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12月16日にLINEから決済サービス「LINE Pay」がリリースされた。
日本で非常に利用者の多いサービスが決済分野にいよいよ参入とのことで大きな注目を集めている。

LINE Payは送金や換金が可能という点で、従来の電子マネーの概念を超える非常にチャレンジングで、利用者にとって利便性が高い仕組みとなっている。

ここでは公表されている情報を元に、LINE Payの仕組みの分析を行い、Apple Pay、ビットコインとの違いを明らかにしていくことにしたい。

なおLINE Payについては12月20日時点で公表されている情報を元に筆者が推測したものであり、実際の仕組みとは異なる可能性がある点を十分ご認識の上お読み頂きたい。


 comp_line_apple_btc目次:

  1. LINE Payの仕組み

  2. Apple Payの仕組み

  3. Bitcoinの仕組み

 


 

LINE Payの仕組み

LINE Payは1つの仕組みではなく、以下の3つのサービスから構成されている。

  1. LINE CASH
  2. LINE Money
  3. LINE Pay(クレジットカード)

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(1) LINE CASH

LINE CASHは、従来のスイカやWAONに準じる本人確認不要の電子マネーであり、資金決済法における前払式支払手段となる。

●従来の電子マネーとの違いは以下の2点となる。

1.残高上限10万円までチャージ可能
従来の電子マネーのチャージ上限は5万円としている所が多かったが、これは印紙税法上、収入印紙税がかからないラインに抑えるためと言われていた。10万円としたことで、この印紙税の論点をどのように解決しているのかが注目される。

2.LINE Moneyから送金を受取ることができる
従来の電子マネーは自分でチャージした現金の範囲内で利用できるのみであったが、LINE CASHは、本人確認を行ったLINE Moneyから電子マネー残高の送金を受けることができる。
これは、本人確認済みアカウントから未確認アカウントに資金移動ができるということであり、最大10万円、現金への換金はできずLINE加盟店内での利用とはなるものの、従来の電子マネーには無かった点となる。

LINEは特に未成年者の利用が多いため、携帯端末で手軽に送金を受取れることから、未成年者への資金提供の手段とはならないか、頻繁な送金を繰り返した場合に課税の点ではどのように取り扱うのかという点をどう解決しているのかが注目される。

●その他LINE CASHの特徴は以下となる

  • チャージは銀行送金、ATM(Pay-easy)、コンビニ現金払いに加え、LINE Moneyからの送金を受けることでチャージ可能
  • クレジットカードではチャージはできない
  • 決済はLINE加盟店の支払いに利用可能
  • 他のアカウントへのLINE CASHの送金はできない
  • 現金への換金はできない

●保全

資金決済法上、前払式支払手段(電子マネー)の発行者は、発行者の破綻時に利用者を保護するために、発行金額の1/2の金額を、供託金として別途保全しておかねばならない。
規約上書かれている箇所は見つけられなかったが、LINE CASHも他の電子マネー同様この仕組みで保全されていると思われる(LINE Moneyに準じ、三井住友銀行の保証で代替している可能性もある)。

 

(2) LINE Money

このLINE Moneyが非常にチャレンジングな仕組みとなっている。

従来の電子マネーは資金決済法の前払式支払手段を、そのまま素直に仕組みにしたものであり、自分で事前に支払った現金を、電子マネーに変換、その後加盟店で利用するというものであった。
自己の電子マネーを、他の電子マネー口座に送金することはできず、一度チャージした金額を現金にして払い戻すことは、預り金規制との関連があり、原則不可とする運営が行われてきた。

しかしLINEは、会社として資金決済法における資金移動業の登録を行うことで、制度上送金ができる事業者となり、電子マネーの利便性を大幅に引き上げることを可能としている。

●LINE Moneyの利用開始

まずユーザーはLINE CASHの利用を開始し、そのうえで本人確認を行うと、自動的にLINE CASHが解約され、残高とアカウントがLINE Moneyに移行する。

資金移動においては犯罪収益移転防止法の点から本人確認が重要となることから、本人確認を行うか否かで、LINE CASHとLINE Moneyの2本立てのサービスに分離したと思われる。

本人確認の手法もユニークで、以下の2種類が用意されている。

1.従来の本人確認
免許証などの適格書類をアップロードし、その後記載住所へLINE側から郵便物を送付し、受取確認を行うことで本人確認を行う、一般的な確認方法となる。

