LINEで送る
Pocket

rakuten-conference-bitcoin

(BTCN) 日本では初めてとなる大規模FinTechイベント楽天金融カンファレンス2015が、2月23日に行われた。テーマは「ITの進化が生み出す、新たなファイナンスビジネスの胎動」。とりわけ興味深く、衝撃的だったのはほとんどのセッションでビットコインを示唆する発言が多く見られたことだ。

楽天は昨年8月には米法人Rakuten Super Logisticsがビットコインを採用、10月には今回のカンファレンスにも登壇したビットコイン決済代行サービスを提供するBitnet社の資金調達ラウンドにも参加していた。

 

楽天のビットコイン採用はあるか

三木谷氏は楽天へのビットコイン決済導入について、時期は企業秘密であり、「優先度は低いが採用する意思はある」と若干はぐらかす形で答えた。しかし、PayPalやビットコインを含む新しい決済技術は導入コストが小さく、楽天市場には簡単に実装可能であり、将来的にそうする必要があることを付け加えた。

Bitnetへの投資および業務提携には間違いなくなんらかの目的があると踏んでいるが、コメントそのものは昨年7月に示唆されていたものとあまり変化がないものだった。

また、PayPal創業者兼CEOであるピーター・ティール氏は、ビットコインを「ブレークスルー」であると表現した。しかしながら、ティール氏はまたビットコインに対する複雑な心境を吐露している。PayPalは元来グローバルな通貨として利用されることを目指して創設された企業だが、実際には新しい形のトークン決済サービスとして大成功したからだ。

“ビットコインはすばらしいブレークスルーだよ。でも、成功するとはあまり思えない。”

さらに、現在のビットコインの状況は想像を超えて良い状況であると語った。

“驚くべきは、当局からあまり警告をうけていないことだね。むしろ好意的なくらいだ。受け入れられている。”

この状況は、ビットコインのブロックチェイン技術の根本的な特性がもたらしたものであると言ってもいい。ブロックチェインが何かという点については、次の項で野口悠紀雄先生の言葉を引用して説明する。

また、ティール氏は最近のバズワードとなっている「Disruptive」という言葉に対しては懐疑的であるという。既存産業を革新的な仕組みで破壊するという意味で用いられるこの言葉は、ビットコイン業界でもよく使われているが、ティール氏は音楽産業を破壊したナップスターを例に挙げ「確かに産業を破壊したが、成功したとは言えない。」と語った。

 

ビットコインの有用性:科学的な視点から

IMAG0332セッション2「ビットコインの台頭」では、仮想通貨革命の著者である野口悠紀雄氏、Bitnet CEOであるジョン・マクドネル氏、JADA顧問弁護士である斎藤創氏が登壇しビットコインの有用性と課題、未来についてパネルディスカッションを行った。本来であればXapo CEOであるウェンセス・カサレス氏も登壇予定であったが、フライトの都合により欠席した。

野口氏の説明は非常にわかりやすく、ビットコイン産業に関わる者としては誰もが見習う必要があると感じる一幕であった。

ブロックチェインは石版のようなもの

多くの人はビットコインが中央管理機関が存在しない、プログラムに基づいた通貨だということは理解していることだろう。しかし、ではブロックチェインについてはどうだろうか。

「ブロックチェインは楕円曲線暗号に基づく署名をハッシュ関数により分散的に検証した取引の連続的な集合」と説明したところで誰も理解しない。これを 野口悠紀雄 氏はとてもわかりやすい言葉で説明してくれた。

“(要約)例えば関口さん(モデレーター)から何かを買って、私が1BTCを送るとします。するとここに大きな石があって、私が関口さんに1BTC送りましたと刻み込むんです。石に刻んだら消したり書き換えたりは出来ないですよね。そしてビットコインの送金をするときに見るのは自分の財布ではなく、取引の内容を刻み込んだ石なんです。そうすれば、誰かがポケットから偽のビットコインを渡して「支払いました」ということはなくなる。石に誰から誰へと取引を行ったという正しい記録が残っているから、不正しようがないんです。これが、ブロックチェインです。”

取引所破綻の誤解

また、マウントゴックス破綻の誤解についても、技術的な言葉を使わずに説明した。

“ビットコインとマウントゴックスの関係というのは、ドルと空港の両替所の関係と同じなんです。空港に降りて、両替所が閉鎖されててもドルが破綻した!とは言わないでしょう?”

科学的な難問を解決した偉大な仕組み

また、野口氏はさらにビットコインの科学的な観点から見た革新性についても説明した。科学的な観点でいうと、ビットコインはビザンティン将軍問題の初めての現実的な解法である。ビザンティン将軍問題とは、お互いに信用できない不特定多数の参加者で合意形成をどのように行うかという分散システムの問題である。

ビザンティン将軍問題:「ブロックチェインの革新とはなにか」を改めて考えてみる

ビットコインの誕生以前はこれは現実的には不可能だといわれていた問題で、サトシナカモトなる人物によって解決されたことでこれまで実現が難しかったことがいきなり可能となってしまった。これを解決したサトシナカモトはまさに天才であり、科学の発展に大きく寄与した人物であると言っても過言ではない。今回のカンファレンスでは触れられなかったが、現に、ブロックチェインのトランザクションに電子契約の情報を組み込み分散的に契約を処理するスマートコントラクトと呼ばれるまったく新しい分野のテクノロジーの研究開発が急激に進んでいる。2.0及びスマートコントラクトとして有名なところでは、Ethereum、Codius、Maidsafe、StorjSidechainsColoredcoin、Counterpartyなどがある。

