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記事番号 018

日本では「ビットコイン」という言葉は広く知られているが、実際にビットコインを持っている人、使える場所はまだ限られている。

ここでは、日本、そして世界において、ビットコインが実際にどのくらいの場所で利用できるのか(情報は2014年10月時点)、そしてその将来を見ていくことにする。

目次:
1. 日本で利用できる場所
2. 日本でビットコインが利用できる店舗例
3. 店頭でのビットコイン利用例
4. 世界で利用できる場所
5. ビットコインの今後~先進国と途上国の違い

 

1. 日本で利用できる場所

ビットコインが利用できる店舗を調べるには、CoinMap(http://coinmap.org/)という便利なサービスが登場している。このサイトでは、日本だけでなく世界中でビットコインが使える店舗が登録されており、ビットコインの普及状況を把握する上で有用なものとなっている。

coinmap-01-ja

黄色のマークがビットコイン利用可能店舗数を示し、飲食店、習い事教室等がカウントされている。

2014年10月時点では、東京近郊に24店舗、大阪近郊に19店舗となっている。

2013年の段階ではほんの数店舗という状況であったのが、2014年に入るとここまで増えており、まだまだ普及の前段階と言えるが、ようやく一歩踏み出したと考えられている。特に2014年はそれまで英語版のみであったビットコインウォレット(お財布)の日本語版や、日本語での店頭ビットコイン決済端末も登場するなど、日本においてビットコイン関連ビジネスが始まりを迎えた年と言えるだろう。

 

2. 日本でビットコインが利用できる店舗例

現在日本で最も著名ともいえるビットコイン利用可能店舗は、東京六本木にあるレストラン バー「The Pink Cow」である。

日本でのビットコインは、在住外国人を中心に広がっていったこともあり、外国人が多く集まるこの店では初期からビットコイン決済を開始、ビットコイン関連のイベントでも利用されるなど、ビットコインファンが集まる店として知られる存在になっている。

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また地域でビットコインを使ってみようという取り組みも始まっている。

平塚ビットシティプロジェクト(https://www.facebook.com/hiratsuka.bitcity)は、神奈川県平塚市の駅前商店街でビットコインを決済に利用してみようという試みで、関連事業者やビットコインファンが集まることで、平塚の活性化を目指している。

まだ実証実験の段階であるが、 IT技術などに詳しくない一般の商店主と地域顧客の視点からビットコインを利用する上での課題の洗い出しなどを行っており、今後注目が高まれば地域活性化にもつながる面白い取り組みとして発展していくであろう。

 

3. 店頭でのビットコイン利用例

ここではお店で飲食代金の支払い時にビットコインを利用する方法を紹介する。

世界中で様々な店頭ビットコイン決済端末サービスが登場してきているが、ビットバンク社は日本語による最初の店頭ビットコイン決済端末を開発しており、(http://bitcoinbank.co.jp/service/)その使用例となる。

レジに設置されているタブレットとレシート印刷機

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(1)支払い時は、円で会計金額を入力すると、自動的にビットコイン換算額が、QRコードとともに表示される

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(2)顧客はスマートフォンのビットコインウォレットでQRコードを読み取ると、店舗の支払先ビットコインアドレスと、支払金額が表示されるので、ビットコイン送金を実行する。

bitbank-checkout-pos-payment-process

(3)即時にタブレット上で入金確認が表示され、レシートが印刷されることで支払い完了となる。

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ビットコインを知らない人にはなかなか利用シーンの想像が難しいが、実際はこのように簡単に店頭でのビットコイン決済ができるようになっている。

 

4.世界で利用できる場所

では次に世界でのビットコインの利用状況を見てみよう。

CoinMapで北米と南米を見てみると、北米では多くの利用可能店舗があることがわかる。しかしその数は2,500程度であり、例えばスターバックスの世界での店舗数が18,000以上あることに比べると、まだまだ身近にある存在には至っていない。

一方、南米ではアルゼンチンのブエノスアイレス近郊では140を超えており、自国通貨が弱い国においては、ビットコインが注目されていることがわかる。

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欧州であるが、欧州は北米に似た状況にあるが、やはりまだ街中で目につくという状況には至っていない。

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次にアジアの状況を見てみよう。

韓国・中国・台湾であるが、韓国が56に対して、中国はほとんど使える店舗が無いことがわかる。

この理由は、中国では金融機関がビットコインを取り扱うことを禁止しており、民間事業者も自発的にビットコインビジネスを避けるなど、規制動向が現状ネガティブなためであると考えられる。一方、ビットコイン保有者の割合では中国人が多数を占めると言われており、外貨管理規制の厳しい中国においては、人々は決済などの利用目的ではなく、保有資産をリスク分散させる手段としてビットコインを選択していると言えよう。

