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本記事は、「ブロックチェーンの衝撃」(日経BP社 2016/6/7)の筆者(後藤あつし)担当箇所「第3章-3金融サービスへの応用」で、都合上記載しなかった、金融業へのその他の応用例と、IT技術者以外のビジネスパーソンがブロックチェーンを理解するための平易な解説を合わせたものです。

以下では概要のみ記載しています。より詳しく知りたい方は添付のPDFファイル(全48ページ)をご覧ください。

※説明はあくまでIT技術者以外のビジネスパーソンがエッセンスを理解することを目的としているため、細かな説明の省略や意訳をしている箇所が多々あることはご容赦ください。

レポート目次

  • 1章 ブロックチェーンを知る(本記事抜粋部分)
  • 2章 ブロックチェーンの類型
  • 3章 ブロックチェーンの概要 金融業への利用

 

■PDFファイル:ダウンロード

ビジネスパーソン向けブロックチェーン解説

ブロックチェーンの成り立ちから、基本的な仕組みまでをITに詳しくないビジネスパーソンにも分かるように解説しています。

Fintechを支える技術として世界的に注目を集めいているブロックチェーンについて、「こういうものなのか」と概要を理解できると思います。

ブロックチェーンの成り立ち

ブロックチェーンとは、ビットコインを支える中核の技術として、ビットコインとともにその考案者「ナカモト サトシ」によって生み出されたアイデアです。そして、ビットコインが広く世に知られるに従い、ビットコインの核心的な技術であるブロックチェーンを他にも応用できるのではないかと考えられ、金融や流通、契約等の分野で注目が集まっています。

特に、ブロックチェーンの単なる一つの応用例がビットコインと認識し、ブロックチェーンのみを評価する人もいますが、あくまでブロックチェーンのアイデアは、ビットコインを支えるために「ナカモト サトシ」の類まれなる独創性により生み出されたものである点はしっかりと認識する必要があります。

ブロックチェーンの基本的な仕組み

ブロックチェーンには様々なタイプがありますが、基本的なコンセプトは以下のようなものとなります。
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  • 取引は取引情報を利用者が発信することで始まる
  • 利用者は取引情報に暗号署名し、それをネットワークに流す
  • 取引情報は同時に分散データベースにも送られる
  • 各分散データベースは、受け取った取引情報を自己のデータベースへ書き込みする
  • データベースへの取引情報の書き込みは、分散データベース間で整合性が取れるよう特定の合意形成メカニズムの下で行われる(マイニングとも呼ばれる)
  • 書き込まれた取引情報は過去履歴を含め参照可能となる(参照権限は設定可能)

 

一方、ブロックチェーンの仕組みに対し、既存の中央管理型のデータベースは以下のような形として表現できます。

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  • 利用者は、中央管理者に取引申請を送る
  • 中央管理者は申請者と内容を確認し不正があれば排除する
  • 中央管理者は、自己のデータベースに取引情報を書き込む
  • 中央管理者は取引相手の利用者に取引情報を通知する
  • データベースの直接の参照権限は基本管理者にしかない
    ※管理者に改ざんされると外部からは分からない

 

ブロックチェーンの仕組みでまずよくわからなくなる点は、分散データベースと合意形成になります。中央管理型のデータベースは、1つのデータベースで管理を行いますが、分散データベースとは、同じデータを記録しているデータベースが複数存在しているものになります。

同じものが入っているデータベースをなぜ複数作る必要があるかという理由としては、それにより、1つのデータベースが壊れても、他のデータベースで仕組みを支えることができ、また全体でシステムを支えるので1つ1つのデータベースの性能をそれほど高くしなくてもよくなるなどのメリットがあります。特にビットコインのように管理者がいない形でシステムを維持する場合、どこかに1つのデータベースを置くと、それを改ざんされる可能性が出てくるため、分散させて相互チェックをかけたり、多数決で真正を判断できるメリットもあります。

次に合意形成ですが、中央管理型のデータベースでは、管理者が誤らない限り、データは整合性をもって更新されます。また、1つのデータベースの更新だけを行うため、大量の取引を高速に捌くことができます。

