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現在のeCommerce市場の根底を揺るがすようなサービスがビットコインコミュニティから現れた。分散型マーケットプレイスOpenBazaarだ。

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OpenBazaarは、ブライアン・ホフマン氏を含む9名のメンバーで開発が行われている。マーケットプレイスという言葉が示すとおり、OpenBazaar上では、誰でもモノやサービスを出品することができる。そして、中央管理機関が存在しないため、場所代や仲介手数料を支払わなくてもいい。つまり、今までのシステムでは避けられなかったコストをなくすことができるということだ。

これは、出品者だけでなく、利用者にとっても嬉しい環境を作り出すだろう。なぜなら、出品者は手数料分の価格を上乗せする必要がなくなるため、その分商品の価格を安くすることができ、実質的に安く買うことができるからだ。

どのような仕組みか

OpenBazaarは、ビットコインと同様にメインサーバーを持たず、OpenBazaarネットワークのノードに接続された各個人のコンピュータがサーバーの役割を果たす。これは楽天やeBay、Amazonと大きく異なる点であり、前述した安くない手数料を中央管理機関へと支払う必要がない理由だ。

ネットワークの利用者は「売り手(Seller)」「買い手(Buyer)」「仲裁人(Arbiter)」「公証人(Notary)」の4種の役割に分けられる。売り手と買い手の関係は従来のeCommerceと大きな違いはないが、仲裁人と公証人については少々複雑だ。まず、売り手と買い手の関係から考えてみよう。

OpenBazaarにおいて、売り手は個人情報を公表することなく、ハンドルネームを使うことを選択できる。その場合に起こりうる問題点は「詐欺行為を行ったり低品質のモノを売りつける行為を、名前やアドレスを一切変えて繰り返す」だ。そうなれば買い手は常に不利益を被り、どの売り手も信用出来なくなってしまう。OpenBazaarでは、これを解決するためにProof of Burn(*1)を用いた評価システムを実装している。Proof of Burnのアドレスへビットコインを送信すると、その量に応じた評価が付く仕組みだ。この仕組みを用いて信用を裏付ければ、失ったビットコインを無駄にしてまで、わざわざ自分の信用を貶めるような行動は取らないだろうという推測からこの方式が取られた。

仲裁人と公証人

a次に、仲裁人と公証人についてだ。OpenBazaarマーケット実装の提案はすべて、仲裁人、公証人を含めて取引が行われることを前提としている。そのため、売り手と買い手の取引には”2 of 3 マルチシグネチャーアドレス(*2)”によるエスクローシステムを活用している。

例えば、売り手AがOpenBazaar上でパソコンを出品しており、買い手Bはそれを見つけ、買いたくなる状況を考えてみる。Bはパソコンを購入するため、マルチシグネチャーアドレスへビットコインを送信する。この時点ではビットコインはAの元へ届かず、両者の合意なしでは一切資産の移動ができない。そして、Aはビットコイン送信の通知を受け取った後、パソコンを出荷する。Bの元にパソコンが届き、満足すれば署名を行い、晴れてビットコインはAのウォレットへと移動する。

しかしながら、問題は常にそううまくはいかない。商品説明とは程遠い質のものが送られてくる、間違った商品が送られてくる、あるいは、そもそも商品が送られてこないなど、取引は常に問題と隣合わせだ。ここで、仲裁人の役割が必要となる。仲裁人は、どちらの言い分が正しいかを判断し、勝者を決定する役割を担っている。どのようにそれを判断するかというと、前述した評価システムに加え、売り手買い手双方の今までの取引履歴などを参照し、詐欺行為を働いていないかなどを検査する(*3)。

さて、公証人の役割は特殊だ。公証人は仲裁人の上部レイヤに位置する。仲裁人は、潜在的に数十、数百のタスクを同時に実行する可能性があり、ひとつの取引が長引いてしまうことがある。また、どうしても妄執に囚われ、正常な判断が出来なくなり機能が停止した場合もある。その時に初めて、OpenBazaarは公証人サービスをオプションとして使用する選択肢を提案している。OpenBazaarによると、公証人の責務として次の4項目が挙げられている(*4)。

