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本記事はLinkedIn創業者リード・ホフマン氏のブログポストの日本語訳記事です。シリコンバレーで最も成功した起業家として名高いホフマン氏は昨年、グレイロックパートナーズとしてXapoのシリーズAを主導、個人としてBlockstreamのシリーズAを主導するなど、ビットコインの基盤技術への強い関心を示しています。
reid_hoffman

ビットコインは大抵、ゴールド、サブプライムローン、チューリップよりも効果的に投機利用が出来る、揮発性の高いバーチャル商品の媒体として見做されています。私は、それについて特に関心はありません。私にとってのビットコインとは、「新しい信用のネットワーク」、「経済のエコシステムを大きく変えうる燃料」、そして「永続的かつ長期的な価値」を創造し、インターネット通信プロトコルに変革を起こす基盤技術です。

ビットコインの機能が商品であるか通貨であるかという議論には関係なく、世界中の幾万のサーバー上に存在する分散的な元帳「ブロックチェイン」の導入がされているという事実があります。参加者が他の参加者と任意のビットコインを交換する度に、その取引はこれまでに起こったすべてのビットコイン取引と照合され、公に記録されます。

ブロックチェインは、「信用のいらない信用(Trustless trust)」の可能性を創造します。参加者はもはや仲介者を必要とせず、絶対的な保証により、価値の交換を行う相手と互いに素性を知る必要も、信頼する必要もありません。よって、ブロックチェインはサードパーティの支払プロセッサや、彼らのチャージ料の必要性を大幅に減少させます。ブロックチェインは、クレジットカード詐欺の可能性を無くします。マイクロペイメントの新たな可能性を創造します。(あなたは誰かに破壊的に安い手数料でビットコインを送信することが出来ます。WSJやニューヨーク・タイムズは、記事ひとつにつき1セントを請求することが出来るようになります。AMCは、コマーシャルフリーの「ウォーキング・デッド」の最新エピソードの視聴に25セントを請求することが出来ます。)ブロックチェインは国境を超えた商取引を極めて簡単にします。特に、クレジットカードネットワークや強固な銀行システムが存在しない発展途上国においては更に有効です。

ブロックチェイン・プロトコルは、単に信用のいらないビットコイン取引を可能にするだけではありません。ドメイン名の署名や、デジタル契約、車や家のような物理的資産のデジタル権利証などのデジタル資産をもブロックチェイン・プロトコルで行うことが出来るようになります。また、ブロックチェインに保存されたデジタル資産に様々な条件と、将来的な権利行使の付与を行うことも可能です。即ち、ビットコインは、究極的なプログラマブル通貨です。そしてこれは、公証人サービスや配当金、エスクローサービスすらも自動実行プログラムの作成が可能です。

全体としてブロックチェインのアイデア、そして上記した取引の種類は、我々が互いに意思の疎通を行う方法を大幅に拡大する可能性をもたらす、インターネットの基盤技術です。

何よりビットコインと、トラストレス・トラスト構造の導入についてより一層優れていると感じるのは、それがオープンソースであり、いかなる企業も優位性を持たず、制御しない、公共財であるということです。この特性は、ビットコインの価値とこれまでの成功のファンダメンタルです。しかし、それはまた、ビットコインコア(BitcoinCore: ビットコインシステムの心臓部であるソフトウェア)の進歩がゆっくりと起こることを意味します。ボランティアによる開発者は、自分の空いた時間を利用してプロジェクトに取り組みます。ビットコイン開発コミュニティの間での合意が達成された時のみ、ビットコインコアの変更は実現されます。

現在、ベンチャーキャピタルがビットコイン企業に投資を行っている数億ドルは、ビットコインウォレットやビットコイン取引所のように、最上位レイヤの製品やサービスに向かっています。これらの製品やサービスは、個人ユーザーが簡単にビットコインを入手・利用が出来るようにすることであり、非常に価値があります。そして彼らは多くの投資を引き込んでいるため、急速に成長しています。

この成長速度と一致させるためには、ビットコインコアは同じような革新と投資が必要です。しかしながら、今のところ私たちは、ビットコインのコア機能を潜在的に拡張する革新的なアイデアを持つ技術者が独自にフォークした彼ら自身の暗号通貨を作成するのを多く見ています。これらのオルトコインはビットコインのアプローチとコードに触発されたものであり、互いに独立して運用されています。

