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7月26日、東洋経済とスマートコントラクトジャパンが主催する、日本では初めて「Smart Contract Conference 2016」が開催された。協賛は日本マイクロソフトやConsenSys、ガイアックス、PwCコンサルティングなどだ。

スマートコントラクトと銘打たれているとおり、本カンファレンスは全編に渡ってブロックチェーン上のアプリケーションであるスマートコントラクトに焦点が置かれた。インフラに近いブロックチェーンではなく、アプリケーション層の活用例を提示することでビジネスにインパクトを与えたい。そんなメッセージが感じられるカンファレンスだった。

さて、スマートコントラクトをひとことで言い表すならば、ブロックチェーン上で動かすことのできるプログラムだと言える。送金や決済、認証、その他の複雑な作業を公開された/限定公開されたブロックチェーンの上で動かすことで、透明性を担保しつつ、取引を自動的に執行できる。

「今後、10~20年でスマートコントラクトは破壊的な作用を及ぼすだろう。今行動を起こさなければ、誰もが破壊される側に回ることになる。」

そう切りだすのは、米NY発のブロックチェーンカンパニー、ConsenSysのCEOを務めるジョセフ・ルービン氏だ。ConsenSysはおよそ2年ほど前に立ち上げられたスタートアップで、世界中に100名を超えるブロックチェーン・エキスパートを抱えている。同社はこれまでに多くのEVMライブラリや、本人認証システム『uPort』、三式簿記会計システム『Balanc3』などスタンドアローン型DApps、その他インフラサービスの開発を行なっている。昨年10月にはMicrosoftが同社のクラウド「Microsoft Azure」にBlockchain as a Service(BaaS)としてスマートコントラクトSDK『STRATO』を導入した実績も持つ。

ルービン氏は、従来のレガシーな技術を使ってもできないようなことがブロックチェーンでは実現すると強調した上で、その上で動くスマートコントラクトがどのようなインパクトを与えるか説明した。

「金融機関がグローバルなデータベースを作ろうとしても、それがレガシーである限りは失敗するでしょう。」と、ルービン氏は従来技術の限界を指摘する。「過去にも、音楽業界が何百万ドルを投じてワールドワイドなデータベースを作ろうとしたことがありました。しかし、データを誰が持つかというところで躓き、失敗しています。」

ブロックチェーンであれば、参加者を限定するコンソーシアム・ブロックチェーンを用いることでデータベースを共有することができる。Cassandraのような緩い整合性を持つ分散型データベースをもし共有できたとしても、それぞれの組織が別々の管理アプリケーションを持っている以上、各々で更新したバージョンのどれが正しいのかを常にすり合わせる必要がある。これを、従来のシステムで実用化することは極めて困難だとルービン氏は述べた。

「ブロックチェーンのおかげで、世界で初めて分散型のパブリックデータベースが作れるようになりました。このインパクトは計り知れません。銀行やGoogle、Facebookに頼らず身分を証明することができるようになります。そして誰もが中央システムに依存せず、グローバルな経済に参加できるようになります。さらには三式簿記も実現することができます。リアルタイムで企業のさまざまな取引の流れを分析できるようになり、コンプライアンスコストも劇的に削減することができます。」

コード自体がカネを持つことへの不安

しかし、スマートコントラクトを実用化するには大きなハードルがある。ブロックチェーンをパブリックなデータベースという観点で見ると、そこにアクセス権を持つ利用者のマネロン対策やテロ資金調達対策、KYCは法制面において特に重要だ。

スマートコントラクトは契約そのものではないが、金銭や権利の移転を伴うことが多く、利用者と提供者の間の合意が必要になる。その場合、提供者の意図しない利用者が現れた場合に問題が起こるというわけだ。

コーポレートガバナンスをスマートコントラクトを用いて自動化し、「企業をアナログからデジタルへ」を掲げるスタートアップ、Otonomosの開発主任を務めるマノ・タナバラン氏は、「スマートコントラクトの実用には、KYC/AMLの問題が多く残されている」と指摘した。

また、鍵の保管にも論点が残る。ブロックチェーンは一般的に公開鍵暗号方式による公開鍵、秘密鍵を利用しており、分散データベースに書き込むには秘密鍵を用いた電子署名が求められる。したがって、システムに保持される秘密鍵が盗まれてしまうと完全にアクセス権を奪われてしまうことに繋がる。

これに対して、マイクロソフトのディレクターを務めるマーレー・グレイ氏は、「キーマネジメントは難しい問題だが、当社はHSMベースのキー・ヴォルトを採用しており、Microsoft BaaSではキーをセキュアに管理しやすい」と述べた。また、ConsenSysの事業開発長を務めるアンドリュー・キース氏によれば、今後企業がブロックチェーンを活用する際には、専用のハードウェアデバイスを用いて鍵を管理していく方針がとられるだろうと予想した。

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ブロックチェーンのガバナンス

本カンファレンスでは、イーサリアムのハードフォークの話題にも触れられたのが収穫だった。質問を投げかけたのは、GLOCOM研究部長兼主幹研究員である高木 聡一郎氏だ。

これに対してルービン氏は、「基本的にはアプリケーションの脆弱性をインフラでカバーすることはしてはいけない。」と前置きした上で、しかしながらPoWからPoSへの移行やコミュニティの後退を考えた結果、「ファンデーションは今後のイーサリアムに良くない影響が出ると判断し、ガンの根本を取り除こうと考えたのではないか」と語った。

「ビットコインでもしどこかの取引所や企業が誤ってビットコインを盗まれたとしても、ハードフォークは絶対に起こらないでしょう。それはビットコインがお金だからです。イーサリアムはアプリケーションのプラットフォームであり、そこがビットコインとは根本的に違うところです。」

また、マイクロソフトのマーレー・グレイ氏は、「今回の事件とその後の対応は、コンソーシアム・ブロックチェーンの青写真になる可能性がある」と、27日間で重大な問題に取り組んだファンデーションを賞賛した。「対応は完璧だった。網羅的に手が打たれていた。これは企業が今後ブロックチェーンを運営する上で、事前に学ぶべき良いプラクティスになるはずだ」

The DAO

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The DAOを開発したSlock.itのCTOを務めるクリストフ・イェンチ氏は残念ながらこのパネルには登壇していなかったが、個別スピーチの中でThe DAOの概要や、問題への対策方法などを語ってくれた。

The DAOは分散的な合意形成を目指しつつも、攻撃者からの攻撃に対抗するためいくつかの制約が掛けられていたとイェンチ氏は言う。それが、「Split(DAOの分岐)に対する7日間のロックアップ」「14日間のプロポーザル期間」「Split後の27日間の引出し等制限」だ。

しかし、これだけでは不完全だったとイェンチ氏は語る。例えば、今回のような緊急性の高い脆弱性に対しては本来アプリケーション側で対処できる必要があった。The DAOも通常どおりのプロポーザルを行うことでコードをアップデートすることは出来たが、14日のディレイが科せられるため緊急の変更もできない。Splitの提案が行われてからでは遅いのだ。

イェンチ氏はそうした問題に対処するための「特例」をコードに設計するか、あるいは権力がないキュレーター制度ではなく、一元管理主体がある「DigixDAO」のような仕組みが必要になるかもしれないと語った。

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この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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