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欧州銀行協会(Euro Banking Association)は、1年から3年の短中期で起こりうる暗号通貨技術の利用可能性について検討する主旨のレポートを公開した。レポートでは、この技術を通貨・資産台帳・アプリケーションスタック・資産集約技術の4種のカテゴリに分類してそれぞれを説明し、銀行取引と決済への影響力を多角的に分析している。

EBAは、ユーロ圏の180を超える金融機関が所属する機関であり、銀行や各種サービス・プロバイダがユーロ圏における決済インフラの骨子を構築するための支援を行っている。

「暗号テクノロジー:重要なITイノベーションかつ、変化のための触媒」と題されたレポートでは、上記した4つのカテゴリ、そして4つの主要なアプリケーション層、さらには想定しうる4つのシナリオにまで言及されている。

ブロックチェーン革命・短期的な効用

世界的に見れば、ビットコインをはじめとする仮想通貨について検討し、具体的な指針や成果を提示している組織はさほど多くない。主要なところでは、欧州中央銀行や欧州銀行監督機構、ビットライセンスを主導するニューヨーク金融サービス局(NYDFS)などが挙げられるであろう。

最近では、UBSやBNY MellonUSAAなどにおいても、ブロックチェーン技術を研究・調査することを目的としたラボが設立されるなど、多くのプロジェクトが立ち上がっている。また、米NASDAQ OMXグループは未公開株式市場の株式管理システムのインフラ技術としてブロックチェーンを用いるべく、ブロックチェーン技術イニシアティブを発足し、効率的な未公開株式の管理システムを構築すべく、今年度末に向けプロトタイプ版のアプリケーション開発に取り組んでいるという。

EBAがカテゴライズした暗号技術には、1)通貨(currencies)、2)資産台帳(Asset Registries)、3)アプリケーションスタック(Application Stacks)、4)資産集約技術(Asset-centric Technologies)があるというのは、はじめに述べたとおりだ。次にEBAの図表を添付する。

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図1 暗号テクノロジーの4種のカテゴリ

通貨・資産台帳・アプリケーションスタックにおいては、通貨、あるいは株式や知財権、所有権などの資産、あるいはアプリケーションの操作を単純にブロックチェーン上で行うという点で、これらの概念は単純化しやすい。

リップル・ステラーテクノロジーの可能性

しかし、レポートにおいて特に顕著なのは資産集約技術、すなわちRippleやStellarのシステムに深く言及していることである。NYDFSや欧州中央銀行、欧州銀行監督機構の仮想通貨ビジネス規制検討案では、ビットコインに主眼が置かれており、Rippleなどに関してはそれほど検討されていなかったように思う。しかしながら、最近では日本のゲートウェイ・リップルトレードジャパンが顧客資産を解放せず運用を放棄。あるいは金融犯罪取締ネットワーク(FinCEN)がRipple Labsに70万ドルの罰金を科すなどの問題が発生しているため、法規制によってこれらのサービスについても定義しなければならない領域であることは明らかだ。

EBAによると、資産集約技術には4つのユースケースが存在すると述べられている。一つ目は、Rippleのゲートウェイ間での為替取引および送金機能だ。例えばユーロのみを取扱うゲートウェイとドルのみを扱うゲートウェイの間で、ユーザー同士のマッチングが成立すれば自然と為替市場が形成される。リップルのトレードシステム上で交換したユーロやドルは、IOU(借用証書)という形で発行されており、それぞれの取扱いゲートウェイ上で出金申請を行い現金を手にすることが可能である。流動性を提供するマーケットメーカーを介すことで、ユーロ→ドル→円などのクロス取引も即時決済することができる。

したがって、リアルタイムのクロスボーダー決済も非常に簡単に可能だ。これは、あらゆる資産をひとつのプロトコル上で、一括管理できるリップルならではの利点であると言えよう。そして、リップル版ブロックチェーン、取引台帳システムはブロックチェーンと同様分散的に管理されており、すべての取引が取引台帳に記録されているが故に、アドレスベースでの取引は非常に簡単に追跡できるという利点がある。

