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はじめに

ビットコインは、その仕組みを理解しないと、単なる“電子マネー”程度に受け止められてしまいがちで、世間の多くのコメントや批判も、仕組みについての理解が無いまま、イメージで語られることが多いのが現状です。

しかし一方で、仕組みを理解しようとしてみると、いきなり暗号やハッシュ関数など、IT技術や数学に詳しくない方には聞いたことがないような単語が並び、理解しようという気力を削いでしまうのが現状です(そしてその大部分が英語であるという点も)。

ビットコインをそのイノベーションの面白さから支持する人は、非常に先端的な技術の話をしがちで、基本的な仕組みを「分かりやすく伝えること」という点では十分であるとは言えないように思えます。

ここでは、難しくならないように、しかしエッセンスは十分伝わるよう、数回にわたりビットコインの仕組みを分かりやすく解説していきます。

なお、知らない人、初めての人にとっての理解のしやすさを優先したために正確性は犠牲にして簡略化・意訳した箇所が多々ある点はご了承をお願いします。

 

ビットコインの送金について

まず今回の第1回目では、ビットコインの仕組みのうち、「ビットコインの2者間での送金取引」の解説を行っていきます。

例として、「太郎から花子へ10ビットコイン送金する取引」をベースに話を進めていきます。

ビットコインは表記上BTCと記します。10ビットコインであれば「10BTC」という形になります。
円が¥、ドルが$という記号で示されるのと同じと考えてください。

まず、太郎が自分のビットコインウォレット(ビットコインを管理するお財布)にある10BTCを、花子の持つビットコインウォレットのアドレスに送ったとします。

figure1

この場合、花子のビットコインウォレットには、“即座に”「10BTCを太郎のビットコインアドレスから受け取った」と表示されます。

ここでのポイントは、以下の3点になります。

(1)ビットコインの送金においては「1NK8S4ep9ZUZ9H9AmTAfvrCVVAKLbpmi36」のようなビットコインアドレスで送金相手を特定する

(2)2者間のビットコインの送金は“即座”に行われる

(3)受け取ったばかりのビットコインは「未承認」という取引ステータスになる

それでは各ポイントを解説していきます。

 

ポイント(1)ビットコインアドレスによる送金相手の特定

ビットコインはインターネットの通信ネットワークを利用するため、世界中を相手に自由に送ること、受け取ることができます。

銀行で外国に送金しようとすると面倒な手続きを行わないといけませんが、ビットコインだと国境を気にしないで手軽に送ることができる点が魅力の一つです。

では、世界中の中から、どのように送金相手を特定するのでしょうか?

例えばクレジットカードでは、カード番号、契約者名、カード期限などで利用者を特定しますが、ビットコインでは「1NK8S4ep9ZUZ9H9AmTAfvrCVVAKLbpmi36」のような文字列のビットコインアドレスがこの役割を果たすことになります。

そしてこのビットコインアドレスさえあれば、相手が世界中のどこにいようともビットコインを届けることが可能になります。
インターネットでの「URL」をイメージして頂くと分かりやすいかもしれません。

氏名などの情報は不要で、このビットコインアドレスさえ分かれば送金できるため、ビットコインは匿名的であるとも言われます。

ではこのビットコインアドレスはどのように入手するのでしょうか?

これはとても簡単で、通常はビットコインウォレット(お財布)ソフト・アプリを入手すると、自分に1つのビットコインアドレスが割り振られることになります。長い文字列であまり親近感はありませんが、これが世界の中での自分のお財布を特定する情報となります。

ここで、他の人が自分のビットコインアドレスを使えるか?という疑問が出てきます。
クレジットカードであれば、カード情報を盗まれると不正利用されてしまいます。

この点については、1つのビットコインアドレスに1つの秘密鍵というパスワードが存在しており、この秘密鍵を持つものしか、そのビットコインアドレスにあるビットコインを送金することはできません。

秘密鍵はクレジットカード情報のように送金時に相手に教える必要はないので、クレジットカードのように、相手に教えたカード情報が流出するということはありません。

また、秘密鍵さえ分かっていれば、ビットコインウォレット(お財布)アプリを入れているスマートフォンが破損しても、別のPCなどからスマートフォンのアドレスにあるビットコインを操作可能であるため、秘密鍵の管理が非常に重要となります。

バックアップとしては、秘密鍵は文字列であるので、紙に書き残して管理しておくことや、ビットコインウォレット(お財布)アプリによっては簡単にバックアップデータを作成してくれるものもあります。

ビットコインアドレスは一定のルールに沿って作成されており、2の256乗という上限まで作ることができます。
上限があるとは言いつつも、その数は膨大であり、実際の利用を考えるとほぼ無尽蔵であると言えます。このため一人で複数のビットコインアドレスを所有することもできます。