これらのオルトコインが興味深い、新たな可能性を構築している一方で、ビットコインはユーザー、マーチャント、そして起業家が集まるプラットフォームとなりつつあります。これが、推進力の所在です。つまり、ビットコインコアの柔軟性とパワーを向上させる開発努力を促進させることがとても重要な理由であり、すべてのユーザーと開発者が公共財にアクセス可能なよう、ビットコインをオープンに保つことが最適である理由です。

sidechain-image「公共財」の探求において、私はBlockstreamというスタートアップに個人的に投資を行っています。グレイロックでのパートナーとの広範な議論の後、私たちはこのアプローチがプロジェクトの長期的な目標を達成するための最良の方法であると決断しました。この例では、第一目標は「サイドチェイン」技術を通じ、ビットコイン・エコシステム全体の機能性と開放性を強化し、公共の利益を増進させることです。投資家へとリターンを届けることは当然基本方針ですが、しかしそれは第二目標です。

Blockstreamの創設者は、オースティン・ヒルとアダム・バックです。私が初めてオースティンに会ったのは1990年代後半でした。彼はインターネット上のプライバシー保護企業ゼロ知識システムズ(Zero-Knowledge Systems)のCEOでした。アダムは、ビットコイン作成者サトシ・ナカモトがビットコインシステムにおいて通貨の検証と生成のために信頼を置いたHashCashの開発者です。彼らは互いに、この新たな試みに必要な暗号技術、信頼システム、個人証明の領域において十数年の経験があります。

Blockstreamはサイドチェイン技術によるビットコイン機能の拡張を行う予定です。開発者はビットコインにより強固な匿名性など、いくつかの主要な新機能や特徴を追加したいと考えており、現在、これにはふたつのアプローチがあります。ひとつはソフトウェアを開発し、ビットコインのコア開発者がそれを採用することを願うこと。もうひとつは、まったく新しいオルトコインを作成することです。オルトコインのアプローチは技術革新を促進します。しかし、それはまた、ビットコインのような共通のプラットフォーム上における開発者、起業家、個人、顧客、そしてピア・ツー・ピアノード(暗号通貨のブロックチェインを住まわせるサーバー群として知られる)の集合体として生じるネットワーク効果を活用することが出来ない(そして力関係を覆すことも出来ない)ことを意味しています。

サイドチェインは、開発者が「双方向連動(two-way pegging)」と呼ばれるプロセスを通じてビットコインコアコードを変更せずに、ビットコインの領域へと特性と機能を追加することが出来ます。その結果、技術革新は単一通貨による共通プラットフォームの相乗効果を失うことなく、より柔軟かつ分散的な方法で、早々に発生する可能性があります。

サイドチェインの実装は、どうしてもビットコインコアへの変更を必要とするでしょう。これはビットコインコア開発チームが、そしてより広く、より大きなビットコインコミュニティが、オープンかつ分散的な公共財としてビットコインの全体的な有用性とステータスを向上させると考えていない限り、達成し得ません。

これが、私が個人の投資家として資金調達に参加している理由です。Blockstream自身はMozillaと同様に機能します。今の私たちの関心は、やり通すこと。そしてビットコインの強く、オープンなエコシステムを強化することです。そして私たちが選択した仕組みは、投資家への還元よりも公共財へと優先順位をつけることによって、柔軟性と自由をもたらしました。

私は、時間が経過するにつれて、このエコシステムが個人のユーザー、すべてのビジネス、開発者、起業家、そして投資家を含むビットコイン銀河の全員へと、究極的かつ莫大な経済価値を創造することになると信じています。ビットコインが完全にトラストレス・トラスト構造を活用出来るようになるために、たくさんの新規参入企業、製品、そしてサービスが必要です。例えば、数ヶ月前に私はビットコインウォレットXapoへとグレイロックとして投資を主導しました。

Blockstreamが容易に新たな機能をプラットフォームへと追加出来るようにすることは、ビットコインが進化するにつれて、その勢いを維持する上で非常に大きな役割を果たします。そして、Blockstreamの成功は、技術、そして起業革新の新たな波を引き起こすでしょう。これは、膨大な量の補完的な製品やサービスを構築出来る、オープンかつ適応性の高いプラットフォームとして、ビットコインを支援することでしょう。


[原文]The Future of the Bitcoin Ecosystem and “Trustless Trust” – Why I Invested in Blockstream
[訳]zakiyama

この記事を書いた人

ざきやま(山崎大輔)
ざきやま(山崎大輔)from Cryptocurrency world
ビットコイン専門記者 BTCN編集長
ブロックチェインの可能性を、知的財産の保護やゲーミングカルチャーへ応用できないかと考えてます。
monacoin:MTn7hiNovBHyN7gjtvD1Hh7W96Zmghp41B
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