一方、ブロックチェーンでは、取引情報は、データは1箇所ではなく、分散されたデータベース上に多数同時に存在します。このため、適切に同期をとって更新作業を行わないと、こちらのデータベースでは取引情報が更新され、あちらのデータベースでは更新が漏れていた、というようなことが発生してしまいます。この同期をとって、各データベースを整合的に更新するための作業が「合意形成」と呼ばれるものになります。(「マイニング」と呼ばれることもあります。)

簡単に言えば、「合意形成」とは、「次にデータベースに書き込む情報はこれだ!」と決めることを意味します。データをそのままデータベースに書き込むのではなく、1ステップ「合意形成」という、参加している各々のデータベースが次に書き込むデータを「これだ!」と決める手順が入るため、ブロックチェーンでは速度の面で中央管理型データベースに劣ることになります。特にビットコインはオープンに誰でも分散データベースの維持管理作業への参加ができるため、悪意のある人(改ざんされたデータを記録しようとする人など)も入ってきます。そのため、そのような人が参加していても、データ記録が適切に行えるように、合意形成に10分以上の時間を要す形になっています。

この点、分散データベースの維持管理作業への参加者を限定的にし、合意形成の方法を時間を要しない方法にすれば、かなりの高速化が実現可能になります。(ビットコインのオープン型に対比しクローズド型やプライベート型と呼ばれます)。加えて、ビットコイン自体への改善も継続して行われており、ペイメントチャネルなどの新機能では高速な取引が可能になる予定です。

ブロックと個別取引の関係

ブロックチェーンという名前から、なんとなくデータがブロック化されているイメージを持たれると思いますが、ここではその仕組みを解説していきます。

まず、中央管理型のデータベースでは、個々の送金取引が行われると、個々の取引を直接データベースに記録していきます。

一方、ブロックチェーンでは、個々の取引を直接データベースに書き込むのではなく、いくつかの個々の取引をまとめて1セットにして、そのセット毎にデータベースに記録していきます。この複数の取引のセットの事を「ブロック」と呼びます。そして中に入っている個々の取引の事を「トランザクション」と呼びます。

ブロックチェーンで、なぜ、個々の取引(トランザクション)を直接データベースに書き込まないかという点ですが、これはブロックチェーンが分散データベースを採用していることに理由があります。

分散データベースでは、データが整合性を持って更新されるために、合意形成という作業が行われること、そして特にビットコインでは、改ざんなどに対抗するために合意形成に10分以上の時間を要す仕組みは前項で説明しました。この作業があるために、大量の個別取引(トランザクション)を直接分散データベースに書き込むと、同じ数だけ合意形成作業も発生してしまうため、システムの負荷が大きくなってしまいます。そこで、ある程度の数の個別取引(トランザクション)をまとめてブロック化し、そのブロック単位で合意形成を行い、分散データベースに書き込む仕組みとしています。加えて、ブロックの中に、改ざん防止用に過去のブロック情報を混ぜ込んだり、分散データベースの維持管理者への手数料支払い情報を含めたりもしています。
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合意形成・マイニングについて

ブロックチェーンでは、分散して存在するデータベースを整合的に更新していくために、「次に記録するデータ(ブロック)をこれにする」という合意を、データベースの維持管理作業への参加者(マイナーと呼ばれます)の中で行う必要があります。

データの記録作業は「マイニング」とも呼ばれており、特に合意形成のエンジン部分の仕組みをビットコインではProof of Work(POW)と言います。合意形成の仕組みはPOW以外にもいろいろな手法があります。

マイニング作業は、単純に言うと、分散して複数存在するデータベースについて、更新権限者をデータの更新(ブロック追加)の都度、特定の合意形成で1名に絞り込み、その更新権限者の更新内容を皆が一斉に自己の保有するデータベースに書き込むことで、分散して存在しているデータベースを整合的に更新するものになります。

