LINEで送る
Pocket

Storj-image

ビットコインの革命は、ヴァーチャル空間に新しい通貨を生み出したことよりも、ブロックチェインによる分散的な合意形成システムにあると言っても過言ではない。ブロックチェインは全ての取引を記録する帳簿であり、誰からも閲覧可能で、改竄不可能な公共のデータベースのように捉えることも出来る。

既に、ビットコイン技術にインスパイアを受け、Ripple(決済プロトコル)やProof of Existence(デジタルデータの存在証明システム)など革新的なサービスが続々と誕生しており、これらは全てブロックチェインなしでは成し得なかったものばかりだ。

そして新たに、ブロックチェインを用いた新たなサービスが発表された。分散型ファイルストレージサービス Storj(ストージ) だ。Storjはソフトウェアエンジニアであるショーン・ウィルキンソンと、ビットコインマイナーであり、弁護士のジェームス・ローリーにより創設された。

Storj

StorjはDropboxやGoogleDriveなどと同様のサービスを利用者へと提供するが、根本的には大きく異なる。最も大きく異なるポイントは、やはりStorjが分散的であるということだろう。

Storjが提供するサービスのひとつである「Metadisk」のホワイトペーパーにはこう述べられている。

[訳]“クラウドストレージは、目新しさと大衆の渇望を悪用したマーケティング用語だ。[…]データがクラウド上に格納される際、データセンタ内のホストサーバーにクライアントPCからTCP/IPを介して転送される。これは、メインフレーム(大型の汎用コンピュータ)と性能の低い端末が存在していた頃からある古いクライアントサーバーモデルと同じだ。他のサーバーへ3つのコピーが作成されることにより、業界標準の冗長化ポリシーに準拠することとなる。個人情報を委託され、中央管理機関を通じて動作する現在のクラウドストレージのモデルは、多くの点で本質的な不安がある。情報の泥棒、スパイ、そして検閲により、政治戦略や法的戦略、及び技術的手段を通じてデータのコピー、あるいはホストサーバー上に保存されたデータを破壊される恐れがある。”

centralized-crowdstrage-model

図1:従来のクラウドストレージ

一方、Storjは従来のクラウドストレージサービスとは異なり、ファイルをハッシュ(細切れに)し、P2PネットワークでつながっているすべてのユーザーのPCと共有する。暗号化され細切れになったファイルは秘密鍵を持っている人にしか取り出せないし、見ることも不可能だ。もちろん、サーバーが停止してファイルを取り出せなくなることもないし、ファイルが破損して閲覧出来なくなることもない。

new-Metadisk-crowdstrage-model

図2:分散型ファイルストレージのモデル

redundancy-check-on-Metadisk

図3:ファイル冗長性チェックの手法

また、Storjはクラウドセールによる暗号通貨のIPOを行っている。明らかに競合相手を意識し、強気に設定したであろうゴールの9,800BTC(約5億円)には遠く及ばなかったが、それでも、910BTC(約4500万円)を調達した。

Metadisk

ショーンはStorjだけでなく、Metadisk(メタディスク)も用意した。Metadiskは、いわばStorjのフロントエンドに位置するアプリケーションであり、Dropboxのインターフェースのようにファイルの共有や保管が可能だ。

また、ショーンはMetadiskにStorjの他にも、MaidSafe、Siacoin、Permacoin、Filecoinなども統合する予定だと述べている。

“Metadisk serves as a multi-platform frontend. We are looking for integration with Maidsafe, Siacoin, Permacoin, Filecoin, and our own data platform Storj. If the space is free or close to free then great. We will make sure it gets used through our many tools and applications we are building.”
Metadiskは、マルチプラットフォームのフロントエンドとして機能する。僕らはMaidSafe, Siacoin, Permacoin, Filecoinを、僕らのStorjと共に(Metadiskへと)統合するつもりだ。(データの)スペースがタダか、限りなくタダに近ければ最高だよね。僕らの作っているアプリや、多くのツールを通じて使われるのを見るのが楽しみだよ。

MetadiskでStorjのネットワークを利用するにはStorjcoin X(SJCX)を消費するが、これは従来のクラウドストレージサービスの有料プランと比較すると、およそ75%近くのコストダウンを見込むことができる。具体的には、1TBのデータストレージを利用するのにDropboxでは年間99ドルかかるが、Metadiskなら15ドル程度という、かなり破格の利用料金だ。

