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今年に入ってから、ICO(イニシャル・コイン・オファリング)と呼ばれる仮想通貨を使った新たな資金調達がブームと化している。ICOとは、新規株式公開(IPO)になぞらえ、株式の代わりにコインを公開して資金を調達することを指す用語である。

たった今も、35を超えるICOプロジェクト(ICO Countdown)が同時に計画・進行し、2017年を通じては、既に合計78のプロジェクトが9億ドル弱(888MM$)相当の資金を集めた。そのうち半数以上を占める5億ドルは、6月の一ヶ月間だけで達成している。

ICOの統計サイト「Coinschedule」によれば、2017年に最も成功したICOプロジェクトはバンコール(Bancor)だ。バンコールは1.53億ドル(ICO全体の17%)を、開始からほんの3時間で集め、「The DAO」を上回る調達額として注目を集めた。

それだけでも注目だが、その後「EOS」のICOが始まると、バンコールを遥かに上回る額を調達。EOSはICOの開始前に香港の取引所Bitfinexで上場し、その後Krakenでも取扱が開始されている。時価総額ベースでは、驚愕の8億ドルにも上ると推定される。EOSの運営者が受け取ったEtherは、トータルで4億ドル相当になるとも言われる。

バンコールは1.53億ドル(ICO全体の17%)を、開始からほんの3時間で集めている。ドル換算では、昨年行われた「The DAO」のICOを上回る、史上最多の調達額だった。

2014年頃には、独自のブロックチェーンやビットコインのセカンドレイヤー技術「Counterparty」「Mastercoin(現Omni)」を使ったICOが主流だったが、現在はほとんどの場合、イーサリアムのブロックチェーンを用いてコインを発行する。これは、独自でICOのためにプラットフォームを開発する必要がなく、イーサリアム上で過去に行われたICOプロジェクトの「コントラクト・コード」を流用することで、誰でも簡単に発行できるようになったためだ。ICOブームの火付けの一因には、こうした技術の発展によるところもある。ERC-20と呼ばれるイーサリアム・トークンの発行規格を用いれば、ウォレットを選ばず取引所もすぐにコインを扱うことが可能だ。

ICO資金、どこから

しかしながら、ICOで資金を集めるには流入する資金が必要だ。

9億ドルといえば、日本円に換算すると1000億円を超える額である。ICOの基軸通貨であるイーサ(ETH)が今年に入り、10倍近くまで値上りしたこと(時価総額ベースでは、2.5兆円が新たに発生した)を鑑みれば、単に市場原理とも解釈できそうだが、おそらくETHの値上がりだけで理由をすべて説明することはできない。もちろん、ETHの値上がりがICOの火付け役になったことは間違いないが、それ以上に「ICOのライフサイクル」が影響してくる。

ICOプロジェクトは一般に、次のフローを踏む:(1)プロジェクトサイトとホワイトペーパーを公開、(2)ICO紹介サイトに宣伝、(3)ICOによる公募開始、(4)ICO終了とコインの配布、(5)取引所への上場、(6)プラットフォームのローンチ。

この時、公募の前段階(1〜2)で「プレICO」と称し、限定された投資家にコインの交換レートをディスカウントして募集することもある。ICOはほとんどの場合、公募開始から終了までの期間が短く、そしてコインが配布されると、それをユーザーがどう利用することは自由だ。プロジェクトがローンチするまで、そのコインに投機以外の使いみちはない。

ICOのライフサイクルで重要なのは、(3)から(4)、そして(4)から(5)までの期間が異様に短い点だ。取引所への上場は最短一週間で行われ、ICO参加者は参加時点よりも高い価格か同程度の価格で売りを出す。ICOで多額の資金を集めたことで興味を持ち参入してきた新たな投資家が、取引所で売り出されたコインを購入する。すると、売り抜けたICO参加者は、次のICOに参加するための軍資金を得ることができる。すなわち、人気のICOをサーフィンし、上場したら売り抜ける、ということを繰り返すだけで雪玉転がしのように資金が膨れ上がっていく(という幻想を誰もが抱えている)のだ。こうした波乗り行為がICO全体の資金を高速回転させ、投資額を肥大化させている点は実に興味深い現象と言えるだろう。見方によっては、新しい市場が高速で流通する資金をもって、急速発展するドライバーになっているとも捉えられるからだ。

今のところ、ICOの成功からプラットフォームのローンチに結びついた事例は極めて限定されており、全体として成功と値上がりへの期待感だけがマーケットをドライブする要因となっている。もちろん、オンラインで完結し求める者に多額の資金が集まるというICOの利便性には、従来の金融の役割を根底から覆すような能力がある。しかしながら、リスクを理解せずにICOに参加する人々が、将来的な市場の冷え込みに向けた覚悟を持っているかという点には首を傾げざるを得ない。


追記:引用元のデータは6/24付であり、最新のデータを反映していないとの指摘があったため、追ってEOSの事例を追記しました。

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この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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