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ビットコインコミュニティの多くの人々は、「価格」というテーマにはあまり触れたがらない。

「ビットコインで重要なのはブロックチェーン技術だ。技術に潜在的な可能性があるのだから、価格のことは置いておいて技術のことを話そう。価格は重要じゃないんだ。」といった意見が多方面で見られる一方で、実のところ、価格は非常に興味深い示唆を与えてくれる。なぜなら、これまでも、そしておそらくこれからも、メディアが注目するのは常に価格の騰落だからだ。

「そもそも、CoinDeskの立ち上げは、ビットコインが266ドルにスパイクしたことがきっかけです。BitPayの最初の投資家であるマット・マレンウェッグは私たちの投資家でもありますが、キプロス・ショックが起こったことで、たくさんの人からビットコイン投資に関するアドバイスを求められたそうです。その時、彼は答えを持っていなかったのですが、少なくとも、皆が情報を欲しがっているということがわかったのです。」

NCC2015のために来日したCoinDeskのジェレミー・ボニーCEOは「デジタル通貨の現状」セッションにおいて、誰もが触れたがらない「ビットコインの価格」と「ビットコインに関わる人々」の関係性について語った。

ビットコインの現状

キプロス・ショックの余波がビットコインの価格急騰を招き、メインストリームへとその存在を知らしめるようになったことに関して疑う者は誰もいない。BBCやFinancial Times、Bloombergを始めとするメジャーメディアに一斉に取り上げられたのは、ビットコインの価格についてのことだった。

2013年12月には1242ドルの歴代最高値に達し、メディアの反応も最高潮に達することになる。この時には、400を超えるメディアがビットコインの価格に関する記事をこぞって書いたほどだ。

2014年2月、マウントゴックスの破綻により、ビットコインに対するセンチメントは再び持ち直した。しかし、12月の価格高騰の時ほどではないという点は興味深いところだ。その後も、ビットコインの価格推移に基づく形でメディアの反応も比例していくことになる。

2014年の終わりには最悪の投資だと書かれ、大きな波紋を呼んだ。更に、2015年早々にマウントゴックスを彷彿とさせるような事件が起こり、再びメディアに取り上げられることになった。この時には多くのメディアが「ビットコインは死んだ」という見出しで記事を出した。価格は1月の始値から更に50%下落し、多くの人々が「もうビットコインはおしまいだ」と思ったことだろう。

結局、メディアの関心は価格の騰落とビットコイン周辺の事件だということだが、しかし、そういった状況も徐々に変わりつつあるのだ。

「最近、多くのメディアがビットコインの“良い面”を取り上げるようになりました。これは、マーク・アンドリーセンやフレッド・ウィルソン、リード・ホフマンなど、シリコンバレーを代表する投資家がメディアを使って活動しつづけたことに影響を受けているのだと私は思います。特に、マーク・アンドリーセンは初期のころから非常にたくさんの記事を書いてきました。」

環境の変化

ビットコイン関連スタートアップへの投資規模が2014年には361Mドルだったのに対し、2015年は上半期を終えた時点で、既に前年度超えの372Mドルが投下されている。ボニー氏の予想では、今年度末までに720Mドルまで成長するとの主張だが、この予想はかなり現実的だ。

また、ボニー氏は今年最大の投資ラウンドを収めた21, Inc.にも言及した。興味深いのは、アンドリーセン・ホロウィッツのジェネラル・パートナーであるバラージ・スリニヴァサン氏が、ビットコインの研究に熱中しすぎて、自ら会社を立ち上げてしまったことだ。それが21であり、同社は、ビットコインのマイニングチップをあらゆるスマートデバイスにいれマイニングをさせてしまおうという計画を、野心的に進めている。

スマートデバイスにチップを埋め込むということは、ローレベルで制御できるということだ。別の言い方をすれば、Wifiの使用料や非接触端末決済、スマートコントラクトなど、ネットワークに対して直接マイクロペイメントが出来るようになるということにもなる。21はあまり表立った活動を行っていなかったにも関わらず、この試みが有望視され、116Mドルの資金調達を果たした。彼らは現在、インテルやクアルコムと提携してビットコインのマイニングチップ「ビットスプリット」の開発を進めている。

