えば0.1円分だけ送金する事や、投げ銭として「いいね!」の代わりに0.001円分送ることも可能(数円~数十円の手数料は必要となるが)となる。

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6. Mt.Gox交換所の破綻とはなんだったのか

ここまで、ビットコインは特定企業により発行管理されるものではないと説明してきたが、ではなぜMt.Gox交換所の破綻で多くの人がビットコインを失ったのであろうか?

ビットコインでは、価格変動差益を狙った、現金とビットコイン間の短期トレーディングが多く行われている。Mt.Gox交換所では、株式取引所のように現金とビットコインの売りと買いの板が立ち、多くの顧客が、現金とビットコインの両方をMt.Gox交換所に預け入れ、交換所内の自分のアカウント上で日々売買を行っていた。

Mt.Gox交換所は、元はゲームアイテムなどを交換するサービス提供会社であったが、ビットコインの取り扱いを開始したところ、急激に規模が拡大、管理体制の整備が追い付かないまま操業を続けていた。

そのような中、未熟な管理体制を狙ったハッキングなどの攻撃を受け、Mt.Gox交換所は預かっていた顧客資産を散逸させることとなってしまった。攻撃は長期に渡り行われていたようであるが、管理体制が未熟であったため、預かり資産の流出にも気が付かず、結果としてその大部分が消失することになったようである。

このように、Mt.Gox交換所の破綻はビットコインのシステムではなく、1企業の預かり資産管理の問題ということがその本質だと考えられている。そのため、今でもビットコインのシステムは世界中で正常に機能を続けている。

なお、Mt.Gox交換所の破綻を受け、世界中の交換所では預かり資産の管理体制の高度化や情報公開が進みつつある。Mt.Gox交換所の事件は、1企業の顧客資産管理上の問題とは言いつつも、今後ビットコイン関連企業はこの教訓を踏まえ、適切な管理体制の構築が何よりも求められることになるだろう。

 

7. ビットコインのもたらす未来

現在は、人の移動、モノの移動、インターネットによる情報の移動が自由化された世界と言われているが、残されているのは“お金の移動”の自由化である。

今後は世界レベルで最後に残された“お金の移動”の自由化、電子化が起こると言われおり、ビットコインはまさにお金の移動の敷居を大幅に引き下げる手段として、世界中の人々がビジネスチャンスとして期待を寄せている。登場間もない仕組みのため普及には時間がかかるかもしれないが、今後は以下のような面白い未来が実現できるのではなかろうか。

【個人の利用するビットコインの未来】
(1)見逃した番組の1話だけ、雑誌の好きな漫画家の連載部分だけ、気になったニュースの1記事だけなど、世界中にあるコンテンツの中から自分の欲しい部分だけを、その場で決済して購入、すぐに楽しめる。

(2)「いいね!」感覚で、ネット上の投稿や、アーティストの作品に投げ銭し、お金による応援コミュニケーションを楽しめる。また、ニュースで見た途上国の人や災害地域の人にその場で直接寄付ができる。

(3)海外旅行には両替した外貨ではなく、スマートフォン(ビットコインお財布)を持って行き、ビットコイン払いによる買い物を世界中で楽しめる。

(4)途上国など、銀行口座を持てない人が金融サービスにアクセスできるようになり、世界中の人と直接取引できるようになる。

【事業者の利用するビットコインの未来】
(1)広告収益や月額継続課金によるビジネスから、個別・小口コンテンツから直接収益を得るビジネスへの転換。

(2)カード会社や銀行を通さないで、業務内容・規模を問わずネット上での簡単決済、即時入金が実現可能。

(3)為替レートや海外送金手数料を気にしないで世界中の顧客相手にビジネスが可能。

(4)ビットコイン決済と3Dプリンタデータを組み合わせることで、デジタルコンテンツだけでなく、モノも流通手段・決済手段を気にしないで、世界中の顧客相手にその場で販売・受け渡しが可能。

 

NEXT: ビットコインと電子マネー等との比較

 


資料 – ビットコインについて

この記事を書いた人

後藤 あつし
大手金融機関における市場リスク管理、信用リスク管理、流動性リスク管理、バーゼル規制対応等の長年の経験を有する。ビットコインおよびその技術であるブロックチェーンについては初期の頃から金融イノベーションに繋がる可能性を感じ調査・研究を行うとともに、主に金融の側面から関連事業者・団体への助言、各所記事や資料等の作成サポート、BTCNへの寄稿なども行なっている。

連絡先 gotoa123tアットマークyahoo.co.jp