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そして東南アジアの状況であるが、シンガポールが41と多いが、他はどの地域でも利用可能店舗は見られるものの、その数はまだ少ない状況にある。

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シンガポールでは、当局が2013年に自己責任での利用と、規制による干渉はしないとの態度を明確化しており、また2014年1月には課税に関するガイドラインを出すなど、ビットコインの可能性を一定程度評価している模様。また民間側もビットコイン決済サービス会社GoCoin(https://www.gocoin.com/)など、関連企業が登場してきている。

その他の国は日本と似たような状況にあり、一般的にどの国にもビットコインと自国通貨を交換する「交換所」と、少数の関連ビジネス・ビットコインユーザーが存在する形になっている。規制当局もマネロンの観点では注視・警告は出しているものの、「禁止」ではなく「リスクを踏まえて自己責任で利用」という様子見のスタンスをとっている。このスタンスの背景には、強く規制することで発展が期待されているビットコイン関連ビジネスの将来性を損ないたくない、後から欧米の規制動向に従おうという思惑があると考えられる。

■ フィリピン
複数のビットコイン交換所があり、2014年6月には交換所Buybitcoinとオンライン決済会社Dragonpayが提携、ネット決済でのビットコイン利用が可能になるなど動きはみられる。(関連記事(外部リンク): BuyBitcoin.ph announces deal with Dragonpay

一方、フィリピン中銀は、ビットコインの利用は自己責任でという声明を出しており、マネロン監視を行うとの態度を示している。フィリピンでは銀行口座保有割合が27%程度であり、ビットコインは決済手段に加え、将来は貯蓄のための銀行口座代替物としても利用されるのではないかという意見もある。

■ インドネシア
複数のビットコイン交換所があり、中には日本で働いていた元ソニー技術者が経営している所もある。

決済手段として受け入れている商店はまだまだ少数で、一般への普及には程遠い状況にあり、2014年2月にインドネシア中銀もビットコインは通貨ではないとし、利用は自己責任で行うようにとの声明を発表している。

■ マレーシア
ビットコインATMが存在するなど、若いIT技術者の間でビットコインへの関心は高いが、一般への普及には至っていない。

2014年8月にガソリンスタンドでのビットコイン決済が開始されるなど、ビットコインへ関心は高い模様。(関連記事(外部リンク): 1st Petrol Station to accept bitcoin (btc) in Malaysia

インドネシア同様、中央銀行はビットコインは通貨ではないとし、利用は自己責任でとの声明を発表している。

■ ベトナム
ビットコイン交換所(Bitcoin Vietnam)は存在するが、使える場所は一部のカフェなど限定的な状況。

■ タイ
当局は、タイバーツとビットコインの交換は認めるが、タイ国内で外貨とビットコインの交換を行う事は認めていない状況。

 

5. ビットコインの今後~先進国と途上国の違い

ここまでで、ビットコインの普及では欧米がリードしていることがわかった。

2014年に入ると、欧米では盛んに関連事業の起業や、大手企業によるビットコイン受け入れのニュースが続いており、この後も順調に普及が進んでいくものと考えられる。

では将来、アジアの各途上国におけるビットコインはどのような形で普及していくのであろうか。

以下は著者の考えではあるが、フィリピンなどの途上国におけるビットコインの将来を、現状の金融インフラの普及状況なども踏まえて考えてみたい。

■ 金融インフラの普及状況

2011年あたりと少し前のデータになるが、東南アジアの銀行口座普及率、クレジットカード普及率を見てみよう。

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銀行口座については、シンガポールは98%と高い普及率であるが、インドネシア、ベトナム、フィリピンは20%台と低く、クレジットカードは一桁台と、まだまだ金融インフラは一般的なものではないことがわかる。銀行口座は、富を蓄積し、貧困から脱するために重要な手段となるが、貧しい場合はまず口座開設費用の工面が難しく、また、手続の煩雑さや、身近な場所に銀行がない(支店網の未発達)など、大きく普及率を上げることは難しいと言われている。

■ ネット環境の普及状況
一方、金融インフラと比較し、インターネットは広く使われ始めている。

特にモバイル端末の所持率は急激な増加を示しており、そのうちスマートフォンの割合も高いため、日本で見られたように、自宅のPCがまず普及し、その後モバイル、スマートフォンへの移行という流れではなく、最初からモバイルでのネット利用の形で普及していっている点が特徴的となる。

