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先日、ビットコインのコアディベロッパーが集うBlockstreamより、「サイドチェイン」のホワイトペーパーが公開された。Blockstreamは、実業家であり投資家のオースティン・ヒルを始めとし、ビットコインの初期から開発に関わってきた開発者ら計11名のチームで開発を行っている企業だ。

Blockstreamは現在資金調達ラウンドの最中におり、証券取引委員会(SEC)に提出した書類によると少なくとも1500万ドルの調達が予定されていることがわかっている。また、同社の取締役としてLinkedInの共同創設者であるリード・ホフマンが加わることが明らかとなった。

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サイドチェインとは、ビットコインの革新の肝とも言えるパブリックな分散型取引元帳データベースであるブロックチェインの側鎖となる概念だ。サイドチェインの導入により、従来複数の暗号通貨が持っていた独自のブロックチェインを相互に結び、暗号通貨全体の資産をひとつのブロックチェインとして転送することが可能になるとされている。

1. 背景

サイドチェインの目的は、ビットコインの代替通貨として作られた無数のオルタナティブ・コイン(オルトコイン)が抱える問題を解決することにある。オルトコインの代表例としてLitecoin、Dogecoin、日本発の暗号通貨Monacoinなどがあるが、これらのオルトコインはそれぞれがビットコインと同じ問題を抱えており、それぞれが独自のコミュニティで開発をし、一見、非効率とも思える開発と改修を繰り返している。

また、これらの代替通貨は先行者利益を得るための投機手段として用いられることが多いが、しかしながら、結果として市場の分断を引き起こし、暗号通貨の価値決定の根源となるネットワーク効果が有効に働かないことも問題視すべき点だろう。

私は様々なオルトコインのプロジェクトが失敗してきたのを多く見てきた。日本発のオルトコインですら、kumacoin、Ringo、Sha1coin、Yaycoin、Fujicoinなど、5つ以上のプロジェクトが失敗に終わっている(何を持って失敗と言うかは人それぞれだろうが、市場形成とユーザーの定着という点で見れば失敗だと言わざるを得ないだろう)。

2. サイドチェインが解決するもの

サイドチェインはビットコインのブロックチェインをメインチェインとし、双方向連動(two-ways peg)させることで、暗号技術や新技術の研究開発やβ版のテスト、及びスマートコントラクトや現実資産のレジストリとして、さまざまな資源を効率的に活用することが可能である。換言すると、暗号通貨技術開発者の技術成果を一箇所に集約することができるということだ。

更に、サイドチェインが実現すれば、現在のオルトコインに類するすべての資産はビットコインに接続され、ひとつのソフトウェアで管理可能となる。これが意味するものは、サイドチェイン上のすべての資産はビットコインを使うようにシームレスで転送が可能であるということだ。皮肉なことに、サイドチェインの出現によって、ビットコインのトランザクション承認時間を改良しマイクロペイメントに特化した殆どのオルトコインは、その利点を失うこととなるだろう。

3.問題点

しかしながら、サイドチェインのホワイトペーパーでは多くの欠点も指摘されている。サイドチェインは複数の暗号通貨を同時に採掘するマージマイニングを採用しているが、これはビットコインマイナーの中央集中化を促進することに繋がる。マイナーは動的メンバーシップマルチパーティ署名(dynamic membership multi-party signature:DMMS)によって、サイドチェインに接続されたブロックチェインすべての取引手数料を得ることになるため、強力なハッシュパワーと投資資源を持つ僅かな企業が更にその力を強め、暗号通貨取引の鍵を握る中央集権機関に代替してしまう危険性が指摘されている。

また、サイドチェインは、メインチェインでトランザクションを作成し、子チェインで相対するトランザクションを作成、資産を転送するという手法を取るが、ここで用いられる”簡略化された入金確認証明(A simplified payment verification proof : SPV証明)”にも危険性があるという。

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トランザクションの再編成を行う場合、攻撃者が資産の転送の半分を取り消すことで、送信チェーン上のコンテスト期間を延長し、再編成が起こる前にサイドチェイン間で完全な転送を許容してしまうことが理論的に可能であるという。結果として、受信チェーン上と送信チェーン上での出力値が合わなくなり、攻撃者はサイドチェインの他のユーザーの資産を犠牲にして、自身のコインを増やすことができる。

しかしながら、この問題はSPV証明のコンテスト期間を調整すること、そしてサイドチェイン側で致命的な取引が発生した場合に応答しないような設計にすることで、そのリスクを低減することが可能だとされている。

サイドチェインはインターネットの夢を見るか

サイドチェインの実現は、サトシナカモトの提唱したP2Pデジタルキャッシュシステムというビットコインの限定的な機能を、インターネットのように汎用的なシステムへと昇華させることとなるだろう。

ビットコインは今までブロックチェインを資産の移動という面にのみ特化した機能を持たせており、インターネットのように多種多様な機能を持っていなかった。もちろん、ブロックチェイン自体はありとあらゆる可能性を秘めた技術であるが、新しい用途として扱うにはブロックチェインを独立させて運用する必要があった。これまでも、CounterpartyのProof of Burnを利用したブロックチェインの再利用法などが提案され、利用されてきたがメインチェインとの相互互換性はなく、本質的な解決には至っていない。

サイドチェインが提案するものは、ビットコインのブロックチェインと他のブロックチェインを相互に連動する、すべてが連携する世界である。この世界ではブロックチェインを用いたありとあらゆる革新的な技術が、まるでひとつのブロックチェインで動作するように利用することが出来る。新しいアプリケーションが出る度に、ソースコードを確認し、安全性をチェックする手間もなくなる。たくさんのアプリケーションを個別に管理するような、面倒な思いをする必要もなくなることだろう。

サイドチェインはビットコインのリソースを有効に利用し、メトカーフの法則、ムーアの法則を効果的に反映させることのできる革新的な概念である。諸問題が解決されれば、サイドチェインはもはやインターネットと同等に捉えてもいいのではないだろうか。私は、未来のイノベーションがサイドチェインの上に蓄積されていくことを期待している。


参考文献:
Blockstream – Enabling Blockchain Innovations with Pegged Sidechains

この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
monacoin:MTn7hiNovBHyN7gjtvD1Hh7W96Zmghp41B
bitcoin:1NK8S4ep9ZUZ9H9AmTAfvrCVVAKLbpmi36