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blythemasters

image by Flickr

「私はすべてのキャリアをリスク、市場、インフラ、そして法整備に捧げましたが、その間にも多くの金融危機や、信用リスクによって生じたクレジット・デリバティブ市場そのものの崩壊を見てきました。これらの問題は分散型元帳によって解決出来る。私はそう信じています。」

ウォール街でブライス・マスターズを知らない人は存在しない。1991年、22歳の時にJPモルガン・チェースに入社し28歳にして同社のクレジット・デリバティブ部門のマネージングディレクターに就任。2008年のリーマン・ショックの引き金を引いたクレジット・デフォルト・スワップ(CDS)の開発にも携わり、58兆ドル市場を作りあげた「ウォール街で最もパワフルな女性」だ。

マスターズは現在、ビットコインの基盤技術であるブロックチェーンを用いたイノベーションに挑戦するスタートアップ「Digital Asset Holdings(DAH)」のCEOとして、金融市場のインフラ基盤に一石を投じようとしている。

「既に私たちは驚異的なスピードで動くフロントエンドのトレーディングシステムを有し、ナノ秒のレスポンスでシステムの優位性を競う段階に来ています。しかし、ウォール街のバックエンドシステムは数十年にわたって未だ根本的な見直しがなされていません。」

ウォール街の熱狂

ゴールドマン・サックスやニューヨーク証券取引所、USAA、BBVAはビットコインスタートアップに投資を行った最先端の企業として知られており、これらの企業はビットコインスタートアップと共同でブロックチェーンを用いた決済システムの研究開発にも携わっている。たとえば軍関係者のみを対象とする北米二番手の金融機関USAAは今年の5月、銀行基幹業務の効率化のため「大規模な」ブロックチェーン研究チームを発足したことを発表。遠隔地で勤務する軍人に向け早期からモバイルバンキング対応を進めてきたUSAAは、分散的に相互認証可能なブロックチェーン技術を用いることで多くのコスト削減が見込めると考えているようだ。

また、JPモルガン・チェースの企業戦略主任を務めるマックス・ノイキルヒェンは、ウォール街でブロックチェーンの単語を聞かない会議はないという。二年前には全員が懐疑的だったビットコインの技術について、今は誰もが実用化に向けた議論を行っているというのだ。

この傾向は、ヨーロッパの調査機関グリニッジ・アソシエイツのレポートからも読み取ることができる。レポートによれば、ヨーロッパに拠点を置く金融機関関係者のうち47%が「ブロックチェーン技術の導入を検討している」と答え、その傾向は今なお続いていると結論付けられた。さらにレポートの結果に呼応するように、UBSの最高情報責任者を務めるオリバー・バスマンは、金融セクターにおける技術に対する認識の変化についてコメントした。

「12ヶ月前にビットコインの話題を持っていったとしても、バンカーはまったく興味を示さなかったでしょう。しかし、今は誰もが重要な話題として考えています。より安全な、よりスケーラブルなブロックチェーンを作り、競争相手を出し抜こうと挑戦している企業を100以上知っています。」

Digital Asset Holdings

DAHが目指すのは、数十兆規模の非効率な証券市場を分散的な元帳技術で置換する未来だ。マスターズはシンジケートローンや米国債レポ、未公開株のような市場は未だ電話や紙の契約書で買い手と売り手のマッチング、交渉を行っており、ここにはあまりにも膨大な時間やコストのリスクが生じていると話す。

これらは通常でもトランザクションの執行と受渡し(ビットコインユーザーの一般的な感覚では一瞬だが)まで3週間程度が掛かると言われており、ブロックチェーンで置換した場合、ビットコインのブロックチェーンであれば10分、より最適化された分散元帳であれば数秒で執行可能だ。DAHはさらに、今年の6月には組織内や組織間のプライベートな共有元帳を開発する米国のスタートアップHyperledgerを買収し、より効率的なネットワークの構築を進め、金融機関との連携を図っているようだ。

ブライス・マスターズやウォール街がブロックチェーンに見ている熱狂は、はたから見れば行き過ぎた「Hype」のように映るだろう。しかしながらブロックチェーンは既に実用の段階にまで来ているのだ。

コンセプトでしかなかった「スマートコントラクト」はEthereumのリリースによって現実味を帯び始めた。ブロックチェーン上にファイルを保管する「スマートコントラクト」の一種である分散クラウド・ストレージにおいてもSiacoin、MORPHiSなど、いくつかのプロジェクトにおいて試験運用が始まっている。契約書や公文書のような、企業ユースの公的書類の保管管理を分散的に行うFactomでは、中央アメリカの小国ホンジュラスの政府とパートナーシップを締結し、登記簿として活用することが決定した。

FRBやバンクオブイングランドのような機関がブロックチェーンのための研究チームを組成していることからもわかるように、もはやブロックチェーンはインターネット黎明期を超える速度で成長する一大産業なのだ。

「1990年代早期のインターネット黎明期のように、ブロックチェーンも深刻に捉えなければなりません。ブロックチェーンはEメールと非常によく似ています。」


コメント出典:
Bloomberg – Blythe Masters Tells Banks the Blockchain Changes Everything

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この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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