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 2016年3月4日、ビットコインを法的に定義する新規制法案を含む改正案が閣議決定され、5月25日に可決した。これを契機に、国内でも大手企業が続々と参入表明を行うなど、本市場はますます盛り上がりの兆しを見せている。

 本連載では、ビットバンクの廣末が聞き手となりビットコインとブロックチェーンの市場に参入表明を行なっている企業、または既に参入している企業にインタビューを行っていく。この領域に取り組む企業が、どのような背景から関心を抱き、市場参入を決めたか。そして、この技術を通じてどのような将来を描いているか。「ビットコイン/ブロックチェーン×事業」をテーマに、仮想通貨に挑む企業の狙いを明らかにしていく――。

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 第二弾はDMM会長の亀山敬司氏。動画配信から始まり、証券、ゲーム、英会話と幅広い事業を手がけ、1700万人超の会員数を擁するDMMは、国内最大規模のユニコーン企業(非上場で時価総額1000億円超の会社)として、さまざまな業界から注目を集めています。

 最近ではDMM.makeやVRのような最先端事業にも参入したほか、アフリカでの事業展開に向けた取り組みを行うなど、立ち止まることなく次々とユニークな戦略で突き進むDMM。3月にはcoincheckのビットコイン決済を導入したこともニュースになりました。そんなDMMは、ビットコインに何を見ているのか。

今回のインタビューは、前編・後編の二本立てでお届け。前編では、coincheckのビットコイン決済を導入した経緯と、ビットコインについてどう考えているのかをDMMの亀山敬司会長にお聞きしていきます。

後編はこちら:DMM亀山敬司 会長 水族館からモノづくりまで、”なんでもアリ”の先にあるもの


廣末:先日、coincheckさんの決済システムを使ってDMMグループでビットコイン決済をできるようになったことが世界的にも大きなニュースになりましたが、どのような狙いからビットコイン決済を導入されたのでしょうか。

亀山:先がありそうなので、新しいモノ好きというだけかな(笑)。元々、ビットコインをヘタに触るのはやっかいだなというのが実はありまして。

廣末:それは金融庁を意識して、という意味でしょうか。

亀山:金融庁的にどう判断するかというのも微妙だったし、下手すると国家を揺るがしかねないようなコインかなと思った。なのでまだ、すぐには触れないなあと。

廣末:なるほど。ということは、しばらく前から目をつけられていて、研究をされていたと。

亀山:ビットコインを見た時、これはもう将来的に化けたらすごいと思った。なので、やんなきゃいけないなって言ったんだけど、やっぱ証券の人間から今はちょっと関わらないで欲しいみたいな話もあって。ちゃんとルールがはっきりしてからやりましょうよと。

廣末:では、水面下で待たれていた。

亀山:うん、そうかな。ベンチャーならやれるだろうけど、ヘタにやるとね。

廣末:コンテンツの決済では御社は最強だと思うので、仮想通貨関連のベンチャーなどから資本業務提携してくださいというお話が結構きたのでは。

亀山:そうなんだけど、うちだけじゃなくて楽天とかCyberAgent、Yahoo!とか、サービスをやってる色々なところからの資本を入れて繋がりを作りたいっていうのことなんじゃないかな。業務提携をしたいというのもあるだろうし。がっつり色付けたいというわけではなく、色んな所から出資させて、その分決済お願いねとか、いいたいんじゃない?