実は、Metadiskのホワイトペーパーでは100GBで$99のプランと比較されている。6月にStorjが発表した時点ではプランの改訂が行われていなかった。Dropboxが価格改訂をしたのは8月中旬頃であるため、分散型ファイルストレージの技術を脅威と考えたのではないかと邪推してしまう。

更に、Metadiskのデータストレージ容量はネットワークの利用者が増えれば増えるほど高速かつ大容量になる。つまり、利用者の増加が利便性の向上に直接繋がるということだ。もちろん、データストレージの共有サイズ割り当ては可能なので、ハードディスク容量を無為に圧迫するということもない。Metadiskでファイルをストレージする機能と、Storjネットワークにコンピュータリソースを提供する機能は、完全に切り分けられている。

MaidSafe

Storjの先駆け的存在として、MaidSafeがある。MaidSafeが4月にクラウドセールによるIPOを行い、600万ドルの資金調達をしたことは記憶に新しいだろう。このIPOでは、MaidSafeネットワークで扱うためのSafeCoinを売りに出し、BitcoinとMastercoinへと交換することで資金調達を行った。

MaidSafeは非集権型インターネットと自身を表現しており、そのP2Pネットワーク上で、ありとあらゆるアプリケーションを作成し、共有し、稼働させることができる。MaidSafe上で作成されたアプリケーションは、サーバーの制約を受けず、ネットワークを維持するファーマーがPOR(Proof of Resource)することで、任意に提供するコンピュータリソースのスケールに依存する。また、MaidSafe上でフリーのアプリケーションを作成すると、MaidSafe基金より報酬が支払われることになっている。

サービスの競合

ここで確認すべき点がひとつある。「MaidSafeとStorjは同じものなのではないか?」ということだ。StorjもMaidSafeも同様にProof of Resourceを採用しており、似た機能を有するSiacoinもまた、Proof of StorageによりHDDの一部を貸し出すことでマイニングを行う。Storjが提供するMetadiskはクラウドストレージに特化しており、Siacoinも同じくクラウドストレージを目指したサービスを展開しようとしている。当然、MaidSafeにもファイルストレージの機能は含まれている。

故に、答えは「Yes」だ。そして残念なことに、現在これらのサービスは開始されておらず、開発者向けにソースコードが公開されているのみである。よって、どのようにこれらを比較し、選択すればいいかを考えるのも杞憂かもしれない。ほぼ無料で利用出来るのだから、実際に稼働してからそれぞれを比較し、選択すれば良いだろう。

Storjの開発者であるショーンは、SiacoinやStorjなど、それぞれのサービスが抱える機能はMaidSafeと同じようなプロトコルを利用しているため競合しているが、Storjはファイルストレージに特化することで、他の暗号通貨も同様に独自の特色を出すことで差異を出そうと試みていると語っていた。

結論

ビットコインが生み出したものは、想像を超えた可能性を秘めている。それはブロックチェインであり、分散的な合意形成システムだ。また、本稿では触れなかったが、今年の冬には、今ビットコインコミュニティで最も注目を受けているEhereumも控えている。

2014年は良い意味でも悪い意味でもビットコインが広く周知された年であり、ビットコインが生み出したブロックチェイン技術を応用した革新的なサービスが続々と登場した年だ。そして、たった今、Satoshi Nakamotoのホワイトペーパーを読みインスパイアを受けたギーク達が、それぞれの思いを込めたアイデアを形にし、リリースしようとしている。まさに、ビットコイン元年と呼ぶにふさわしい年だろう。

現在、Storjは利用者向けのサービスは開始されていないが、サービスが正式稼働すれば相当なインパクトがあるのではないだろうか。データの保管上限がなく、高速なネットワークをタダに近い価格で利用出来るのだ。未だかつて、これほどまでに自由で素晴らしいサービスが存在しただろうか。私は、このサービスがインターネットをより自由にするものとして、ADSLが誕生した時と同じくらいの衝撃を与えるのではないかと考えている。

StorjやMaidSafeに早く触れてみたい人は、開発者向けのドキュメントやソースコードを参照してみてはいかがだろうか?かなりボリュームのある内容になっているので、じっくり読み明かしてサービス開始を待つのもひとつの楽しみ方だろう。

Metadisk Whitepaperを閲覧する
MaidSafe Whitepaperを閲覧する
MaidSafe Developer’s Documentsを閲覧する

(画像出典:Storj, Metadisk Whitepaper

この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
monacoin:MTn7hiNovBHyN7gjtvD1Hh7W96Zmghp41B
bitcoin:1NK8S4ep9ZUZ9H9AmTAfvrCVVAKLbpmi36