では、XさんからYさんへビットコインを送る取引を例にこのマイニング作業を見ていきます。(簡略化した説明のため、ブロックにはXさんからYさんへ送る1取引のみ入っているとしています。)
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  • 新規取引がインターネットを介して通知される
  • 参加者は自己の持つ取引履歴データベースを参照し、新規取引内容に不正がないかを確認する
  • 全参加者の中でただ一人にデータベースの更新権限を付与するため、合意形成プロセスが実行される。
    特にビットコインでは合意形成の方法として計算負荷の高い数学的問題を解く競争が実施される(Proof of work)
  • 最初に問題の解を見つけた参加者は、他の参加者への通知を行い、他の参加者はそれを確認する
  • 他の参加者は受け取った内容で各自の持つデータベースを更新し、分散して存在している取引履歴データベースが整合性を持って一意に維持される
  • ビットコインでは問題の解を見つけた参加者は手数料を受け取る

 

ビットコインでは、合意形成、更新権限者を1名に絞り込む競争を「Proof of Work」という、コンピュータによる負荷の高い数学的問題を解くことで行っており、最初に答えを見つけた人が更新権限を得る仕組みとなっています。これは、高性能なマシンほど有利となる構造となっており、高性能なマシンほど電気代もかかるので環境負荷が高いとの批判もありますが、マシンの性能だけに依存するので、参加者の意図等に左右されないという利点があります。

他のブロックチェーンでは、「この合意形成、更新権限者をどう決めるか」の仕組みにバリエーションがあり、コンセプトは、コミットが大きい人ほど、仕組みが壊れるような(不正や改ざん)ことはしないだろうとして更新権限者を決めるようになっています。

Proof of Work コンピュータによる負荷の高い数学的問題を解くことで行っており、最初に答えを見つけた人が更新権限を得る仕組み
Proof of Importance 過去の取引情報から、データ授受のハブとしての重要性がより高い人(より多くの取引を行っている人など)が更新権限者となる仕組み
Proof of Stake より多くのコインを持っている人が更新権限者となる仕組み

※特に合意形成の詳しい仕組みは理解が難しいため、IT技術者以外の方は、この程度の理解で十分と思います。

様々なブロックチェーン

ブロックチェーンは最初はビットコインから始まりましたが、ビットコインのブロックチェーンのパラメータを少し変更したコピー的なものから、新規に開発されたものまで、いろいろなものが登場してきています。

  • Ethereum
    ビットコインのブロックチェーンは、セキュリティを優先した結果、複雑な取引の記録ができないような仕組みになっています。一方、複雑な条件をブロックチェーン自体に書き込み、条件が満たされたら別の取引が自動実行されるなどのプログラミングができたほうが応用範囲は広がるとして、ビットコインとは全く別にスマートコントラクト等への活用を念頭にゼロベースで新規に開発されたものがEthereumとなります。

    Ethereumはベースとなるブロックチェーンとコイン(トークン)が用意されているだけで、あとは利用者が自由に利用することになりますが、期待が非常に大きく先行し、どのような実際のサービスに利用できるのか、そもそもそこに利用者ニーズはどのようなものがあるのか、Ethereumを利用したThe DAOのトラブル(2016/6)もあり、今後の展開が注視されています。

  • NEM
    NEMもEthereumのような独自に開発されているブロックチェーンですが、ペイメントやメッセージ、アセット交換、スマートコントラクト等を構築したい人にとって、より使い勝手の良いプラットフォームを志向したものとなります。また、合意形成の仕組みにProof of Importanceを採用している点も特徴となります。NEMは、ブロックチェーンを企業向けソリューションとして提供している日本のmijin(http://mijin.io/ja/)がベース技術として利用していること(NEM自体はパブリックなプラットフォームを志向)もあり、我が国におけるブロックチェーン技術発展の中心として大きな期待がされています。
  • Hyperledger Project(ハイパーレジャー)
    Linux Foundationが開発しているブロックチェーンで標準化を志向しており、IBMが大きく関わっています。
    企業向けブロックチェーンソリューション、IoTへの利用などが検討されています。

ブロックチェーンの類型

ブロックチェーンは、管理者の存在から、参加者の制限、データ参照権限など、設定次第で様々なバリエーションが考えられます。そしてビットコインのように必ずしもコイン(トークン)が必要ではないものもあります。

