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bitcoin2015

本稿は、ニューヨーク連邦準備制度(NYFRB)の研究者であるAlexander Kroeger氏とAsani Sarkar氏の両者がLiberty Street Economicsに寄稿した記事の翻訳記事となります。ビットコインはフリクションレスの(摩擦のない)インターネット・マネーと言われますが、決済手段や通貨として見た時、本当に摩擦がないのでしょうか? 取引所での価格差を例に、本稿はビットコインのエコシステムが抱える多くの問題を提起しています。

ビットコインとは、今までに開発された最も人気のある仮想通貨である。ビットコインの支持者らは、伝統的な通貨などの金融仲介機能を排し、支払いシステムや決済システムの摩擦をなくすことが出来ると主張している。本稿では、ユーザーから見てビットコインが相対的に摩擦がないように見える一方で、ビットコインの市場取引の結果、および持続的な取引所間の価格差が重大な摩擦を生むことを示すことにする。こうした取引所に起因する摩擦は、ビットコインを決済代替物として利用することへの動機を市場参加者から失わせるだろう。

ビットコインの場合

仮想通貨はおそらく、「デジタル通貨の開発者によって発行と管理の基準が示され、特定の仮想コミュニティメンバーの間で採用され利用される、規制の及ばないデジタル通貨」と定義することができる。ビットコインは、2009年に立ち上げられたオンライン決済システムであり、仮想通貨である。ビットコイン・プロトコルからなるコードによる相互合意に従い、いかなる中央集権機関なしに運営されている。政府主体の中央集権機関による法的要求を受けて規制、発行がなされるドルやユーロのような伝統的な法定通貨とビットコインは、対照的である。例えば、銀行預金は銀行資産上の権利であり、連邦準備券(ドル紙幣)は、連邦準備システムの資産上の債権証書である。

ビットコインの完全なトランザクション履歴は、プロックチェーンとして知られる公開台帳の上に記録されている。ビットコインプロジェクトの提唱者らは、そのプロトコルが従来の通貨価値の転送に関係するリスクや時間、手数料を削減できると主張している。例えば、米国の小口決済システム(ACH)を通じた決済では、ビットコインでの決済がおおよそ10分程度で完了するのに対して、決済までに1~2営業日を要する。誕生以来、ビットコインは非営利団体や営利企業まで、バラエティに富む組織によって決済が採用されてきた。ビットコインを使ったスタートアップやプロジェクトは、今もなお増加してきている。2014年3月には、バンク・オブ・アメリカが法定通貨同士を仲介するため、暗号通貨(ビットコインのような)の交換を用いたワイヤー・トランスファーの執行システム特許を提出している。

しかし本当にビットコインは摩擦をなくすことができるか

デジタルウォレット間におけるビットコインの取引は、トランザクションのサイズに関係する些細なコストのため効率化できる。しかしながら、伝統的な通貨とは異なり、ビットコインは広く受け入れられる通貨単位として機能していない。それ故に、ほとんどのユーザーはビットコインを決済に利用するため、法定通貨を用いてサードパーティの取引所でのビットコインの購入に迫られる。その後、ユーザーは後でビットコインを使うために持ち続ける選択肢を得る。しかし、ビットコインの大きな価格変動と、法定通貨との相関性のなさは、ビットコインの価値の貯蔵としての機能、通貨単位としての機能を毀損し、その価値を蝕むことになる。この事実は、DELLやマイクロソフト、エクスペディアなどビットコインを早期に受付開始したリテーラーの経験から伺える。より正確に言えば、彼らは、手数料のために顧客からビットコインを受け取り、ドルをリテーラーに対して受け渡す善良なサードパーティを活用しているのである。法定通貨からビットコイン、あるいはビットコインから法定通貨への往復取引は、必然的に無視できない取引手数料とカウンターパーティリスクに晒されることになるだろう。同様に、これらの取引所起因の摩擦は、取引所間のビットコイン価格の乖離を引き起こしている。

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ビットコイン価格の法則とは?