廣末:なるほど。

亀山:だからうちが入れなくても、使う場合こっちで使うし、あんまり関係ないからねという話に (笑)

廣末:マイノリティ出資はしないけれども、業務提携はすると。

亀山:うん、業務提携は全然するし、自分らでやりたいと思ったら売ってねと。

 ビットコインの事業で何を狙うかって話になると、ウォレット自体はちょっと違うかなと思うところもあって、面白そうなのはどっちかというとトレードの方。だってどこも、話を聞いてると儲かりそうにないような話ばかりだから。手数料とれないわ、って話になるじゃない(笑)

廣末:まだまだ市場自体が小さいですからね。

亀山:それに、大きくなってもクレジットカードの事業者に比べると儲からないよね。MVNO業者で競争するみたいに、ビットコイン業者同士の競争も激しくなるでしょ。MVNOも当然キャリアより安くなるのと同じで、ビットコインも他の決済にくらべたら安くなる。

 手数料が安いから誰かが使い出したら一気に流行ると思うけど、競争も激しくなる。だから、かなり気合入れないとさ。始めは手数料無料にするとか、持ち出しするとか、そういう感じになるんじゃないかな? どうしても。でも決済においてはどんどん広まると思う。決済自体はカード決済よりもぜんぜん安いから、普及してくれた方がみんな嬉しいし、歓迎するんじゃないかな。

廣末:まったくそのとおりだと思います。

ビットコインは金融機関の敵じゃない?

亀山:気になってるのは、銀行であれ、カード会社であれ、ビットコインをみんなが歓迎し始めたら面白くない部分があると思うんだけど、その辺りの圧力がいまいちわかんないんだよね。既存勢力って大概、新しいものが出てきたら潰しにかかるか、はやめに一体化するかのどっちかだと思うんだけど。

廣末:今、ビットコインと、そのデータを構成するデータの構造、ブロックチェーンというのがありまして、これは要するに連綿とデータを繋いでいく仕組みです。

 金融機関はというと、ビットコインはオープンだから扱いにくくて、ブロックチェーンを活用してクローズドにビジネスをやろう、というところで盛り上がっている。要するにビットコインはいらない、そこのコア技術だけを使えば良い、という思考だと思います。国内で今バズワードになっているのは主にブロックチェーンのことなんですよ。

亀山:ああ、そうなんだ。

廣末:私どもとすると、ブロックチェーンというのはひとつのデータ構造にすぎなくて、ビットコインみたいに中央機関がなくても正しい認証ができる仕組み(編注:プルーフオブワーク)の方がずっと革命性があると思っていまして。なので金融機関の方とお話すると思想が真逆なんで、右翼の連中がきたみたいな感じで(笑)

亀山:(笑) ああ、そうなんだ。ブロックチェーンって俺はビットコインを含めた全体的なことを言うのかと思ってたけど、違うんだ。

廣末:私はよく電気自動車にたとえて説明するんですが、電気自動車にはバッテリーとモーター、インバーターの3つの構成要素があって、この3つの掛け算で電気自動車ができるんです。

 ビットコインの場合は、ブロックチェーンと電子署名、みんなで合意をとるプルーフオブワーク。この3つの構成要素を掛け算したらビットコインができる。ですので、ブロックチェーンというのはビットコインを走らせるためのひとつの要素にすぎなくて、電気自動車で言えばバッテリーみたいなものなんです。

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廣末:つまりバッテリー単体よりも、電気自動車っていう全く新しい乗り物の方がずっと革命性があるんだっていうことをずっと主張していまして。その電気自動車そのものっていうのは、つまりレシプロエンジンベースの自動車会社から見ると、はじめは気に食わないわけです。競合じゃないのかと。

亀山:金融機関はバッテリーだけを積もうとしてるんだ。

廣末:平たく言えば、そういうことだと思います。そのバッテリーを別の形で使ったらいいんじゃないか、ってことですね。

 ただ、私自身は電気自動車という、環境によくて、エネルギー効率が高い乗り物が登場したのであれば、やはり世の中は合理的に電気自動車が世の中の主流になっていくと思っています。それと同じように、ビットコインのような仕組みができてしまったのであれば、おそらくはその方向に世界が走らざるをえない。もちろんバッテリーはバッテリーで進化していくべきですし、そうなると思いますが、全く新しい乗り物の電気自動車をやるほうが夢もあって面白い。なので私たちはそっちの方向にフォーカスをしてやっているという感じです。

