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dao

DAOとはDecentralized Autonomous Organizationの略称であり、日本語では一般的に自律分散型組織と呼ばれている。これは2013年ごろから、ビットコイン・ネットワークの運営体制から着想を受けて提唱されたコンセプトで、分散的に、組織や会社、コミュニティ自体が自律して運営されることを表している。組織を会社と言い換えて、DAC(Decentralized Autonomous Corporation)と呼ぶこともある。

DAOには特定の主体がおらず、いかなるビジネスルールや制御下に置かれていない。意思決定や意思決定に至るためのプロセス、実行、組織全体のガバナンスや紛争解決は人ではなく、プロトコルが予め定めたルールに従って執行する。これを実現するためには、自律分散型である必要がある。

そしてもう一点、DAOを維持するために欠かせないエコシステムとして、DAOネイティブなインセンティブ機能も必要になる。あらゆるネットワークやコミュニティの運営コストはゼロではなく、参加者のモチベーション維持や活動のための経済支援の意味でも何らかの報酬がなくてはならない。ビットコインにおいては、ブロックを生成するとプロトコルからの報酬としてビットコインが発行され、これが参加者に対するインセンティブ機能として働く。そのため、ビットコインは世界で初めてのDAOだと言われている。

ビットコインとDAO、未解決の課題

一方で、ビットコインDAOは現実世界の問題を解決できてはいない。それを色濃く反映したのが、現在のビットコイン・ブロックサイズを取り巻くスケーラビリティ論争だ。

中国のコミュニティ・サイドは今すぐにブロックサイズを2MBに引き上げるべきだと主張し、ビットコインコア・サイドはブロックサイズを引き上げるのは最終手段であり、ハードフォークが起こらない解決策を採用すべきと主張。お互いに一歩も譲らない状況が1年近く続いている。Coinbaseのような一部のビットコイン企業は、現状の対立構造やビットコインコアのリーダーシップを疑問視し、イーサリアムを取り扱い賞賛するスタンスを表明している(リンク先は関連記事)。

ビットコインはインターネットと比較すると歴史が浅い。にもかかわらず、2009年に稼働が開始してから数年で7000億円を超える時価総額に成長し、1000億円を超える関連技術投資が行われたため、開発体制やコミュニティが成熟しないまま、さまざまな思惑が飛び交い混乱をもたらしている。現在、コアはW3Cのような成熟したコミュニティを形成し、BIPを中心とした提案・開発・合意プロセスの効率化のための仕組み作りを行なっているが、これにはもうしばらくの時間が必要になる。

また、W3Cには384の企業スポンサーがおり、インターネット規格の標準化にフルタイムでコミットできる環境も整っている。ビットコインには開発者を経済支援するための基盤がないため、技術中立的な立場からコア開発に携わり続けることが難しいという問題もある。

The DAOの意義、支援機構としての側面

その中で、イーサリアムをベースとしたThe DAOと呼ばれるプロジェクトが浮上した。The DAOは既に1.45億ドル相当のETH(イーサリアム上の通貨)を調達しており、世界最大のクラウドファンディングとしてリストされている。

The DAOが偉大なのは、ビットコインが解決できなかった「現実世界の合意」と「経済的支援」に挑戦したことにある。

ホワイトペーパーによれば、The DAOは「コードベースで動く、自動化されたガバナンスと意思決定を下す自律分散型のプロトコル」によって、世界中の事業へと投資を行うためのプラットフォーム。The DAOのコードは従来の企業体でも利用できるし、個人のプロジェクトでも利用できる。すべての投資実行は、The DAOのプラットフォームに提出されたプロポーザルに対して、不特定多数の参加者が投票を行うことで、ネットワーク自体が投資ファンド機能として自律的に動く。

しかしながら、このプロジェクトは革命的である一方で、投資収益を第一目的とした分散型の投資ファンドとして見た場合は成功に対する疑念が残る。The DAOは既に、1.45億ドル相当のEther(イーサリアムのネイティブ通貨)を集めているが、長期的な成功を収めるかは別の話だ。

例えばビットコイン&ブロックチェーン研究所代表の大石哲之氏は、The DAOの問題点としてブログの中で次のように指摘している。

「たとえば、Slock.itに10億円を拠出し、売上の1%をもらって、その拠出額を回収しようとすると、Slockにおいて1000億円の売上が必要である。

Slock.itが想定するような、ETHを使って、出先のスマートロックを解除しようとするようなユーザーが、1000億円規模もいるだろうか?まだETHには軽量クライアントも無いのに?わたしは4-5年の期間をみても、その数字を見積もることは現実的でないと思う。

そう考えると、the DAOは、投資した元本を回収できない可能性がある。the DAOの事業として見た場合、おそらく利益を上げることなく終わるだろう。」 – Doublehash

自律分散型組織の行方

The DAOの一部の側面だけを見れば、成功にはかなりのハードルがあるように思える。とはいえ、その一方で、基礎研究開発のためのR&Dファンドとして変化した場合、The DAOの真価が発揮できる可能性もある。例えばアンドレアス・M・アントノポラス氏は分散型ADRの研究論文を執筆するための研究開発費として、The DAOを利用した3万ドルのプロポーザル「Decentralized Arbitration and Mediation Network (DAMN)」を提出した。

このように、分散型エコシステムのための基盤開発にThe DAOのファンドが用いられるようになると、コミュニティの活性化を促すだけでなく、長期的な技術発展に寄与するという社会的意義のあるプラットフォームにもなりえよう。

ビットコインに話を戻すと、ビットコインのコア開発者の何人かは現在Blockstreamと呼ばれるサイドチェーンの開発会社に籍を置いている。Blockstream自体はある意味コア開発者のために作られたスタートアップであり、リード・ホフマンをはじめとする同社の初期の投資家も、リターンには期待せずビットコイン・エコシステムと技術の発展に期待している節があった。そのため、同社に籍を置く開発者らは、会社の方針に縛られず自分の意思でビットコインコアの開発に携わることができる。しかし、ビットコインコミュニティの一部はこれを良く思っておらず、Blockstreamが自社製品を売るために(サイドチェーンはビットコインをスケールさせるためのひとつのソリューション)ブロックサイズを引き上げたがらないのではないかと批判されることも多い。

実態はどうあれ、どこかに所属するということはそうした色眼鏡で見られるということであり、これはビットコインのエコシステム全体にとって健全な状態ではない(特にビットコインの場合、疑い深い人々が多いことも起因しているのかもしれない)。伊藤穰一氏も述べているように、コアメンテナーはコミュニティにとってかけがえのない財産であり、ナンセンスな批判に晒され、無駄に消耗させることは避けなければならない。

もしThe DAOが正常に運営され、開発者のための支援機構として機能するようになれば、開発者は特定企業の支援を受けずに経済的支援を受けられ、プロジェクトにフルコミットできる環境を作ることができる。これはThe DAOが基盤としているイーサリアムにとっても価値のあることであり、また、ビットコインにおいても例外ではない。だから、The DAOは重要なのだ。


The DAO

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この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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