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ブロックチェーンの利活用にむけては、金融分野において、スタートアップ企業側および大手金融機関の動きが相まって、利活用にむけた検討や試行が世界各地で展開されている。

国内でも、R3CEVを中核とした大手銀行によるブロックチェーンコンソーシアムへのメガバンクの参画が報じられて以来、ブロックチェーンを巡る話題が盛り上がっている感がある。

そもそもブロックチェーン自体、ビットコインにおけるインフラとして発明されたことからも分かるように、ブロックチェーンの業務アプリケーションとしての応用範囲としては、多数の参加者における取引記録のリコンサイル(突合・残高照合)・所有権管理といったプロセスに適しており、必ずしも金融分野だけに範囲が限定されるべきものではない。むしろ、各種規制や利用者保護といった考慮が必要とされる金融分野での応用と比べ、自由度をもった応用の検討や試行が可能なのは、流通や製造といった、非金融分野ではないだろうか。

そこで本稿では、金融系分野から目を転じて、「非金融分野」(流通・製造)におけるブロックチェーン利活用の可能性について、大きく「デジタル資産の所有権管理」「著作権や書類などの記録」「M2Mペイメントやリワード」の3領域に大別して整理してみたい。

1.デジタル資産の所有権管理

この領域では、これまでに、ダイヤモンドの所有権証明(Everledger)、デジタルコンテンツの所有権証明(Ascribe)、ゲーム資産(Spells of Genesis、Voxelnauts)、ギフトカード(GyftBlock)等が発表されてきた。

本稿では、特に直近2カ月の動きとして、ColuとUjoを紹介したい。(それ以外のトピックについては、日本デジタルマネー協会における整理スライド「Blockchain2.0概況(2015/8)」を参照されたい)

●デジタルアセット管理のColu

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Coluは、Colored coinベースのブロックチェーンによるデジタルアセット管理プラットフォームである。

ColoredCoinを利用して、株式・債券などの金融資産だけでなく、著作権や書類などの記録に始まり、イベントチケット・クーポン・ギフトカードなどの所有権に至るまで、様々なデジタルアセットの発行・所有権管理を行うものである。ビットコインの知識のない人でも、広範なデジタルアセットをブロックチェーン上で遣り取りできるようにする。開発者はColu Engineを用いてアセットの発行・管理が可能であり、Colu Bagはウォレットとして、デジタルアセットを一箇所で格納・送受信することが出来る。最初のパートナーとして音楽ビジネスのRecelatorを選択した他、BitPayのマルチシグウォレットCoPayとのインテグレーションを発表している。

●ミュージックプラットフォームのUjo

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Ujoは、ConsenSysによって構築された、Ethereumブロックチェーンベースの音楽P2Pプラットフォームである。

分散・自動化された権利管理システムや、ペイメントシステムを通じて、音楽産業の透明性と効率性を高めることを目指している。音楽作品のアーティストや権利ホルダーが、作品やその権利をブロックチェーン上のスマートコントラクトに登録し、「アーティストや権利保有者へのカネの配分をどうするか」「複数の関係者が絡むクリエイティブワークの所有権をいかに決めるか」といった問題に取り組む考え。グラミー賞受賞のシンガーソングライターImogen Heapがニューシングル“Tiny Human”をUjo上でリリースしている。

2.著作権や書類などの記録

これまでにこの領域で発表されてきたトピックとしては、、土地登記(Factom)、認証(BlockVerify)、医療情報(BitHealth)、来歴管理(Provenance)、投票(Neutral Voting bloc)等が挙げられる。

本稿では、StamperyとTierionを紹介する。

●ドキュメント公証人サービスのStampery

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Stamperyは、メール、ドキュメント、契約などにスタンプを押すイメージのドキュメント公証人サービスである。

PasscardのAPIを利用して、ブロックチェーン上でドキュメントの存在(Proof of Existence)や所有権(Proof of Ownership)などを証明する。ユーザは、Stamperyの発行する個人むけアドレス宛にドキュメントを送るだけで、知的財産の保護、遺言・宣誓・契約の認定などに用いることが出来る。料金体系としては、1カ月あたり100ドキュメント以下あるいはストレージ1GB以下であれば無料、その後は10000ファイル或いは、ストレージ100GBまでの利用が可能となっている。

●ブロックチェーン・レシートのTierion

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Tierionは、ブロックチェーン上にデータを記録した上で、そのレシートを生成するサービスである。

現実世界においても、トランザクション毎にレシートを受け取ることによって、トランザクションが検証されるのと同様に、ブロックチェーン・レシートはブロックチェーン上でコンテンツとタイムスタンプを検証するもの。データを収集してブロックチェーンに記録し、レコード毎にブロックチェーン・レシートを生成するクラウドデータストア機能と、そのデータを利用するアプリへと連携する飛ばすエンジンとしての機能を備える。