 

ビットコインは規制できるのか

session2_rfc2015また、税の問題など当局に対してどう働きかけるべきか、という問いに対して、野口氏、マクドネル氏はそれぞれお互いに「どうしようもないだろう」と答えた。これはビットコインには運営主体が存在せず、規制しようとしても規制対象がないからだ。

さらに、税についても深刻な問題が生じる可能性があるという。野口氏はビットコインの取引は追跡が難しく、すべてを把握することが出来ないためその取引から税金をとることが出来ない可能性があることを指摘した。また、野口氏はこの問題に対しては、社会の制度そのものをビットコインに合わせて変えるべきであると主張した。

詳細に触れることはしなかったが、具体例としては、直接税ではなく外形標準課税に変更することを示唆した。

一方で、マクドネル氏はビットコインのブロックチェインは完全に透明な元帳であり、当局は取引のひとつすら漏らさず追跡可能であると主張した。ビットコインは匿名性の高いデジタルマネーといわれることも多いが、その一方で現金ほどの匿名性はなく、システム的に匿名性はないことを指摘する者もビットコインコミュニティの中には多い。

斎藤創氏もまた、ビットコイン取引は透明なため、税務上では理論的には問題ないと述べた。また、規制のかけすぎが利便性の高い革新的な技術を潰してしまうことについて懸念を示した。現状、日本政府はビットコインに対して自主規制を求めるだけであり寛容なため、それほど問題が顕在化しているようには見えないが、実際には税制面で既に一つの問題に直面している。

“ビットコインの売り買いに消費税が掛かるかどうかという問題があり、現在は税務当局に掛かると言われています。他国では消費税が掛からない国が多いため、遅れています。今の税法の取り扱いでは、確定ではないがビットコインの売買にそれぞれ消費税が8%掛かってしまう可能性があります。”

 

楽天銀行の対応に対する斎藤創弁護士の質問

三木谷氏、ティール氏への質問時間が設けられた際、JADA顧問弁護士である斎藤創氏が、ビットコイン関連企業が抱えている重大な問題について、三木谷氏へと鋭い問いを投げた。

“銀行口座の開設をビットコイン関連企業に許さないそうですが、これは何故なのか。規制面の問題なのか。”

これに対し、三木谷氏は銀行がさまざまな制約に縛られており、今すぐに快諾できる問題ではないと答えた。

“どの国でも同じだろうが、どうしても慎重にならざるを得ない。当局からの規制のプレッシャーがあるというわけではない。ただ、楽天に関していえば銀行ではないため、色んなことを試したい。ビットコインのプロトコルもそうだし、デジタルマネーの技術を取り入れてみたい。”

 

まとめ

金融のIT化と、近未来技術実証特区

日本では初めての試みとも言えるFinTechの大規模カンファレンスは、さまざまなペイメントプロトコルにふれた上で、日本が抱える岩盤規制構造に大きな改革を必要とすることを認識させる興味深いものだった。

特に興味深いトピックとしては、竹中平蔵氏が基調講演において触れた、医師の利権によって数十年間医学部が新設されていない状況や、三木谷氏が触れた東京証券取引所の前時代的な営業時間などがあった。これらの効率的ではなく、遅れている規制構造はビットコインの採用にも密接に関わってくる問題であり、規制改革なくして技術革新はないのだと改めて認識させられた。

また、竹中氏は平将明副大臣と小泉進次郎政務官が推進する「近未来技術実証特区」を強く支持しており、恣意的な見方をすれば、オーストラリアで今まさにプロジェクトがスタートしているビットコイン都市を日本でも実現できるかもしれないということだ。

ビットコインが普及する未来が見えてきた

ビットコインのプロトコルを語る上で、ブロックチェインを外して考えるのは難しい。ペイメントの最先端を行く人々が皆、ビットコイン専業企業ではないにもかかわらず、表面的な技術だけでなくブロックチェインをよく理解しているであろうことは期待していたことではあるが、想像を超えたものだった。日本国内では未だにマウントゴックスから離れられずまだまだ地位は低いが、海外においては最先端の技術として、影響力が拡大していることをはっきりと認識できた有意義なものだった。

願わくば、今回のカンファレンスに参加した500人の心のなかに明確にビットコインが刻み込まれたであろうことに期待したい。これで、ビットコインが投機商品と見られる段階から、ブロックチェイン技術を用いた効率的なペイメント手段として見られる段階へと移行したことだろう。

ビットコインに関わる者として、このような場を設けていただけることはとてもありがたいことだ。野口悠紀雄氏もコメントしていたが、楽天のような既に信頼が築かれている大企業がビットコインを採用すれば、日本におけるビットコインのイメージは大幅に改善され、急激な普及が進むようになることだろう。来年も開催され、ビットコインが取り上げられることにも期待したいが、その時にはもう一段階、あるいは数段階先を行くスマートコントラクトや、ブロックチェインテクノロジーを活用した新しい仕組みに触れられればと思う。

この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
monacoin:MTn7hiNovBHyN7gjtvD1Hh7W96Zmghp41B
bitcoin:1NK8S4ep9ZUZ9H9AmTAfvrCVVAKLbpmi36