(1)両当事者のリカード契約(Ricardian contracts *5)の作成 – 3者によるデジタル署名
(2)独自の公開鍵から売り手、買い手のためのマルチシグネチャアドレスの作成
(3)無条件に売り手側へ署名し、資産を開放する(怠惰な取引)
(4)問題に対する仲裁人の判断に基づき、マルチシグネチャアドレスから資産を開放する

実際には上記(1)(2)は完全に自動化されているため、公証人からいずれかの人間への相互作用は必要としない。故に、公証人は、中立的な立場からプロフェッショナルな判断を行うことに専念するだろう。

また、公証人サービスを利用した場合は、従来のエスクローサービスなどと比較すると最終的な時間のコストや手数料が多く掛かってしまうことが指摘されている。具体的な手数料は明かされていないが、公証人サービスを利用した場合のコストは、ほぼ無料〜数ドル程度の範囲に収まるだろうとされている。しかしながら、これらのコストの増加は、それを避けるために、売り手と買い手の双方へ穏便に取引を行う動機を与えるだろうとも記されている。

公証人と仲裁人の機能について、次のようにまとめられている:
“In summary, the function of the notary and arbiter can be assigned to two separate agents for transactions in OpenBazaar with minimally disruptive changes to the end-user experience and the client.”

これらの機能は売り手と買い手の紛争を解決するためというよりもむしろ、分散的な監視によって、個々に自身の利益を守るための正しい方法を選択させる、コミュニティ重視の考え方なのかもしれないと感じた。

ベータテスター募集中

8月末にβ1.0がリリースされ、9月30日に早くもβ2.0がリリースされた。現在OpenBazaarはβ版ながらも、既にネットワークは稼働しており、既に100以上のクライアントがテストしている。殆どがテスト用の店舗ではあるが、中には実際にハンドクラフトの革製品や電気部品を販売している店舗もあり、また、売買を行ったとの報告もReddit上でわずかながら見つけられた。

OpenBazaarはたくさんのフィードバックを求めており、また、ユーザーの期待も高く、公式フォーラムやGitHub上で精力的なフィードバックや議論が行われているのを確認できる。この記事を読み興味を持った人は、ぜひともテスターとして参加し、フィードバックをしてほしいと願う。タイトルで「ビットコインEC革命」と大仰なことを掲げたが、これは決して過言ではない。私は、OpenBazaarの持つ潜在的な可能性は、eBayや楽天を遥かに超えたキラーアプリであると確信している。

 


(注釈)
*1 Proof of Burn: ビットコインを誰も所有していないアドレスへと送信し恒久的に破棄することで、何らかの価値や信用を受け取ることをいう。PoBを用いているシステムとしてCounterpartyが有名。Counterpartyでは、1CounterpartyXXXXXXXXXXXXXXXからはじまる指定アドレスへビットコインを送信することで、対価としてXCP(Counterparty通貨単位)を受け取る。

*2 2 of 3 multisignature address: 第三者を含め、3人中2人の署名があってはじめてトランザクションが実行される、ビットコインの基本機能。通常の取引では相手のアドレスへ送信した時点でトランザクションは完了するが、商品が届かない、不良品が送られるなどの問題が発生する可能性がある。第三者が取引の仲裁に入ることで、売り手と買い手で問題が起こったとしても、どちらの言い分が正しいかを仲裁人が判断し、返金か購入かを決定することが出来る。(2 of 3は任意の数、3 of 5、5 of 6なども可能)

*3 (参考資料)評価システムの正当性についてのアプローチ: A pseudonymous trust system for a decentralized anonymous marketplace https://gist.github.com/dionyziz/e3b296861175e0ebea4b

*4 (参考資料)公証人、仲裁人の役割についての記述: Separation of Notary and Arbitration Services on OpenBazaar https://gist.github.com/drwasho/f1e0a9f5826f5cc4186e

*5 (参考資料)リカード契約: The Use of Ricardian Contracts in OpenBazaar https://gist.github.com/drwasho/a5380544c170bdbbbad8

(画像出典 via OpenBazaar)

この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
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