「投資規模が拡大してきました。研究機関も増加しています。有名なラッパーも、俳優もビットコインのキャンペーンを始めています。最近では、ビットコイン決済を公式に受け入れたDopeという映画も出てきました。環境が、変わりつつあるのです。」

ビットコインは再び「成長フェーズ」へ

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ガートナーのハイプ・サイクルというものがある。ボニー氏は、ビットコインの業界が幻滅期を抜け、再び成長し始めるフェーズに移行していると分析する。

「ビットコインの場合、価格が急騰し、採用店舗も拡大しました。皆が期待感にあふれていたと思います。しかし、2014年を通じてそれは裏切られました。2015年年初、ビットコインの価格が152ドルをマークし、サイクルの底を突きました。そして、現在は底を抜け、再度伸びる時期に来ています。」

「伸び始めている」というのは誰もが体感していることであろうが、次に考えるべきは、「何が伸びるか」と「何を伸ばすか」だ。まず、ビットコインのアプリケーションの機能として考えられるものに「日常の決済」があるが、今の時点で、消費者の支払手段として成功しているとは言えない状況だ。

ビットコイン決済代行サービス・プロバイダ「BitPay」によれば、決済を利用しているのはごくわずかの固定客、それも、昔からビットコインをやっていたアーリーアダプターだけだという。そしてそれは、ビットコインの知名度とは対照的に、マイクロソフトやDELL、楽天のような大企業の採用とは対照的に、全体の採用店舗の拡大率の減少傾向として如実に現れている。

当然だが、必ずしも決済が成功しないというわけではない。「もしかしたら、UIやUXがイケてないということだけなのかもしれません。税や会計など、法律の問題もあるのかもしれません。成功する可能性はあります。」ボニー氏はそう付け加え、事業者と消費者の間のフリクション ー そもそもビットコインで支払う必要性がない ー の存在を指摘した。ビットコインの通貨そのものを必要とする市場環境は、今のところかなり限られているのだ。

「しかし、国際送金はかなり有望です。グローバル企業の内部送金にも使えるかもしれません。あるいは、クロスボーダー決済に利用できるかもしれません。ベンチャーキャピタルはこれまで、支払いシステムに多くの投資をしてきましたが、まずは送金ビジネスを伸ばすのが良い選択なのかもしれません。」

ビットコインのメリットは、インターネットに接続されてさえいれば十数円の手数料でどこにでもほぼゼロコストでお金を送れることにある。利便性を増すために外貨交換所と連携すれば、従来的な国際送金のコストとして必要な膨大な手数料を支払う必要はなくなる。ここを活かさない手はないとボニー氏は言う。

スマートコントラクトの分野は、時期尚早かもしれない。しかし、スマートコントラクトを包含するビットコイン2.0の分野では、既存の金融システムとブロックチェーンを融合させることで業務改善ができそうだということが金融機関の研究で明らかとなってきており、実際にパイロットプログラムが稼働し始めている。

これは、ビットコインが元々、伝統的なの中央集権機関を迂回するように設計されたものであるという点で、少し皮肉に映るかもしれないが、事実、バークレイズやCITI、BNYメロン、USAAなどの大手金融機関が注目しており、ビジネスとなる可能性が高まってきている。既にバークレイズなどでは、スウェーデンのビットコインスタートアップSafelloとパートナーシップを締結し、分散型データベースを用いたシステム開発に取り組んでいる。

「改めて言いますが、ビットコインへの投資規模は毎年倍増しています。FinTech全体の規模から見るとまだまだ小さいですが、確実にエコシステムが形成されはじめています。決済でも、送金でも、効率化でも、なんでも構いません。ビットコインを失敗に終わらせないために、ビジネスのストラクチャーをしっかりと考え、発信し続けることが重要です。」

こういった動きがビットコインのコミュニティにとって、良い流れなのか悪い流れなのかはわからない。しかし、ビットコインが起点となって進められているビジネスが既にFintech全体の数%を占めているという点で非常に興味深く、明確な変化と成長が起こっていることは疑いようがないことだろう。これらは、ビットコインの価格高騰とメディアがなければ決して成し得なかったことだ。ビットコインの価格も、1年の氷河期を抜けてようやく反転の兆しが見えてきた。

次に1200ドルを超えるようなことがあれば、メディアがどのような反応を見せ、人々がどう動くのか。非常に楽しみである。

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この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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