LINEで送る
Pocket

記事番号 014

2014年2月のMt.Gox交換所の破綻により、日本ではビットコインのマイナスイメージが広がったが、アメリカを中心にその革新的な技術への注目と、関連するビジネスの起業が相次いでいる。日本ではMt.Gox交換所の破綻の原因の調査が行われる中、必然的にビットコイン自体への関心も高まり、その革新的なアイデア、産業としての可能性へも同時に注目が集まることとなった。

その中で、自民党IT戦略特命委員会(資金決済小委員会)福田峰之衆議院議員を中心に、Mt.Gox交換所の破綻の原因を踏まえつつ、世界的に注目されているビットコインのイノベーションの芽を日本において潰さないよう、ビットコインをはじめとする「価値記録」への対応に関する【中間報告】(以下自民党ガイドライン)が2014年6月に公表された。

自民党ガイドラインには法的な強制力はなく、また今後の米国などの規制状況を踏まえ必要に応じ内容を見直すとされているが、ビットコインに代表される技術を「価値記録」として、前払式支払手段(電子マネー)、通貨、物でもない新たな分類に属するものと定義、ビジネスにおける新たなイノベーションを起こす大きな要素として、自己責任での利用を原則とし、既存の規制で縛りつけることをできるだけ避けたルールを確立することが大切とする内容となっている。

2008年から登場したビットコインであるが、まだ各国では明確にどのような規制とすべきかなど、その全く新しい概念に対する取り扱いが迷われている中、政権与党からこのような前向きなガイドラインが出されることは非常にポジティブなこととして受け止められた。インターネット登場時もそうであったが、一般的に新しい技術、社会を変えるような新しい概念は、世間には容易に理解がなされず、正当な評価を受けるのは普及がある程度進んでからとなる。

しかし先手を打つ形でこのようなガイドラインが出された背景としては、インターネットに代表されるIT分野において、日本の産業が米国のGoogleやAmazonなどの巨大プラットフォーマーに後塵を拝し、産業の土台を独占されてしまった経験を踏まえ、ビットコインに代表される大きな可能性が期待される分野を先行的に育成し、日本から世界的な企業が産まれることを期待した、産業育成的な観点があったものと思われる。

 

■ 自民党ガイドラインのポイント

正式名称は自民党IT戦略特命委員会(資金決済小委員会)「ビットコインをはじめとする「価値記録」への対応に関する【中間報告】」(平成26年6月19日)となり、ポイントは以下となる。

1. 今後の見直し

ガイドラインはあくまで現時点での方針であり、「価値記録」の使用状況、諸外国の対応を踏まえ、必要に応じ内容を見直す点に留意が必要とされている。

2. 「価値記録」の定義

ビットコインに代表される技術を「価値記録」として、前払式支払手段(電子マネー)、 通貨、物でもない新たな分類に属するものと定義し、「価値記録」について以下のように記されている。

  • 「価値記録」はビジネスにおける新たなイノベーションを起こす大きな要素となりうる
  • 既存の規制で縛りつけることをできるだけ避けることを前提としたルールを確立することが大切
  • 「自己責任」の原則の下で、「価値記録」の「採掘」、「交換」、「交換所への価値記録・金銭預託」につき、特段の規制をかけない方針

また、関連する用語の定義も以下のように行われている。これは既存の法律との摩擦を避けるための配慮と考えられる。

  • 取引、支払は「交換」とする
  • 送金は「送付」とする
  • 通貨と価値記録を交換する場所を「交換所」とする
  • 価値記録と物・サービスを交換可能な店舗を「受付店」とする

3. 既存法との適用関係

出資法(預り金規制)
交換所が受け取る資金は、交換目的にて預託を受けるものであって、交換所において資金滞留がない場合、「預り金」に該当しない

銀行法(為替取引)・資金決済法
「価値記録」の送付は為替取引ではなく、適用外

犯罪収益移転防止法
「価値記録」の送付は為替取引ではなく、かつ、交換所は特定事業者(銀行、資金移動業者、両替商等)にも該当しないため、適用外(今後の論点として留め、本人確認義務を課す)

4. 課税

消費税
通貨と「価値記録」の交換、「価値記録」と物・サービスの交換、「価値記録」同士の交換については課税するという考え方が示されている。この意味する所は、消費者にビットコインを販売する場合、8%(将来は10%)の消費税を加算した価格で提示するということであり、事業者は徴収した消費税を納付することになる。

電子マネーで例えると、チャージするときに消費税を課税され、モノを買うときにさらに課税されるという意味になる。これではとても決済手段としては利用できないことは容易に想像がつくが、あくまで現状の法律を前提とするとこのような解釈しかできないということで記されたと考えられる。

この点については、今後の米国などの状況を踏まえ、何かしらの手当てが行われることを期待したい。

キャピタルゲイン課税
ビットコインの売却などでキャピタルゲインが出た場合は課税されるが、事業者に対しモニタリングの為のシステム投資を求めないとされている。この意味は、キャピタルゲインを得た顧客は、顧客自身で確定申告をして納税してもらい、まだ小規模な段階にある事業者側にシステム対応などの投資は求めないということになる。

5. その他

ビットコインを取り扱う事業者に対し「価値記録」関連ビジネスの振興・課題解決を目的とした業界団体の設立を求めるとされた。これはMt.Gox交換所の問題を踏まえ、当局と業界との対応窓口を整備し、また規制ではなく業界としての自発的な課題解決を求める意向を踏まえたものと考えられる。

■ 最後に

日本において、自民党ガイドラインのようにビットコインを前向きに評価するものが出されたことは普及に向けて非常に大きな意義があると考えられる。細かな内容については、ビットコインコミュニティ内でも賛否がある所ではあるが、まだ世界的にも対応方針は曖昧な状況であり、今後世界の状況を踏まえ、見直しが行われていけばよいのではないだろうか。

筆者の個人的な意見として、何らかの規制を行うような法的な手当ては、以下の点から今後数年~10年程度は可能であれば待っていただきたいと考えている。そしてそれまでは業界側が自発的に健全化への不断の取り組みを行うことが必要となるだろう。

  1. ビットコイン自体が登場間もない技術であり、インターネットの普及したスピードを考えても、今後しばらくは技術面、利用環境面で様々な変遷を辿ることが予想され、その中で問題点の発見、手当てがビットコインコミュニティ、事業者サイドで試行錯誤され、そしてその過程で技術自体の発展も加速されるだろう。現時点の問題点のみを見て対応を取ると、産業の芽、技術発展の機会を潰してしまう可能性が高い。
  2. 現状の利用者は限定的であり、問題が起こった時の影響範囲も有視界である。
  3. インターネットの発展は、コアユーザー、若者、年配の方へと1990年代から段階的に進み、その中で様々な問題が解決されていった。例えばWebブラウザの先祖Mosaicが登場した1993年の時点で、テロリストが情報交換に利用できるからと利用を規制していては、今の便利な社会は無かったであろう。

 

NEXT: 015 ビットコインを保有してみる~ビットコインウォレットとは?

 


資料 – ビットコインについて

この記事を書いた人

後藤 あつし
大手金融機関における市場リスク管理、信用リスク管理、流動性リスク管理、バーゼル規制対応等の長年の経験を有する。ビットコインおよびその技術であるブロックチェーンについては初期の頃から金融イノベーションに繋がる可能性を感じ調査・研究を行うとともに、主に金融の側面から関連事業者・団体への助言、各所記事や資料等の作成サポート、BTCNへの寄稿なども行なっている。

連絡先 gotoa123tアットマークyahoo.co.jp