亀山:じゃあ、ビットコインとブロックチェーン。これのメリット・デメリットっていうのはどうなの? ビットコインは認証に時間がかかるみたいだけど。

廣末:確かにビットコインの場合、パブリックなネットワークで不正を排除しつつ合意をとるために10分の待ち時間が設けられていますが、今はそれを短縮させるような上のレイヤーの技術もでてきています。ただ、まだ完全ではありませんし、参加者の合意を取らなければならない関係で、もう少し先の話になりますね。

 ただインターネットで言うところのRFCのように、ビットコインのネットワークを改善するための提案とレビューが毎日のように繰り返されています。ですので、インターネットがブロードバンドになった、無線になったとかっていうのと同じで、いつのまにかビットコインの承認時間を意識しなくてよくなった、みたいになってくると、だんだん皆さんにもその進化がわかってくるのではないかなと。

亀山:なるほどね。かたや金融機関が取り組もうとしているブロックチェーンの方は、今の段階だと承認スピードも断然早いということになるの?

廣末:そうですね。そもそもまったく異質なもので、ビットコインの場合は不特定のネットワーク参加者が送金の正当性を証明していますが、金融機関などは自ら送金の正当性を証明するかたちになるので、不正排除のために要する10分の待ち時間はそもそも必要がないわけです。

 この場合は、金融機関自らが証明しているのでむちゃくちゃはやいんですね。ただし金融機関が不正を働いたり攻撃を受けたりすれば破たんするので、誰かが主体のビジネスモデルという意味で、既存の仕組みと大して変わりはない。

 どちらかと言えば、オープンなビットコインの方が私はインターネット的だと思いますし、中央型のブロックチェーンは今までと同じ構造です。インターネットがそうだったように、やっぱりオープン性がある中で発展した方が、大きな可能性があると感じています。

亀山:今だと既存勢力の利権もあることだし。

廣末:そのとおりです。

「後進国、途上国から順番に拡がっていくんじゃないかな」

廣末:ただ一方で、金融庁は「もしかしたら面白いかもしれないから、伸ばしていこう」ということで、どちらかというと味方をしてくれている。

亀山:うん、そこが俺は結構柔軟だなと思ってびっくりした。既存勢力の側について、広がりにくくなって二の足を踏むようになるんじゃないかと思ってたんだけど。

廣末:そうなんですよ。

亀山:ビットコインの勢力がどんどん拡がっていくと、金融政策とかが効かなくなってくるわけでしょ。

廣末:非中央管理型の通貨が主流になってくると、従来の金融論における金融システムというのは仰るとおり効用がなくなってくる可能性があると思います。

亀山:だから、俺達のやる仕事が減っちゃうじゃないかと、なっちゃうんじゃない(笑)

廣末:(笑) 仰るとおりで、ビットコインのように誰も管理しない、フェアでオープンなものが普及すると中央銀行に本当に存在意義があるのかと。やっぱりこの世界が拡がってしまうと、究極的にはそういったこともあるかもしれません。

亀山:そうなっちゃうよね。だから俺は、これはかなり重い案件だなと思ったよ。すごいけど重いなって。

 やっぱり、国の全体的な権力構造を変えるような話なのかなとも思ったから。だからあんまり、俺らみたいなちっちゃいところがヘタに関わったらさ、プチってやられちゃうじゃん。(笑)

廣末:いやいや。ただ世界の中央銀行を見ると、一番先進的なイギリスでは、この技術を取り込んで自らを変えていこうという話もパブリックにされている。当然、そもそも今でも金融政策が効いているのかに関しては議論の余地があると思いますが、やはり従来の金融システムのままで本当にいいのかってところに、自己疑問を投げかけていて。

