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本稿は、ブロックチェーン技術による分散型の共有クラウドストレージ「Sia」の開発に携わるDavid Vorlick氏のブログを翻訳したものです。同氏はSiaのCEO兼リードデベロッパーであり、先月にはSiaのβ版をリリースしました。

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シェリング・ポイントとは、複数人がコミュニケーションを取らず、また事前情報がない状況下で同一解を得たい時、何かしらの「メタ情報」を頼りに導かれる最適解のことを指す。例を挙げよう。あなたは明日、ニューヨークで知らない人と会う必要があるが、連絡先や場所などの手がかりが与えられていない。トーマス・シェリングが行った実験では、人々は一般的に「グランドセントラル駅の案内所」を選ぶということがわかった。案内所は、一般に待ち合わせ場所として広く知られているため、シェリング・ポイントである。

2014年3月、Vitalik Buterinはビットコインの価格など、外的なイベントをブロックチェーンに通知するための方法として、シェリング・ポイントを利用したアイデアを示した。価格は、本質的には取得できず、ポータルのいくつかを介することが要求される。ポータルを作成するために考えうる方法のひとつは、すべての参加者に価格を提示させ、同じ価格であることにインセンティブを持たせるよう設計することだ。コインの価格は実際の価格に近似し、そしてシェリング・ポイントになると考えられる。真実に向かう目的のもと、システムは常にひとつの真実を導き出すだろう。

しかし残念ながら、これは、具体的な案に落とし込もうとすると破綻し始める。シェリング・ポイントは、本質として主観的なものであり、当事者間のコヒーレントによらず、絶対に確かであると自信を持って選択できるものでなくてはならない。例えば、3月1日時点でのビットコインの価格を明らかにする時、あなたは何時の価格を選択するだろうか? 午前0時? 正午? タイムゾーンは? 一部の人々にとっては、UTCがシェリング・ポイントであるため、UTCを選択するだろう。しかし、その他の人々はニューヨーク証券取引所の開場時間であるESTの午前10時を選択するかもしれない。さらに、一部の人々はCoinbaseの価格を参考にするかもしれないし、その他の人々は取引所の平均価格を参考にするかもしれない。また、取引所がひとたび不安定な挙動を示せば、人によって異なる価格が表示されることもあり、あるいは、取引所が不正を行う可能性もある。

シェリング・ポイントはまた、別の問題も抱えている。ニューヨークで落ち合うことを考えた場合には、待ち合わせ場所に複数の選択肢があるためだ。ニューヨークにはエンパイアステートビルがあるし、自由の女神像もある。実際に特定の人と会うことを条件とした実験が行われた際には、参加者の多くは成功までに何日も掛かったという。

Buterinの記事で言及された例においても、同様に問題を孕んでいる。

あなたと他の囚人が別々の部屋に収監されていると仮定し、看守があなたともう一人の囚人に、異なる数桁の数字が書かれた一枚の紙を渡した。それぞれが同じ数字を選べば釈放される。ゲーム理論において人権は度外視されるため、間違った数字を選択した場合は一生を独房の中で過ごすことになる。数字は次の通り:

14237 59049 76241 81259 90215 100000 132156 157604

私にとって、答えは数字を見る前から明白のように思えた。一番最初の数字を選ぶのだ。事前情報がない状況では、もう一名が同じ戦略を取ることを祈るしかない。私の共同創業者は、最も小さな数字を選ぶのが最適だろうと言った(この場合、数字はソートされているため、結果として私と同じ解である)。Buterinによれば、渡される数字がランダムな可能性があるため、「”100000”がもっともらしく、正しい解」だと述べている。さて、我々3人はそれぞれシェリング・ポイントを決定するために、3つの異なるアプローチを取ったことがわかるだろう。国境や文化を超えれば、方法論はさらに変化することになる。

一般的な予測市場では、人々はビットコインの価格や選挙の結果など、将来の事象に対し入札する。人々は、潜在的な可能性に基づきシェアを売買し、最終的に、一方が経済的なリターンを得、もう一方のシェアは無価値になる。具体例として、「ドナルド・トランプが2016年大統領選に勝利する」と、「ドナルド・トランプが2016年大統領選で負ける」のふたつのシェアを賭ける予測市場を考えてみよう。選挙の終了時には、当てた方はシェアを$1で売る権利を獲得し、外した方は権利を失う。投票においては、何が起こったかを周知することが容易であるため、それらのシェアは公平に分配することができるのだ。

イベント結果の合意に関して3つの落とし穴がある:

  • イベント自体が完全に指定されていない。例えば、「2016年1月1日、午前0時のビットコインの価格」というお題では、タイムゾーンの指定と参考価格に使う取引所が指定されていない。
  • イベントは操縦に対して脆弱性を持つ。例えば、価格は財を得たい何者かによって価格操縦される可能性がある。あるいは、取引所自身が結果をコントロールするために不正な価格を表示する可能性がある。
  • イベントを公的に立証することは難しい。例えば、「2015年において、NY州の警察官は40万台の車両を検挙する」というお題では、警察発表による検挙車両数の正確な値が書類化され公開されていない限り、立証は不可能だ。

良いイベントは、条件を完全に指定し、立証可能であり、操作が難しいものでなければならない。例えば、「2016年大統領選の勝者」は結果が誰にでも明らかであり、良い例と言えるだろう。選挙は公平性を保つため、厳重に管理されていることから結果を操作することも困難を極める。選挙結果に関しても、世界中の、多数の異なるソースから配信されることから、確認も容易だ。世界人口の大多数が、自信を持って結果を報告できる環境がそこにあるのだ。

こうした3つの要素は、予測市場のようなプラットフォームを構築するための基盤を形成する。この基盤がなければ予測市場は混乱し、操作され、悪用の対象となるだろう。いささかトリッキーだと思われるような事象であっても、イベントは常にすべての条件を満たす必要がある。

考えの甘い、あらゆる予測イベントに紐付く落とし穴を念頭に入れて置くことが、社会を分散的な予測市場の領域に持ち込むための最も重要な要素だと言えるだろう。


出典: sia – Schelling Points, Prediction Markets, and Consensus

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この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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