なお、「1NK8S4ep9ZUZ9H9AmTAfvrCVVAKLbpmi36」のような文字列を送金する度に入力する必要があるため、QRコード化による簡略化がビットコインウォレット(お財布)では広く取り入れられています。しかし長い文字列に抵抗感があるという人も少なくないため、今後広く普及するには、この文字列をメールアドレスなど一般の人に親和性の高いIDに代替できるサービスが期待されています。

 

ポイント(2)2者間のビットコインの送金は“即座”に行われる

太郎が花子のビットコインアドレスに送金すると、花子のビットコインウォレット(お財布)には、“即座に”太郎のビットコインアドレスから10BTC送られたことが表示されます。

figure2

これは文字通り、インターネットの通信ネットワークを利用し、太郎のビットコインアドレスから、花子のビットコインアドレスへ「直接」送金情報が送られたためです。

通常の銀行送金などでは送金者と受取人の間には、銀行や送金サービス会社が仲介するため、営業時間にしか送れないなどの制限がかかりますが、ビットコインは直接送金者と受取人の間で送金が行われるので、世界中どこへでも24時間自由に取引可能という点が特徴になります。

この直接データを送り合う点をPeer to Peer、P2Pと呼びます。P2P自体は端末間での通信技術として一般的なものです。

 

ポイント(3)受け取ったばかりのビットコインは「未承認」という取引ステータスになる

10BTCを太郎から受け取った取引は、花子のビットコインウォレット(お財布)では最初「未承認」と表示されます。

figure3

花子は、太郎からP2Pの仕組みで即時に10BTCを受け取れましたが、それが「未承認」とはいったいどういう意味でしょうか?

まさにここがビットコインの最大の特徴となります。

少しここで脱線して「お金」についての話に移ります。

私たちが日常利用している銀行送金では、送金が行われたことの確実性は、銀行により保証されています。
A銀行から1万円送ったのに、送金先のB銀行が500円しか受け取っていないというようであれば、今のお金の仕組みは破綻してしまいます。

なぜ我々が銀行送金は正しく行われると信頼できるのかと言えば、銀行により中央集権的な送金ネットワークが厳格に維持管理されているからです。

一方ビットコインでも、誰かが「太郎が花子に10BTC送った」ということを確認し、取引履歴として保存しないといけません。

なぜなら、誰かが太郎の残高を見ておかないと、太郎は「花子に送ることに使った10BTC」を「美由紀送る10BTC」としても使えてしまうからです。

銀行送金の例では、1万円預金があり、その1万円をAmazonに送った後、同じ1万円を楽天に送ることはできません。
これはAmazonに送る時点で銀行が口座から1万円を引き落とし、残高を0と書き換えるからです。
ここで銀行が残高を書き換えなければお金がどんどん増えてしまい、社会全体で安心して「お金」を使えなくなってしまいます。
この「お金」に対する信頼を担保するために、銀行には適切な事務が行われることが期待され、様々な規制が課せられています。

これは「二重使用」の問題と言われ、お金がお金として信頼されるための大前提となります。

この「二重使用」をうまく防ぐには、銀行のような高度に管理された中央集権的な仕組みが必要であり、また、現在普及している電子マネーも管理会社による厳重な残高の管理と、資金決済法による規制で電子マネーが破綻しないよう金融庁からの監督を受けています。

「二重使用」の問題は大昔から存在しており、金(ゴールド)が「お金」として使われていた時代から人類を悩ませてきました。例えば、1コインに1オンスの金が含まれている金貨を受取り、他方で純度を0.5オンスの金に希釈したものを同額のコインとして支払いに使い、というような形で経済を混乱させた事例は数多くあります。

「二重使用」を防げない、仕組み上その可能性がある「お金」は歴史的に経済の破綻や大混乱を引き起こしてきました。銀行という仕組みは中央集権的にこの問題を解決する手段であり、中央集権的方法以外でこの問題を解決することは今までできませんでした。

ではビットコインですが、その送金はP2Pで「太郎から花子に直接」送られるため、花子に送られたことが分からない第三者に対しては、太郎はいくらでも「二重使用」が可能であり、ビットコインなんてすぐに破綻してしまうように見えます。