2.銀行口座連動
この仕組みがユニークとなる。銀行口座は既に銀行により適切な本人確認が行われているため、LINEに銀行口座を登録させ、そこと連動させることで本人確認に代替する仕組みとしている。本人確認作業は手間も高いため、この部分を銀行にアウトソースさせる意味合いも大きいと思われる。三井住友銀行とみずほ銀行の口座が利用できる。

本人確認が完了すると、LINE CASHからLINE Moneyへ移行となり、以下の機能が利用できる。

●LINE Moneyの機能

  • 残高上限:なし
  • 1回チャージ上限:100万円/回
  • 引出し(換金): 上限100万円/回、出金手数料は216円/回
  • 他のLINE Moneyアカウントへの送金:上限100万円/回
  • 他のLINE CASHアカウントへの送金:上限10万円
  • 決済:上限100万円/回

チャージは銀行送金、ATM(Pay-easy)、コンビニ現金払いでチャージ可能であるが、クレジットカードでのチャージはできない

●保全

資金決済法上、前払式支払手段(電子マネー)の発行者は、発行者の破綻時に利用者を保護するために、発行金額の1/2の金額を、供託金として別途保全しておかねばならないが、資金移動業の規定では、決済額の全額を保全しないといけない。

この点LINE Moneyでは、自身で供託金を積むのではなく、三井住友銀行から保証を受けることでこれに代替している。つまり利用者は三井住友銀行の信用リスクを負っていることになる。

また、LINE Moneyは残高全額が決済資金として供託金の対象となるのか、どのように保証残高が特定されるのか、LINE側に過失があった場合に、保証額が減額されるなどの仕組みがないか、残高が大幅に増えた場合に三井住友銀行の与信供与枠を超過しないかなど、利用者保護のために保証契約内容についての開示が求められる可能性もある。

●LINE Moneyのポイント

  1. 残高上限が無く、現金への換金、他のアカウントへの送金も可能となると、実態として銀行預金に近い性質を持つと見られる可能性もある。この点、規約には「預金ではない」旨記載されているが、一時的な決済のための資金移動と言えるのか、資金滞留が相当程度の残高になると預り金規制との関連はどうなるのかなど、どのように法的な整理がなされているのか注目されるところである。
  2. もう一つのポイントは、資金移動者の1回あたり10万円を超える為替取引については、都度取引時確認(送金目的など)を行うことになるが、この点はどのように対応されているかも注目したい点となる。
  3. LINE CASH、LINE Moneyの規約を見ると、利用情報をLINE側がかなり広めに取得できる建付けとなっている。これは決済・購買情報を広く蓄積し、マーケティング情報として活用するためと考えられる。最近プライバシーの問題として取り上げられることも多くなってきているが、LINE Moneyでは送金情報も加わるため、どの程度の個人の履歴情報がLINE側に収集され分析・活用されるのかは将来論点となる可能性がある。

 

(3) LINE Pay(クレジットカード)

この分類は筆者が独自に行ったものであるが、LINE Payにおけるクレジットカードは仕組みの補足的な位置付けとなっているようである。LINE Payの仕組みは基本的にLINE CASH、LINE Moneyの2本柱が主であり、クレジットカードはチャージ手段からも除外されているように、主としては扱われてはいない。この理由は、クレジットカードはあくまでもカード会社の力が強いため、その影響力の外側に決済のインフラを構築したかったという思惑からであろうと推測される。

LINE Payにおけるクレジットカードは、LINE CASH、LINE Money と関わることが無く、決済時に支払い手段として利用するという、従来のカード利用と同じ仕組みのようである。規約などを見る限りにおいては、LINE上にカード情報を登録しておけば、決済の都度カード情報を入力する手間を省けるという程度のようである。この点、Apple Payの、カード会社と共同してカード情報のセキュリティを大幅に高める仕組みとは異なっている。


以上が、LINE Payの仕組みとポイントを公開されている情報から推測してみたものとなる。(あくまで筆者の推測である点にご留意頂きたい)

色々と書いてきたが、特にLINE Moneyは、消費者にとって不便な側面が大きい従来の決済システムに大きな革新をもたらす可能性がある。

例えば、個人間オークションで銀行振込をする場合、土日が間に入ると確認が遅れ、商品発送が遅れるケースが多かったが、多くの人がアカウントを持つLINE Payを使えば即時に決済ができるため、利便性が高まるなどのシーンが想定できる。