厳密な同一性を持つビットコイン:ある取引所で購入されるビットコインと、その他の取引所で購入されるビットコインは同一性を持つ。それ故に主要な取引所間の価格差は、高く売れ安く買うことで差益を得ようとするアービトラージャーによって早急に是正されねばならない。こうしてひとつの適正価格が導かれる。しかしながら、ビットコインとドルの交換を担う3つの主要な取引所 — BTC-E、Bitfinex、Bitstamp — のチャートを見るに、大きな価格差が生まれている。これらの取引所の価格乖離は、それぞれが執拗に0%の乖離率になることを拒む。大抵、BTC-Eでのビットコインの購入は、BitfinexやBitstampでのそれよりもディスカウントされている。これは平均して2%ほどで、非常時には20%の乖離が生まれたこともあった。

なぜ取引所間で価格の乖離が起こるのか

同一資産のペアにおける、大きく、継続的な価格の狂いは取引所の機能からして珍しい。こうした乖離が発生しているにもかかわらず、収益性を持つ価格裁定機会が形成されていないためである。ビットコインにおいて、アービトラージャーは理論的にはBTC-Eでビットコインを購入し、BitstampかBitfinexでビットコインを売るか、ショートすることで安全に利益を得ることができる。しかし現実には、このトレードは以下の図のように取引コスト、あるいは/さらにリスクに見舞われることとなろう。

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取引コスト

取引コストは2つ存在する:BidとAskのスプレッド、そして取引手数料。 アービトラージャーは、BTC-Eの高いAskを見てビットコインを買ってから、BitstampとBitfinexの安いBid価格で売らなければならない。この差益がアービトラージャーの利益となる。チャートを見ての通り価格差はあり、これらの取引所におけるBidとAskのスプレットは、アービトラージャーがそれを拒否するほど開いているわけではない。

手数料について。これは明らかな障壁のように見える。例えばBTC-Eでは0.2~0.5%の取引手数料を徴収し、さらに追加でドルの入出金手数料を徴収している(ワイヤー・トランスファーでは20ドル)。BitfinexとBitstampにおいても、取引手数料と入出金手数料を課している。これらの手数料は、アービトラージによる利益を減少させ、そしておそらくは、価格乖離の発生を説明している。

リスク

取引所間におけるビットコインのアービトラージ機会には2つのリスクが内在している:取引所の破綻や詐欺によるカウンターパーティリスク、そしてトランザクションの執行の遅れによる価格の変化である。事実、ビットコインの価格はボラタイルである。そして1日の間に起こるBTC-Eの価格変動は、大抵Bitfinexを超えている。したがって、取引の執行の遅れは、価格の乖離が収縮または拡大することをアービトラージャーが避けられないことを示している。

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最も明らかなのは、USドルを取引所に送る時の遅延である。BTC-Eにおいては、アービトラージャーは電信送金を通じてドルを送り、5~10日待ってビットコインを買う必要がある。できるだけ早く取引を執行したいトレーダーは、その期間で価格が急変動するリスクに晒されている。

遅延リスクは、ショーターにもある。彼らはBTC-EからBitstamp、あるいはBitfinexにビットコインを送りすぐに売る必要がある。 これらの取引所では、ネットワークの承認確定時間として3ブロック分の承認を要求する。承認はおおよそ10分おきに行われるため、最低でもBitstampやBitfinexでビットコインを売るまでに30分ほどを要する計算になる。このような短期の遅延は、空売りすることで避けられる。しかし空売りはBitfinexしか受け付けておらず、また追加で手数料が必要となる。

取引所の破綻や詐欺は、別次元のリスクである。ビットコインの市場において、取引所の破綻は異例の自体ではない。よくあることなのである。2013年のレポートで調査された40の取引所の内、ほぼ半数の18の取引所が最終的に破産した。最も有名な事例は、マウントゴックスである。一時は最も大きなシェアを有していたが、およそ460Mドルの顧客資産が失われたと報じられた。カウンターパーティリスクは、BTC-Eでの一貫した安値維持も説明できるだろう。BitfinexやBitstampとは異なり、BTC-Eはその運営主体も、運営所在地も明らかにされていない。このような不透明性は、ユーザーに取引所の破綻や詐欺、個人情報の窃取を想起させるため、利用を思いとどまらせる効果がある。

決済オルタナティブとしてのビットコインの役割

ビットコインの取引所間の価格乖離も興味深いが、これらはまた(伝統的な銀行システムなど)他の決済オルタナティブと相対して、ビットコインが魅力的であることも意味する。ビットコインは通貨単位として機能していないため、ほとんどのユーザーは取引所を介し、取引所間価格の不確実性と「ミクロ構造」による摩擦を受けながらも、ビットコインを法定通貨と相互に変換する必要がある。価格の不確実性は徐々に、ビットコインを価値の貯蔵として利用することを阻むことになる。したがって、ビットコインは決済オルタナティブとして発展し続けたとしても、伝統的な金融システムの上に構築される「低手数料・低リスク」の送金手段と同種のものとして、競合することになるだろう。


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この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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