また、金融コンソーシアムでのブロックチェーンの活用を考えると、セキュリティや問題発覚時の対応力確保のため、ビットコインのようにオープンな形を取ることを避け、例えば許可型で参加範囲を絞り込む対応が行われる可能性が考えられます。この場合、データベースの更新者の決定方法の点では、ビットコインのように不特定多数の中から不正を排しながら競争を行わせるProof of Workのようなマイニングは不要で、信頼できる参加者間での簡略化された合意形成の仕組みでデータ更新者を決定すればよく、データ更新頻度も格段に高速化することが可能となります。
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ブロックチェーンは設定項目の組み合わせで多様なバリエーションがあるため、自由なビットコイン型を想定している人と、管理者のいるクローズドなものを想定している人で話が合わない事態がよく生じています。

ブロックチェーンの分類でよく聞かれる、Permissioned(許可タイプ)(≒クローズド型、プライベート型とも呼ばれる)は、管理者がいる、データ記録作業への参加者が限定的という意味合いで用いられることが多いです。一方、Permission-less(許可不要タイプ)(≒オープン型)は特定の管理者がいない、データ記録作業への参加が自由に解放されているという意味合いで用いられることが多いです。

いずれにせよ、ブロックチェーンについて話すときは、どのタイプのものを想定しているか最初に説明することが重要となります。

■「ブロックチェーンの衝撃」金融サービスへの応用補足説明■

「ブロックチェーンの衝撃」第3章-3「金融サービスへの応用」箇所では、ブロックチェーンを金融業で利用する場合の基本的な事例を紹介していましたが、ここでは書籍には都合上記載しなかったアイデアをいくつか紹介しています。

  • 株式公開への利用
    株式公開にブロックチェーンを利用する例では、最大のメリットは、証券の所有権移転が非常に簡単に行える点となります。証券決済機関での名義書き換え部分のレイヤーが、丸ごとブロックチェーンに置き換わることで、情報伝達、コンファーメーションコスト等が大きく削減可能となります。

    なお、この場合、DVP決済(資金と証券の同時受け渡し)が実現できていないと、証券決済と資金決済にズレが生じることになりますが、資金決済のブロックチェーン化を待たずとも、エスクローの仕組みを利用することでDVP決済は実現可能と考えられます。

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  • リテール国際送金での利用
    仮想通貨、ビットコインを利用した国際送金サービスも登場してきています。
    仮想通貨を利用すると、送金情報に加えて“価値そのものを送る”ことができるため、銀行国際送金を利用する必要が無く、コスト削減効果が大きいと言われています。一方、送金人と受取人が仮想通貨をそのままの形で保有するのであれば、間に一切の中間業者が必要なく、ブロックチェーン上で相対(P2P)で取引は完了し、国境という概念を気にする必要が無くなりますが、これには仮想通貨が両国である程度一般的に流通するようになる必要があります。

    現状では、仮想通貨はそのまま保有するのではなく法定通貨に交換する必要があるため、送金元の部分で現金を仮想通貨に交換し、受取先の部分で仮想通貨を現地通貨に交換する必要が生じ、これが仮想通貨送金のコスト要因となります。さらに、主要国では仮想通貨と現地通貨の交換市場が形成されていますが、これがない国においては、別の国で仮想通貨を流動性の高いドルなどに一回交換し、再度現地マイナー通貨に交換する必要が出てくるため、手数料はそれほど安くならない可能性もあります。

その他の金融業へのブロックチェーンの適用アイデアは添付のPDF本文をご覧ください。

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この記事を書いた人

後藤 あつし
大手金融機関における市場リスク管理、信用リスク管理、流動性リスク管理、バーゼル規制対応等の長年の経験を有する。ビットコインおよびその技術であるブロックチェーンについては初期の頃から金融イノベーションに繋がる可能性を感じ調査・研究を行うとともに、主に金融の側面から関連事業者・団体への助言、各所記事や資料等の作成サポート、BTCNへの寄稿なども行なっている。

連絡先 gotoa123tアットマークyahoo.co.jp