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2016年に入ってからビットコインやブロックチェーンへの関心は日本国内でもさらに増し、多額の資金調達を成功させるビットコイン関連事業や、大企業や金融機関がブロックチェーンを使った実証実験を発表するニュースなどは関係者であれば日常的に耳にします。また、ビットコインやブロックチェーンのテレビや新聞、雑誌などでの好意的な特集や取り扱いも増え、一般ユーザー層からも投資や支払い手段として暗号通貨に興味を持つ人たちも増えてきています。

これらの動きは業界全体でみれば大いに歓迎するべきことで、国内でも「ブロックチェーン」が盛り上がってきていることは事実ですが、同時に個人的には過度な、そして本来のブロックチェーン技術の本質とは違う部分での盛り上がりに対して違和感を感じることも多いです。

元々ビットコインから始まったブロックチェーンというのは、オープンで信頼を最小化した分散型ネットワークというところに大きな価値や革新性があったはずですが、企業などが注目しているのはビットコインなどのパブリックチェーンではなく、より管理、コントロールしやすいプライベートチェーンの応用です。

しかし、全ての領域でプライベートチェーンをあてはめるのが合理的でも効率性を上げるわけでもなく、現在盛んに実証実験がされているプライベートブロックチェーンを活用した送金、スマートコントラクト、証券のブロックチェーン上のトークン化なども、中には今の時点ですでにあまり意味がないように感じられてしまうものもありますし、大部分は期待していたような効果が得られず失敗という形になるでしょう(それも含めた実証実験なので特に問題はないとも思いますが)。

自分個人としてもブロックチェーンを様々な領域に応用するいわゆる「ブロックチェーン2.0」に興味が強く、様々なプロジェクトについて調べたり考えたりすることも多いですが、(現在時点での)ブロックチェーンの特徴、制約を冷静に分析すると、実はパブリックチェーン、プライベートチェーン問わず、ブロックチェーン技術の使用で劇的な改善や効果がすぐに見られる領域はハイプされているほど多くないです。

そんな中、ブロックチェーンの応用、特にパブリックチェーンの使用がすぐに効果を発揮する領域の一つとして、ゲーム、特にゲームアイテムのトークン化に自分は期待しており、事業としても取り組んでいます。ゲームアイテムをトークン化することで、アイテムの自由で安全なトレードが可能になったり、ゲームやサービス、プラットフォームを横断した新しいエコシステムが形成され、ビットコインやブロックチェーン技術が一般により広く浸透していくきっかけになるのではないかと考えています。

ゲームアイテムのトークン化とは?

ゲームアイテムのトークン化とは、カウンターパーティなどのトークンプラットフォームを利用し、ゲームアイテムをブロックチェーン上のトークンとして発行し、アドレス上のトークンの保有に応じてゲーム上でのアイテムの使用を制限、管理することです。

例えば、ブロックチェーン上で発行した「KATANA」というコイン(トークン)をゲームと連携しているウォレット上に2枚保有しているプレイヤーは、特定のゲーム内で日本刀の武器を二枚保有していると認識され、実際にゲームアイテムとして使用することができる、というイメージです。今までのゲームだと、アイテムの保有は基本的にゲーム会社のデータベース上にのみ存在していたわけですが、ゲームアイテムをブロックチェーン上でトークン化することで、プレイヤーのアイテムの保有の根拠はブロックチェーン上の記録に依存することになります。

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SoGのゲーム内のカードの一部はブロックチェーン上で発行された「ブロックチェーンカード」となっている。上記のカードは全てブロックチェーン上のトークンでもある。

また、上記の例はゲーム内で使えるカードや武器を例として出していますが、ブロックチェーンアイテムはカードや武器である必要はなく、もう少し視点を広げれば、例えばあるトークンを持っている人にしかプレイできないステージが出現したり、トークンの保有量に応じてゲーム内のエフェクト、例えばキャラの見た目が変化する、などの使い方もでき、ゲームアイテムやゲーム内の要素のトークン化はゲーム開発者の独創性にゆだねられています。

こういうゲームアイテムのトークン化という動きはSpells of Genesis(SoG)というゲームにより始められ、SoGではトークン発行プロトコルCounterparty(カウンターパーティ)を通して、ビットコインのブロックチェーン上でゲームアイテムをトークンとして発行しています。ゲーム自体の本リリースは9月を予定していますが、すでに一部のゲームアイテムはブロックチェーン上でトレードされており、かなりの高額で売買されているものも存在します。

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ビットコインの生みの親ナカモトサトシをモチーフにしたSoGのSATOSHICARDは最も人気のカードの一つ。ブロックチェーン上で200枚限定発行のレアカードで、プレイヤー間で30万円以上の価値でトレードされたこともある。

トークン化が単体のゲームに与えるメリット

このようにゲームアイテム(もしくはその他のゲームの要素)をブロックチェーン上のトークン化することで、ゲーム開発者およびプレイヤーに以下のようなメリットが考えられます。