 

Apple Payの仕組み

ここでは参考にLINE Payと比較し語られることも多いApple Payの仕組みについて簡単ではあるが解説を行いたい。

Apple Payは当初仕組みの詳細が不透明であったため、決済に革新をもたらすというイメージが先行してしまったが、実際は「クレジットカード利用時のセキュリティ対策用のツール」という側面が非常に強く、決済に革新をもたらすようなものとはニュアンスが異なる仕組みになっている。

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●Apple Payが求められた背景

日本と比較し、アメリカではクレジットカードの不正利用が多発し、非常に大きな問題となっている。

クレジットカードは仕組み上、決済時に店舗側にカード情報を伝える必要があるため、そこで情報が抜き取られ、不正に利用されるということがどうしても発生してしまう。

後日抜き取られたカード情報で決済が行われると、正当なカード保有者は支払いを拒否するため、店舗側が損失を負担すること(チャージバック)が起こり、これが店舗とカード会社を悩ませていた。

●Apple Payの問題解決

Appleはこのカードの不正利用を解決することにiPhoneを利用することとした。

iPhoneはアンドロイド端末と異なり指紋認証による強固なセキュリティが実装されており、iPhone6からはNFC(近距離無線通信)による非接触型データ通信の仕組みも用意されていた。

そこで、Appleはカード会社(米国ではカード発行会社は銀行となる)と連携し、カード情報が抜き取られない便利なカード払いの仕組みを構築することとし、これがApple Payとなった。

●Apple Pay仕組み

  1. 利用者はまずiPhoneにカード情報を登録する。情報はAppleとカード会社に送られ、抜き取られても安全なカード情報を変換したコードの形で、iPhone本体の指紋認証でのみアクセス可能な場所に保存される。
  2. 店頭での決済時には、指紋認証でiPhoneのApple Payを起動し、それを店頭の決済端末に近づけると、カード情報ではなく、毎回異なる“トークン“というカード情報の代替となる取引特定コードが発行され、店舗側に伝えられる。店舗側およびカード会社はそのトークンを利用してカード決済を進めることになる。

このようにクレジットカードを取り出すことなく、iPhoneと指紋認証、そして情報を抜き取られても流用できない“トークン”を決済時に利用することで、カードの不正利用を大幅に削減できることとなった。

特筆すべき点は、セキュリティ対策という観点から、Appleは利用情報を一切取得しないとしている点であり、一般的にはマーケティング用データとして広く取引履歴データを取得する流れが大きい中、このような判断をしている点はいかにアメリカにおいてカード利用のセキュリティ対策が問題視されているかが伺える。

●Apple Payの手数料

Apple Payはカードの不正利用を削減する仕組みのため、カード会社は非常に協力的となった。そしてAppleは従来のカード決済時にカード会社が得ていた収益の一部を分配してもらえることになり、Apple Payの利用コストを追加的に利用者と店舗側に求める必要がなくなった。
これがApple Payの「利用手数料がかからない」という理由となる。

●日本においてApple Payは普及するか?

Apple Payの第一の意義は、カードの不正利用の削減にある。また、導入にはカード会社との連携も必要となるため、日本でその意義がどれほど評価され普及するかは未知数の部分が大きい。

Apple Payは決済の新しい仕組みではなく、クレジットカード決済の「改善」という位置付けと考えられるため、決済における革新性という点ではLINE Payに一歩譲る仕組みという評価になるであろう。

 

ビットコインの仕組み

ビットコインの解説については、ビットコインニュース内の他の記事で解説を見ていただくこととし、ここではLINE Payとの違いに焦点を当てて解説をしていきたい。

●管理者の点

LINE PayはあくまでLINEの発行する電子マネーであり、その管理はすべてLINEにより行われている。一方ビットコインは中央集権的な管理者がいないオープンな仕組みとなっている。

管理型のLINE Payの場合は、管理者による細かな対応ができる反面、維持管理コストが利用者に転嫁されることになる。

一方オープン型のビットコインは管理者がいないため不安という声も聞かれるが、セキュリティ面では高い水準にあり、維持管理コストを極めて低くできる利点がある。

●価値の裏付けの点

LINE Payは日本の資金決済法の枠組みで成立しており、裏付け資産が供託(LINE Moneyの場合は三井住友銀行による保証)で担保されている。

一方ビットコインは本質的に無価値であり、「利用者が増えること=価値」という本源的な交換手段という側面を持っている。

●決済・送金の点

LINE Pay、特にLINE MoneyはLINEアカウントを持つ人の間で自由に送金できる。

これまでこのような仕組みを持つ電子マネーはなかったため、小さな金額であっても銀行送金を手間をかけて行う必要があったことを考えると、その意義は大きい。
また、決済加盟店も、LINEの知名度を活かし今後大きく増えていくことが予想できる。

