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MITのデジタル通貨イニシアティブの責任者であるブライアン・フォード氏は、ニューヨーク州金融サービス局(NYDFS)が主導する仮想通貨事業ライセンス制度「ビットライセンス」が、産業の発展に重大な足かせとなりうる負の側面を抱えていると指摘した。

フォード氏や伊藤穰一氏は、規制自体を否定しているわけではない。ビットコイン事業を規制することは、産業の将来的な発展に大きく貢献する重要な要素であると彼はブログの上で述べている。

”正しく規制が行われた場合、デジタル通貨スタートアップへの投資は大きく促進され、新たな雇用が生まれ、消費者は安全かつ高速な最先端の金融サービスの恩恵を受けることができるだろう。”

NYDFS局長であるベンジャミン・ロースキー氏は、まもなくビットライセンスの暫定版を公開するとしている。ロースキー氏もまたブロックチェーンの可能性を認めており、最近itBitが銀行免許を取得したことにあたって「仮想通貨の背後にある技術については、非常に有望視している」とコメントを残している。

ビットライセンスは本当にイノベーションを促進できるのか

しかしながら、ビットライセンスはその重要な責務とは裏腹に、あまりにも大きなボトルネックを抱えているようだ。フォード氏はこの「重大な欠陥」、すなわち資金の問題に触れ、次のように記している。

”NYDFSは金融規制の先導者であることは間違いない。しかし、規制が施行されてしまえば、ビットライセンスの良い点も悪い点も関係なく、アメリカの殆どの州で模倣されてしまうであろうことが問題だ。もし模倣されてしまえば、アメリカ中のすべてのビットコイン企業は、規制による負担を抱え、最もうまく資金調達を行った企業のみが生き残ることになるだろう。そしてこれは、「サービスやプロダクトが優秀か」ではなく「大量の資金にアクセスできるか」で決まってしまう。”

いまのビットライセンスの枠組みでは、審査に5000ドル、その他折々の監査費用やセキュリティ投資が求められる。業種や提供するサービスの機能によって規制内容が異なるのではなく、ユーザーのビットコインを利用して何かしらのサービスを行うスキームそのものに仮想通貨ビジネス活動(VCBA)という定義がされているからだ。

これらは固定費となり、新米のスタートアップに重くのしかかってしまう。フォード氏は、この問題の根本的な要因となる4つの懸念について意見を述べた。

規制はひとつの州だけの問題ではない

1. NYDFSは現在、システムアップデートについての情報提出と承認を要求している

フォード氏はこの問題について、ニューヨーク州および米国市民の便益が損なわれると主張した。

”企業は恐らく、NYDFSの認可が降りるまでニューヨークの市民に新たな機能やセキュリティを提供することはないだろう。そして、米国はビットコインの分野で他国に後塵を拝することになる。”

ビットコイン企業はその技術の特性から、基本的に最初からグローバル展開を視野にいれていることが多い。メジャーな企業は既に2カ国以上に海外展開しており、規制が問題でニューヨークでアップデートが配信できなかったとしても、他の国で配信することは理論上可能だろう。事業者をコントロールしたいからといって無闇に介入することは、単にユーザーの便益を損ねるだけであるということをフォード氏は述べている。

2. 企業の株式の10%以上を投資家に割り当てる際、州の認可が必要である

これは、ひとつの州だけならそれほど問題ではない。しかし、前述したように他の州が規制を模倣した場合には面倒な問題となる。フォード氏は、「ニューヨーク州の認可が必要だということは、50州で同じ規制が適用された場合、50州の認可を得なければならないということだ。スタートアップは少なくとも、新たな資金調達のために12ヶ月以上待たされることになるだろう。」と述べた。

3. 二重規制の問題

現在、NYDFSは仮想通貨事業者に対して規制しようとしているが、おそらく実際に業務を行う場合、二重規制に掛かる恐れがあるとフォード氏は指摘する。すなわちビットコインスタートアップは、仮想通貨を扱うためにビットライセンスを、さらに現金を扱うために資金移動業の免許を取得しなければならない可能性が極めて高い。

4. ウォレットアプリの開発者は規制対象にすべきでない

「ウォレットアプリはインターネットにおけるISPのようなものだ」とフォード氏は語る。曰く、「ISPと同様に、ウォレットはお金の移動をするための資産のコントローラーであり、開発者は仮想通貨の反政府的利用や資金洗浄の可能性のある取引情報を提供できる」と述べた。


筆者としては、ビットライセンスに関して、少なくともカリフォルニア州のビットコイン規制案よりは安全であり、負担もそれほど多くないという認識だった。しかしながら視点を広げてみると確かに、一筋縄ではいかない問題を多く残しているようだ。米国は州ごとに法律が異なる特殊な環境をもつ国であり、日本とは状況が異なるため、この問題を日本に当てはめることは難しい。

しかし、フォード氏が述べたようにビットライセンスには良い面も悪い面もあり、仮想通貨事業を容認する世界初の規制であるため、世界中の政府はこれを元に枠組みを構築していくことになる可能性は高い。ビットライセンスの最新版はどのような形になるのだろうか。今後とも情報を追っていきたいと思う。


参考:
MIT Media Lab Digital Currency Initiative

ビットライセンス関連記事:
2015/04/27 – カリフォルニア州のビットコイン法案がアップデート、小規模ビジネスは壊滅的
2015/04/17 – NYDFSが主導するビットライセンス、まもなく確定へ
2015/02/06 – NYDFSが主導するビットコイン事業者ライセンス「BitLicense」の最新バージョンがリリース
2014/12/4 – NYDFSがBitLicenseへの3,746件の提言書を公開:AmazonやWalmart、WesternUnionも
2014/10/22 – ビットコイン規制の枠組み「BitLicense」が与えるビットコインへの影響

この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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