1. ゲームアイテムの自由な移動

ブロックチェーン上でトークン化されたトークンは、ビットコインなどと同じ要領で国境などに影響されずP2Pで比較的安価に送信することが出来ます。友人に自分のゲームアイテムを譲渡したりするのも簡単にできますし、送信先の受け取りアドレスさえわかっていればアイテムは送れるので、SNS上などでマーケティングとして不特定多数のプレイヤーに大量にアイテムを送ったりするのも簡単に出来ます。

2. ゲームアイテムのP2Pトレード

カウンターパーティなどのプラットフォームはブロックチェーン上でのトークンの発行だけでなく、トークン同士の分散トレードを可能にします。これは通常の暗号通貨取引所などと違い、ユーザーは秘密鍵を自分で保持した状態でその他のプレイヤーとP2Pで直接トレードができるということです。つまり、ゲームアイテムを預ける取引所に相当する中間業者の不正行為(持ち逃げ)などの信頼リスクを排除し、安全にユーザー同士でブロックチェーン上で直接ゲームアイテムのトレードができて、アイテムに市場での適正価格がつくということです。

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IndieSquare Walletのモバイルアプリ上でも分散取引が可能。前述のSatoshicardはここから他のユーザーと売買されている。

3. アイテムの保有者はプレイヤーに

ウォレット内のビットコインに紐づく秘密鍵を保有している人だけがビットコインの管理者・責任者になれるのと同様に、ゲームアイテムをブロックチェーン上のトークン化することでアイテムの保有者は真の意味でゲームプレイヤーとなります。一度自分が管理するウォレット内に保管されたゲームアイテムは、ゲーム会社が後から何かしらの理由で没収したりすることも出来ないですし、誰かにあげたり、トレードしたり、基本的にトークン化されたゲームアイテムをどう扱うかはプレイヤーの自由です。

4. 透明性

ブロックチェーン、特にパブリックブロックチェーンの特徴の一つに透明性があります。

ブロックチェーン上で発行されたゲームアイテムの発行量や移動はオープンに誰でも確認できるので、ゲームアイテムの発行量を偽って販売したり、確率を操作したりすることが難しくなります。例えば、100枚限定発行の記念アイテムを発行した場合、ブロックチェーン上で発行枚数や発行量がロックされているか(追加で発行できないか)などをプレイヤーが直接確認できるので、ゲーム会社による不正やミスを防ぐことが出来ます。また、ゲーム会社としてもプレイヤーに希少性をオープンに証明できるようになり、プレイヤーのアイテム所有欲求が増し、売上なども伸びる可能性もあります。

上記のようにゲームアイテムのトークン化をすることで、単体のゲームにも効果が発揮され、それはすでにSpells of Genesisなどのゲームでも証明され始めています。プレイヤーのゲームアイテム保有への意欲は増しますし、また例えば一定レベルまで達したゲームアイテムのみブロックチェーン上でトークン化することが出来る、などのスキームを使うことで、自分のプレイ時間をブロックチェーン上で価値化することが可能になり、ゲームをプレイすることで手に入れたアイテムをその他のプレイヤーとトレードしたり、安全に販売したりすることが可能になります。

ただし、トークン化の真価が発揮されるのは、ゲームアイテムを通した複数のゲームや外部アプリケーションの連携によるネットワークが構築され、ネットワーク効果が働いた時だと自分は考えていますし、これこそがスピードやコストで劣っていると批判されることもあるパブリックチェーンがプライベートチェーンに大きな優位性を持っているポイントです。

パブリックチェーン上のトークン化とプライベートチェーンとの大きな違い

まず初めに、アイテムのトークン化は、ビットコインなどのパブリックチェーン上ではなくとも、プライベートブロックチェーン(複数の会社、団体間で形成されるいわゆるコンソーシアムチェーンも含む)でも可能です。一般にプライベートチェーンを利用したトランザクションはパブリックチェーン上のものより安く早いと考えられており、単体のゲームやゲームプラットフォームへトークン化を応用するなら、プライベートチェーンの方が効率的だとも思います。

ただし、ゲームアイテムのトークン化の真価が発揮されるのは、トークン化されたゲームアイテムが複数ゲーム間で相互に使用され、ゲームプレイヤーの移動が起きたり、もしくはゲーム以外のサービス、アプリケーションとトークンを通した連携が活発に始まる時だと思います。そして、このようなサービスやプラットフォームを横断する応用の場合は、オープンで、使用の許可などを必要としないパブリックチェーン上の方がプライベートチェーンより向いています。

上記のような連携はすでに実際に一部現実化されており、前述のSoGでトークン化されたゲームアイテムの一部は、すでにSaruTobiという別のゲームでパワーアップなどとして使われており、一つのゲームを越えたゲームアイテムを通したコラボレーションが始まっています。

また、takaraという位置情報アプリでは、地図上にビットコインだけでなくカウンターパーティトークンを落としたり拾うことが可能になっており、カウンターパーティ上でトークン化された実際にSoGで使用可能なゲームアイテムが世界中にばらまかれ、ユーザーが地図上で十分近づくことで拾うことができるようになっています。Pokemon Goが世界中で大人気ですが、地図上で捕まえたポケモンをブロックチェーン上でユーザー同士で自由にトレード、売買が簡単に出来るようなイメージに近いです。