しかしビットコインはこの「二重使用」の問題を中央集権的方法以外の方法で非常にうまく解決したのです。

ビットコインは、銀行が中央集権的に行っている「残高の管理」(二重使用の防止)を、自由参加の不特定多数の人々による「維持管理ネットワーク」に任せることにしました。

このビットコインの「維持管理ネットワーク」は、組織ではなく、また、中心もいない、単に参加している不特定多数の人の集まりに過ぎません。

そんな人々に、銀行が行っているような重要な残高の管理を行わせてよいのか?と思われるかもしれません。

しかしインセンティブをうまく設計すること、インターネットという世界規模での通信ネットワークが発達したこと、個人での高性能コンピュータの所有が普及したという環境が整うことで、多数の人が自発的にそこに参加し、ビットコインの送金が行われたら、その残高に「二重使用」はないか、改ざんのない取引であるかを確認し、ビットコインのシステムを支える仕組みが実現しました。この仕組みこそがビットコインが「イノベーション」と言われる核心でもあります。
(この「維持管理ネットワーク」の仕組みは次回に解説します)

figure4

figure5

ではここで、花子が太郎から受け取った10BTCが、ビットコインウォレット(お財布)で「未承認」と最初表示される点に戻りましょう。

太郎からP2Pで花子に直接送られた10BTCの取引は、実は花子だけではなく、ビットコインの「維持管理ネットワーク」に対しても送信されます。

そして、「維持管理ネットワーク」で取引内容に「二重使用」がないか、改ざんがないかが確認されることになります。

この確認が行われている間、花子が受け取った10BTCは「未承認」という状態になるのです。

そして、「維持管理ネットワーク」で取引内容が適正と確認されると、花子に対し通知が送られ、花子のビットコインウォレット(お財布)の表示が「未承認」から「承認1回」に変更されることになります。

次回に詳しく解説しますが、この「維持管理ネットワーク」での確認作業は何度も行われ、確認回数が増えるほど、その取引の安全性は高まる仕組みになっています。

「維持管理ネットワーク」での1回の確認作業は10分必要となっていますが、「維持管理ネットワーク」側にまず取引内容が届くのに要する時間もあるため、もう少し時間がかかる場合もあります。

花子は、太郎から10BTCを受け取っても、「未承認」の状態では基本的に次の支払いに使用することができません。そして「承認」になって初めて他の人に送金可能となるのです。

figure6

例えば、知らない第三者が100BTCの改ざん・二重使用されたビットコインを送ってきた場合を考えてみます。

この場合、自分のビットコインウォレット(お財布)には100BTCの入金と表示されますが、その取引は「維持管理ネットワーク」で「承認」されることはないので、永遠に「未承認」の状態のままで、次の取引には使えないことになります。

受け取ったものの、いつまで経っても承認されないので、送られてきたビットコインが不正なものであったと事後的に分かることになる訳です。

しかし店頭などでお店がお客さんからビットコインで支払いを受けた場合、その場でしばらく承認されるまでお客さんを待たせ、払ったビットコインが不正でないかを確認するようなことはなかなか難しいことです。

この点が、ビットコインが即時決済にはあまり向いていないという批判の根拠となります。

ビットコインの店頭決済サービス提供会社などは、P2Pでビットコインを受取った時点で「決済完了」として処理し、事後的に「承認されない」不正ビットコインであった場合のリスクは決済サービス会社が負うことで対応している所もあります。

このようなリスクを負ったとしても、従来の「銀行営業時間だけ」、「クレジットカード保有者だけ」という限定的な決済の世界に、ビットコインが「インターネットさえ使えればP2Pで世界中と24時間いつでも即時決済可能」という利便性を持ち込んだ意義は非常に大きく、ビットコインによる決済サービスは世界中で広がりつつあります。

一方、通信販売会社やネットショップ等は、受け取ったビットコインが「承認」されてから商品の発送を行えばよく、これは「銀行送金の確認時間」に比べ短く、また直接ビットコインを受け取るので「クレジットカードでの回収リスク、不正カード利用リスク」もなく、革新的な利便性と言えます。

また、承認時間にかかる問題を解決し、ビットコインでの即時決済の確実性を高める取り組みもシリコンバレーなどの先端的な技術者達により行われており、将来はこの問題は解決されているかもしれません。

今回はビットコインの送金箇所の仕組みを簡単に見てきましたが、次回はビットコインの核心部分である、「維持管理ネットワーク」の仕組みについて解説を行っていきます。

この記事を書いた人

後藤 あつし
大手金融機関における市場リスク管理、信用リスク管理、流動性リスク管理、バーゼル規制対応等の長年の経験を有する。ビットコインおよびその技術であるブロックチェーンについては初期の頃から金融イノベーションに繋がる可能性を感じ調査・研究を行うとともに、主に金融の側面から関連事業者・団体への助言、各所記事や資料等の作成サポート、BTCNへの寄稿なども行なっている。

連絡先 gotoa123tアットマークyahoo.co.jp