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銀行の支店網が未発達である一方、モバイルでのネット利用が普及し始めていることから、モバイル経由による決済等の金融サービスへのアクセスが増えていくことが予想され、実際フィリピンやベトナムなどでは数値として現れてきている。

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同様な傾向は、総務省の分析報告にも出ており、従来金融インフラへのアクセスの悪かった国において、モバイル経由でのネット利用の拡大と、それを通した金融サービスの利用という傾向が、世界的にも現れていることがわかる。

以下は、モバイルファイナンスの普及状況と、銀行ATM普及度を比較したものであるが、左の低所得国から右側の所得が高い国に行くに従い、モバイルファイナンスからATMへ金融サービスへのアクセスが移っていくことが示されており、途上国におけるモバイルによる金融サービスへのアクセス割合の高さが非常によく表れている。
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/html/nc112240.html

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特にケニアでは、2000年には1.7万人しかいなかったSafaricom社の携帯電話加入者が2010年には1,200万人(ケニア全体の普及率は61.6%)になるなど、モバイル環境は激変している。さらにケニアでは「M-PESA」という電子マネーが普及しており(2010年の利用者は1,400万人、成人の40%が利用)、従来の金融インフラは未成熟ながらも、モバイル端末と電子マネーのセットによる「モバイル金融サービス」が急激に広がるという状況になっている
http://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h24/pdf/n1020000.pdf

■ 途上国でのビットコインの未来
先進国では、既に金融インフラも整備され、人々の生活に普及しているため、ビットコインは数ある金融サービスの選択肢の一つでしかなく、低い送金費用などにメリットを感じる特定層には普及しても,急激に広く一般の人が利用するような普及にはならないのではないかと考えられる。

一方、従来型の金融サービスを享受できていない国の人々には、今まさにモバイル端末が普及していっている段階にある。ケニアの「M-PESA」が非常によい事例であるが、そこに電子マネーという旧来型の金融インフラとは大きく異なる利便性を持ったサービスが加わることで、それまで金融サービスに疎遠であった大多数の人々が一気に利用を始め、爆発的な普及へと繋がる。

「M-PESA」はケニア限定的な事例であるが、ビットコインは、スマートフォンさえあれば世界的に垣根なく共通の価値基準として利用可能である。

旧来型の金融インフラが無いこと、モバイル環境によるネット接続の普及、インターネット上での手軽な金融サービス、これらがセットとなり、今後途上国ではビットコインが先進国とは比較にならないほど大きく普及していくことも考えられる。将来、先進国では旧来型の金融サービスがそのまま生き残り、一方途上国ではビットコインのような新しい形の金融サービスが劇的に発展を続け、世界の金融の姿は今とはまるで異なる形なっているかもしれない。

ただし、途上国でのビットコインの普及には以下のような課題も指摘されている。

  • 途上国の人々は、貧しいことの裏返しとして、保守的で新しいものを受け入れることに抵抗があると言われている。
  • 途上国では外貨管理が厳しく、自国の富がビットコインの形で政府の管理の外側で国外に流出してしまう事を嫌い、強く規制されるかもしれない。

しかし、最初の点は、クレジットカードなどの金融サービスに触れたことがない人々には、金融サービスに触れる最初の機会としてビットコインを手にすれば、「そういうもの」として受け入れてしまう可能性が高い。実際ケニアでは電子マネーが大きく普及するに至っている。また、次の点は、途上国の人々にとってビットコインは、政府の恣意的な金融政策による自国通貨のインフレから、自分らの富を守る手段ともなるため、当初は規制されても、草の根的に利用は広がっていくのではないだろうか。

ビットコインはまだ登場間もない技術、サービスであり、今後どのような変遷を辿るかは全く分からないが、しかし、今後の世界における金融サービスの姿を変えるかもしれない、小さいながらもそのような可能性さえも感じ取れる、非常に興味を引き付けられるものと言えるだろう。
 


資料 – ビットコインについて

この記事を書いた人

後藤 あつし
大手金融機関における市場リスク管理、信用リスク管理、流動性リスク管理、バーゼル規制対応等の長年の経験を有する。ビットコインおよびその技術であるブロックチェーンについては初期の頃から金融イノベーションに繋がる可能性を感じ調査・研究を行うとともに、主に金融の側面から関連事業者・団体への助言、各所記事や資料等の作成サポート、BTCNへの寄稿なども行なっている。

連絡先 gotoa123tアットマークyahoo.co.jp