数百万件におよぶ大量レコードをブロックチェーンへ自動記録し、ブロックチェーン・レシートを生成するオープンスタンダードとしてChainPointを開発した他、Zapierを用いてSalesforceやGoogle Sheets等、400以上のアプリサービスへ連携することが出来る。応用対象としては、購入・取引・請求の証拠としてのレシート発行や、顧客データのアーカイブ、IoTデバイスからのデータ収集や在庫記録などが考えられる。実証実験としても、米コネチカット州がTierionと共に政府調査の記録へのブロックチェーン活用を試みている他、Philips社のヘルスケアグループとの共同プロジェクトがこのたび完了したと発表された。

3.M2Mペイメントやリワード

この領域では、IoT決済(Adept)、ストリーミング(Streamium)、アーティストリワード(PopChest)等が発表されてきた。特にIoTにおいては、IBMが「Device democracy」と題した論文の中で「ブロックチェーンはIoTのエレガントなソリューションである」と示している等、ブロックチェーンの利活用の活発化にむけた重要な要因になることが期待されている。

本稿では、FilamentとFaradam、およびBankymoonを紹介する。

●IoTデバイスのFilament

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Filamentは、IoTハードウェアスタートアップだが、ブロックチェーンのパブリック台帳上にデバイスのユニークIDを保持する分散IoTソフトウェアスタックを提供している。

ブロックチェーン上にスマートデバイスディレクトリーを創ることによって、FilamentのIoTデバイスは安全に通信でき、スマートコントラクトを実行でき、マイクロトランザクションを送信できる。「IoTの製品開発経験はあるがネットワークやブロックチェーンに関する知識の乏しい企業であっても、FilamentのIoTデバイスを用いることによって、セキュリティやスケーラビリティなどの専門家無しにIoTビジネスを構築できる」と謳っている。

ラインナップとしては、Filament TapとFilament Patchで構成される。Filament Tapを用いることで、10マイルまでの距離でTap間の通信が可能な他、BLE(Bluetooth Low Energy)に対応しているため、インターネット接続なしにスマホ・タブレット等と直接接続可能。Filament Patchはユーザのハードウェアプロダクトにワイヤレス通信技術を実装するもの。

例えば、分散配置したセンサーを通じて土壌データの保管・通信を行うことによって、資源利用の最適化を行うなどといった、石油・ガス・製造・農業分野におけるユースケースが想定されている。なお、Pennybankと呼ばれるビットコインベースプロトコルをマイクロトランザクションに用いて、デバイス間エスクローも可能。

●秒単位課金のFaradam

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Faradamは、フリーランス向けマイクロペイメントサービスである。

Streamiumのようにスマートコントラクトを通じた時間単位課金(ここでは分単位)が行えるため、医者・フリーランサー・教師・コンサルタント・法曹等のオンデマンドサービスに対して、分単位課金が可能になる。この利点としては、オンラインペイメントに要するトランザクションコスト低減に加えて、為替レート変動リスクの軽減が挙げられる。

使用イメージとしては、まずFaradamタイマーを創る(名前、時間当たりレート、ビットコインアドレスを登録)。その上で、その情報を相手と共有(タイマーへのリンクを共有すると、クライアントが自分のウォレットと接続される)。そしてタイマーをONにすると、選択したレートに基づいて分単位課金が開始される(生じた課金は即座にユーザのビットコインウォレットへ送金される。Faradam社は全トランザクションの1%フィーを得る)。

●アフリカ向けスマートメーター開発のBankymoon

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Bankymoonは、アフリカでブロックチェーンベースのスマートメーターを開発している。インフレが進み、加えて支払システムも非効率なアフリカでは、円滑な電気代支払が難しく、そのため未払や盗電が後を絶たない。そこで電力会社はプリペイド方式の導入とスマートメーターを検討中だか、多くのアフリカ人は銀行口座を持たない。

そうした課題に着目し、Bankymoonはプリペイド方式のブロックチェーン・スマートメーターを考案した。個々のスマートメーターがデジタルウォレットのアドレスを持ち、そのアドレスへデジタル通貨を送金する。デポジットすると、口座がその時点の為替レートでクレジットされる仕組み。なおBankymoonは、併せてアフリカの学校むけクラウドファンディング・寄付を可能とする取組も実施中であり、こちらはBankymoonのスマートメーターを取り付けることによって、世界中の人がメーターのアドレス宛に送金できる仕組みとなっている。

大手企業の動き

以上のような領域を中心に、非金融分野(流通・製造系)におけるブロックチェーン利活用としては、スタートアップ企業を中心に、金融分野同様の検討が進められている。こうした中、大手企業においても、大手運輸のUPSが国際物流における支払・清算・決済プロセスへのデジタル通貨の応用可能性について期待を表明した他、中国最大級の自動車部品メーカーである「萬向集団」が研究ラボを開設したこと等、具体的な動きが徐々に顕在化しつつある。

また、ブロックチェーンの応用で注目されている「スマートコントラクト」についても、IBMがスマートコントラクトのOSS(オープンソースソフト)を検討していると言われる他、ロンドンの法律事務所Selachii LLPがStashiとパートナーを組んでブロックチェーンによる契約のデジタル化を目指すと発表される等、実用化にむけた検討が動きつつある。今後のブロックチェーンの利活用については、金融分野ばかりでなく、非金融分野における動きにも、具体的な進展が期待できるものと考える。

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