しかしあくまでLINEアカウントと加盟店の閉じた世界でのみ利用可能である点がポイントになる。

一方ビットコインは、利用したい場合どこかに登録を行う必要はなく、使いたければ世界中どこででもインターネットに繋がる場所であれば利用可能となる。

送金時も相手のビットコインアドレスさえ分かればよいため、手軽にどこへでも24時間、国境も気にしないで、0.0001ビットコイン(円換算で数円~数十円程度)の手数料で送金可能である。この点は先進国よりも金融インフラが未整備な途上国において特に大きなメリットになると考えられている。

●換金の点

LINE Moneyは従来の電子マネーではなかった、「現金への換金」を明確に打ち出している点が大きな特徴となる。

LINE上から216円/回の手数料で簡単に銀行口座へ振り込んでもらえるので利便性は非常に大きい。

ビットコインも現金への換金が可能であるが、若干手間が必要となる。方法は、店舗などが反復的に利用する場合は、決済サービス会社と利用契約を行い、受け取ったビットコインを即時に換金してもらうやり方と、ビットコインと現金を交換する「交換所」に口座を開設し、適切な本人確認を行った上で、都度換金を行う方法とがある。また、ビットコインは価格変動をするため、価格次第で換金時の価値が変わってしまう面もある。

●本人確認の点

LINE Moneyは本人確認を行うことでアカウント開設が行われる。

一方ビットコインの利用には本人確認は現状求められていないため、不正取引等に利用されるのではないかと言われている。

この点については、まずビットコインと現金を交換する交換所においては、世界的に本人確認を適正に行い、不正な利用者へビットコインを円やドルに換金して渡すことに歯止めをかけようという流れが出てきている。

また、一部の事業者間では不正な利用者とそのビットコインアドレス情報を共有化し、疑わしい取引を排除しようという動きも出てきている。

ビットコインは登場間もない世界的な技術であるが、本人確認という面での対策は今後進んでいくものと思われる。

●LINE Payとビットコインどちらが日本で普及するか?

従来の電子マネーとビットコインの比較においては、ビットコインの「送金・換金できる」という点が大きな利点として挙げられていた。

しかしLINE Payとビットコインにおいては「送金・換金できる」点での差異はなくなった。

LINE Payとビットコインの大きな差異は、LINE Payが既に広く普及しているLINEというインフラ上にあるものであり、利用者が導入する敷居が極めて低い点にある。一方ビットコインは知名度も低く、利用者を増やしていく労力が大きく、そのスピードでは LINE Payには及ばない。

LINE Payは、Apple Payを含む他の決済の仕組みと比較しても、日本においては急激に利用者が拡大する可能性があるのではないだろうか。

ビットコインはまだ登場間もない技術であるため、すぐに日本で広く普及するかは不透明な点が多い。特に日本では様々な金融インフラが手軽に利用でき、LINE Payのような仕組みも出てきたことから、ビットコインは数ある選択肢の1つでしかない。日本では個人での決済・送金手段よりも、企業間での海外との取引において、格安の送金手数料を活かした使われ方の方が進む可能性もある。

一方途上国など金融インフラが未発達で、銀行口座やクレジットカードの普及率が1ケタというような国では、ビットコインは手軽に導入できる強力な送金・決済ツールになり得るため、大きく普及が進んでいく可能性がある。

(参考比較表)大きいのでクリックし拡大してご覧ください

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この記事を書いた人

後藤 あつし
大手金融機関における市場リスク管理、信用リスク管理、流動性リスク管理、バーゼル規制対応等の長年の経験を有する。ビットコインおよびその技術であるブロックチェーンについては初期の頃から金融イノベーションに繋がる可能性を感じ調査・研究を行うとともに、主に金融の側面から関連事業者・団体への助言、各所記事や資料等の作成サポート、BTCNへの寄稿なども行なっている。

連絡先 gotoa123tアットマークyahoo.co.jp