 そういうものを積極的に取り入れて実証をしてみるだとか、そういうことをやっている中央銀行も世界には存在しているんですね。日銀からも仮想通貨に言及したレポートが出ているんですが、必ずしも否定はしていない。脅威に感じているものの、そういうものを取り込んで、自らイノベートしていったほうがいいんじゃないかというスタンスもあります。

亀山:日銀はまだいいけど、他の国だと本当に政府に対する信用が少ないからね。だから本当に、安定していない国から普及していくんだろうと思う。ジンバブエとかね(笑)

廣末:(笑) まあ本当に日米、欧州の中央銀行はジレンマに陥ると思います。

亀山:意外と後進国、途上国から順番に拡がっていくんじゃないかなと思ってて、面白いっちゃ面白いなと。

 だからすごく興味があって、すごい革命だなと思った。

 それで二年前くらい前に社員総会をした時にビットコインをやりたいって考えたりするんだけど、みんなビットコインに対するイメージ、どう思う?って聞いて。ちょうどたまたま渋谷のどこかで潰れたところがあったでしょ。その頃に。

廣末:マウントゴックス。

亀山:そうそうそう、あったじゃない。あの事件が起こった直後だったから、手を上げろって言ったら、6割か7割が悪い方にあげて(笑)

廣末:まあそうですよね(笑)

亀山:じゃ、やめとくかみたいな(笑)

 まあただ、これも一時的なものだと思うし、ビットコインの問題じゃないとも思ったんだけど、社会がそう思っちゃうとやっぱりよくないってなるよね。事件の直後でちょうど盛り上がってた頃だったから。

 だから、じゃあとりあえず水面下で研究しよう。いつくるかわからないから調査はしておこうという話になってね。商品なのか貨幣なのかわかんない状況の今じゃトレードは難しくて手は出せないけど、でも決済ならそれほど問題にならないから。じゃあ決済を、どうせ誰もこないだろうなーと思いつつ、やってみようってね。

廣末:御社みたいに、色んなバリエーションのデジタルコンテンツをたくさんお持ちになられてるところは相性がいいと思います。

亀山:いやまあ相性はいいんだけど多分、10万や20万しかこないんじゃない?ってのは実は想像で。いくら処理してるかは聞いてないんだけど、多分ほとんど来てないと思うんだよ。色んな決済手段の中で最下位からはじまるだろうっていうのは想像ついてたからね。まあ置いておけば徐々に増えるのは間違いないんじゃないかな。

廣末:なるほど。

亀山:あと、今回うちらがビットコイン決済を入れたからニュースになったけど、別にファーストペンギンってわけでもないしね。ファーストペンギンっていうとツッコミが入っちゃうから、ファースト皇帝ペンギン(笑) そんな感じでやっていこうと。


DMM亀山敬司会長との対談・後編は6月8日(水)に公開。

「自由奔放、”なんでもアリ”な事業はどのように作られるのか。」
「亀山会長が考える”お金の未来”とは何か。」

前編につづいてさらにディープな話に発展していきます。

株式会社DMM

インタビュー連載「仮想通貨×事業」

第一回 セレス都木聡 社長 仮想通貨のソーシャルインパクトは計り知れない
第ニ回 DMM 亀山敬司 会長(前編) ビットコインは将来的に化けたらすごい
第ニ回 DMM 亀山敬司 会長(後編) 水族館からモノづくりまで、"なんでもアリ"の先にあるもの
第三回 GMOメディア森輝幸 社長 ブロックチェーンはインターネットに次ぐ"変革"だ
第四回 マネパ奥山泰全 社長 いちはやくマーケットインしている会社でありたい
第五回 マイクロソフト大谷健 氏 日本のロールモデルを提示したい
第六回 さくらインターネット田中邦裕 社長 ブロックチェーンで社会は既に変化し始めている
第七回 インフォテリア平野洋一郎社長 ブロックチェーン推進協会設立のワケ
第八回 WiL久保田雅也パートナー 人類は未知の領域<テレポーテーション>に突入した

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この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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