荷為替システムへの応用

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図2 マルチシグウォレットを活用した荷為替取引の例

この性質を応用することで、現在の荷為替システムに利用することができるというのが、EBAの見解だ。EBAは、決済プロバイダはこれらのテクノロジーを利用し、清算をより効率的な形で可能になると述べた。

”これまでも、決済プロバイダはシステムを自動化することで効率化を目指してきました。しかし、それらは従来的なスキームを論理化したシステムであるため、依然として物理的な荷為替手形による取引をせざるを得ない状況にあります。そのため、決済プロバイダはデジタル化の恩恵を最大限に受けることができませんでした。しかし、今は違います。マルチシグネチャウォレットを利用し仕入先、決済プロバイダ、顧客を繋ぐことで、透明性が高く、完全にエンドトゥエンドの荷為替取引を行うことが可能です。”

さらに、EBAはこのような「条件付き」の決済を暗号テクノロジーを用い自動化することで、それらに付随する監視業務やセキュリティリスクを排除可能であると述べた。

暗号通貨技術のモチベーションと、4つのシナリオ

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図3 協力の段階と、それによって得られるであろうシナリオ

EBAは、これらのテクノロジーがメインストリームへと昇華するには、規制当局との協力、既存金融機関との協力、およびコミュニティレベルでの協力体制を構築することが肝要であると分析する。規制なくして金融機関との交渉が進むことはないし、銀行と協力して普及に努めなければ一般の人々の信頼を獲得し、浸透することはあり得ないというのがEBAの見解だ。

1. 「認知なし」経済圏は独立したまま

既にいくつかの金融機関では研究が行われているが、規制が行われることで、より大きなシステム導入が進むというのがEBAの描くシナリオのひとつである。しかしながら、消費者からの認知はなく、あくまでもビジネス上の効率化手段の一つに留まる。

2. 「静かに広がる」金融機関は技術を認知し、技術導入を率先して行おうと試みる

しかしながら、EBAはこの状態において金融機関は暗号通貨コミュニティとのコミュニケーションを拒み、独自で技術を利用しようとするであろうと分析する。そのため、金融機関は技術の一面だけを見るに留まり、膨大な情報を有効活用できずに最小限のシステムを構築するに留まる。

3. 「認知され始める」特定領域において既存金融機関と仮想通貨事業者の積極的なコラボレーションが始まる

金融機関とコミュニティの積極的な対話によって、規制やコンプライアンス遵守に関する情報や最新の技術に関する情報の共有が行われるようになる。政府の法規制が整っていないため、あまり大きなことができないが、既存規制の範囲内で活発にサービスが展開される。

4. 「メインストリームへ」金融機関とコミュニティの対話、規制環境が構築されることで技術利用が加速

規制の骨子が完成し、グレーの領域がなくなることで仮想通貨サービス・プロバイダは積極的に活動を行うことができるようになる。金融機関もブロックチェーンに関する情報を収集できる環境にあり、大きな顧客ベースを保有しているため、仮想通貨サービス・プロバイダと協力関係を敷き、大々的にサービス展開をすることが出来る。

結論

結論として、EBAは3年以内の短期的な目線において、決済領域や銀行取引の分野ではRippleやStellarのような資産集約技術に最も可能性を見ているようだ。ただし、ビットコインやカウンターパーティ、イーサリアムに可能性がないということではなく、これらの技術は極めて「破壊的」な技術だということを十分に認識している。しかし、技術的な制約への直面、および現在の社会制度へ適合できないという点でボトルネックが存在しており、実用レベルに達するには長期の目線で見る必要があると述べた。EBAは最後に、改めて協力体制を敷くことの重要性を説き、その上で再度暗号技術の可能性を検討すべきであるとしている。

”暗号テクノロジーは、依然としてイノベーションの発生段階にあります。決済および銀行取引の業界における暗号通貨技術の影響(そして影響の速度)は、技術開発と普及を協力して行うことが重要です。これにより、暗号アプリケーションの採用は新旧のマーケットプレイヤーによって促進され、より強固な協力体制を敷くことが出来るようになるでしょう。”


参考文献:
EURO BANKING ASSOCIATION – Cryptotechnologies, a major IT innovation and catalyst for change

この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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