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takara上で都内にもたくさんのトークンが落とされている。主要駅の近くに置くと1日、2日以内に実際のユーザーに拾われてしまうくらい活発なやり取りがされている

これらはゲームアイテムのトークン化により生み出された興味深い連携の一例でしかなく、今後ゲームアイテムを起点としたもっと画期的な応用例やコラボレーションが出てくると思います。このようなオープンな連携、許可を必要としないイノベーションこそが特定の管理主体に属さない、コントロールされていないパブリックチェーンのインフラとして使う強みであり、同様のことをプライベートチェーンで行おうとすると、チェーンの管理主体の許可が必要であったり、信頼関係のある会社間でのみしか効果を発揮しなかったり、パブリックチェーンほどのネットワーク効果が生まれないことが想定されます。

プライベートチェーンの多くは特定の業界や特定の用途に向けて作られたコンソーシアムチェーンなどであり、その中であれば高速かつセキュアな価値のやり取りやスマートコントラクトなどを可能にすると考えられていますが、参加者を絞っていたり、用途を限定して最適化しているため、想定外の形の応用や複数の業界をまたぐイノベーションが起きづらいとも言えます。

ブロックチェーンゲームに関する懸念

ゲームアイテムのトークン化、特にオープンなパブリックチェーン上でのトークン発行が今までのゲームの形、開発者とプレイヤーの関係性を大きく変えていく可能性がありますが、全てのゲームジャンルに有効というわけではありません。

例えばシューティングゲームなど保有しているアイテムなどより、むしろプレイヤーの習熟度やスキルが重要なゲームなどの場合は、ブロックチェーンの応用、アイテムのトークン化というのは限定的なものになるかもしれません。(ただし、例えばランキング上位のプレイヤーだけが与えられるトークンの形の名誉のバッジのようなものを作ったりなど工夫の余地はいくらでもあります)また、もしくはゲーム内で消費されるアイテム(例えば弾丸など)など含めゲームの全ての要素をトークン化してブロックチェーン上で処理しようとするのもコストやスピードの問題で現実的ではありません。

また、分散取引所の使用にはコストがかかり、前述のカウンターパーティで分散トレードをする場合にはプレイヤー側で手数料分の少額のビットコインを用意する必要があり、そこが使用への障壁になりえます。またカウンターパーティを使う場合、ビットコインのブロックチェーンの10分に一回の承認時間というスピードの遅さも課題の一つです。

また、この分野に限定された話ではありませんが、ゲームアイテムのトークン化、それによるユーザー同士のP2Pトレードによる収益化、オープン化が、法律的にどのように解釈されるかに関する懸念もあります。

まとめ

ブロックチェーンに関する注目と期待値は加速していますが、実は深く分析するとブロックチェーンがぴたりとはまる応用方法は期待されているより多くはありません。そんな中、ブロックチェーン技術のゲーム領域への応用とパブリックチェーン上のゲームアイテムのトークン化は実需がすでに見込め、実際にプロダクトが出てきている数少ない領域の一つです。

そして、ゲームアイテムをトークン化することで、アイテムの安全なトレードや透明性の向上など単体のゲームのみでもメリットは享受できますが、より潜在力を秘めているのはオープンなパブリックチェーン上でトークン化されたゲームアイテムを通した様々なアプリやサービス、最終的にはゲームの領域すらも飛び越えた横の広がりだと思います。

パブリックチェーンとプライベートチェーンを比較する時にコストやスピード、コントロールの点で企業はプライベートチェーンを好む傾向がありますが、パブリックチェーンの強みというのは誰でも参加、開発できるオープンさとそれによる「許可なきイノベーション」(Permissionless innovation)、形成されるネットワーク効果という側面でしょう。そしてその他の業界に比べてクリエイティブな発想が強いゲームの領域でこれは特に相性がよく、パブリックチェーン上でのゲームアイテムのトークン化という動きはすでに始まっています。今後今の時点では想像できないようなサービスやコラボレーションなどがトークンを通して出てくることが期待されます。

ビットコイン(その他のパブリックチェーンも含め)は技術や実用面でまだまだ課題も多く、また金融インフラが確立されている日本のような国ではそもそもビットコインに関する需要がないという意見もありますが、マイクロペイメントの技術のように技術は日々進歩しており、また需要の面でも単純な送金手段としてではなく、トークンプラットフォームのセキュリティーの土台として、トークン送信時の手数料、分散トレードの媒介としてまず一般に浸透していくような展開も考えられます。ブロックチェーン技術のゲーム分野への応用はその好例であり、そして日本の企業や開発者がイニシアチブを握りやすい領域でもあるのではないでしょうか。

筆者はIndieSquareの共同創業者で、上記のようなゲームアイテムのトークン化をより簡易化するためのプラットフォーム開発に取り組んでいます。プロジェクトに関するより詳細な情報は後日また発表予定ですが、もし事前にブロックチェーンを利用したゲーム開発に興味がある開発者などがいましたら、個別に [email protected] までご連絡ください。

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