2018.02.13 (Tue) column

PoW vs PoS論争の概要2 価値の拠り所の相違点

Written by indiv_0110

前半の記事ではPoWとPoSの違いを簡単に紹介した。後半では、ライトコイン開発者のHugo Nguyen氏によるPoS批判をまず紹介し、その後、論争の概要をまとめたい。まずはHugo Nguyen氏の一連のツイートの要点を紹介する。

Hugo Nguyen氏の主張

ビットコイン台帳の不変性(Immutability)は魔法ではない。電気の無駄遣いのようにもみえるが、PoWマイニングというコストを支払っているからこそ、台帳の不変性が保たれる。PoS支持者は、この"無駄遣い"なしにわずかなコストで同じ不変性を保てると主張する。

PoSに似たものが歴史の中にも発見できる。それは永久機関だ。19~20世紀において、人々は永久機関の開発に勤しんだ。永久機関はエネルギーの投入なしに、永久に稼働できるという代物だ。つまり無からエネルギーを作り出していることになる。

我々は永久機関が機能しないことを知っている。自然法則を侵しているからだ。"エネルギーは作り出したり破壊したりすることはできない。ある形態から別の形態に変わり得るだけだ"。何かを得ようと思えば同等のものを手放さなければならない。この法則が世界を律している。ブロックチェーンも例外ではない。

台帳の不変性はエネルギーであり、PoWマイニングにおける電気代として現れる。分散性はエネルギーであり、ネットワークに散らばるフルノードやストレージ、帯域幅のコストとして現れる。

我々はブロックチェーンを流体系として捉えることができる。エネルギーはある特性から別の特性に移動することができる。"分散性エネルギー"と"スケーラビリティエネルギー"を互いに行き来させることができる。ブロックチェーンにおけるトータルの効用はそのコストとほぼ同値であり、エネルギーコストを削減しながら全ての特性を保つことはできない。

PoSがPoWと同じ性質を保ったままエネルギーコストを削減できるとすれば、それはPoWがエネルギーを本当に"無駄"にしていることを示せたときだ。しかしPoWは間違いなく、台帳の不変性に寄与している。PoWで行われる全ての計算がセキュリティに寄与する。Xブロックを書き換えるためのコストはXブロックをマイニングするためのコストと同値だ。

PoSには懲罰というシステムがあり、不正を行った際にはペナルティを払わなければならない。PoS支持者はこの懲罰が不正攻撃を防ぐことができると望んでいるようだが、これは重大な欠陥だ。現実世界では懲罰による脅しは機能する。なぜなら現実世界にはただ一つの現実しかないからだ。しかし分散台帳には当てはまらない。全てのフォークは、別の世界を作り出すからだ。ある世界における懲罰は、攻撃者はその世界に留まることを選択しない場合機能しない。

しかし攻撃者は元の世界に留まる必要はない。履歴の書き換えによって攻撃者は台帳を白紙に戻すことができる。攻撃者の世界では、攻撃者は正直な行動者なのだ。またPoSは、不正者を"攻撃の後"に懲罰することしかできない。懲罰が実行される頃には、機を逸しているかもしれない。この点がPoWマイニングと決定的に違う点だ。PoWマイニングでは、攻撃者は事前にブロックを採掘するためのコストを支払わなければならない。

Vitalikは「PoWも同様に社会的合意が必要だ」と主張するが、全ての人によって作られたシステムにはいくらかの社会的合意が必要だ。問題は"どのくらい"必要かということだ。社会的合意や人による仲介が少なければ少ないほど、よりセキュアなシステムになる。出来る限りヒューマンエラーを排除し、機械による合意へと移行することがゴールだ。

対照的に、PoSではフォーク問題を解決するためには継続的な社会的合意が必要となる。この社会的合意に対する依存は、PoWに比べて桁違いに大きい。結論として、PoWとPoSは比較対象にならない。NBAチームと高校生チームのようなものだ。PoWは最悪の状況に耐えられるよう設計されたシステムであり、PoSはその致命的な脆弱性を隠すために不明瞭なセットアップを必要とする。片や将来に渡って堅牢なシステム、片や玩具だ。

価値の拠り所の相違点

前半でも述べたように、PoWはプロトコルとその外側に位置するマイナーによって、PoSはプロトコルとその内側に位置するバリデーターによって、それぞれ成り立っている。このような位置関係だけに着目すると、PoSはプロトコルとブロック生成者が非常に近い距離にある一方で、PoWはプロトコルとブロック生成者に一定の距離があるように思われる。

PoWでは、条件を満たすナンスを探し出すために、マイナーは計算処理を行わなければならない。現在、この処理には膨大な計算力が必要である。ブロックの生成には、このような計算力の投入が不可欠であり、その意味でプロトコルとブロック生成者はナンスの探索を通して深く結びついている。さらにマイナーによって投入される計算力は、電気や計算機器等の外部に存在する価値によって成り立っている。希少価値のある計算力がこのプロセスを通じて、ビットコインに注がれているともいえるだろう。一定数以上の人間がその価値を認めるとき、それは交換媒体として他者が受け取るものになる。

PoSでは、バリデーターのブロック報酬獲得確率を左右するステイクはプロトコルによって生成されたトークンが用いられるため、プロトコルとバリデーターは表裏一体だ。新規発行されるEtherの獲得難易度はEtherのステイク量によって決定される。この点で、PoSはPoWとは大きく異なる。その希少性が外側ではなく内側から発生するのであれば、価値の文脈においては、そのネットワークの利便性がより重要になってくる。利便性は、ネットワークを取り囲む環境や経済圏の構造にも依存する。

プロトコルとブロック生成者という関係においてはより単純な関係に見えたPoSであるが、ネットワークの設計や評価の点にまで視野を広げるとPoWに比べてより複雑な構造が見えてくる。持続可能性という点で課題があるともいえるだろう。

価格と価値

価格は市場価格を指すことが多いので混乱は少ないが、価値について議論する場合には注意が必要だ。暗号通貨の場合、その価値がどのような式に基づいて決定されるのかは統一されていない。セキュリティや利便性は重要ではあるが、多くの人が不公平感を抱くようなシステムの場合、それを考慮する必要もある。

またビットコインとイーサリアムでは目指す場所が異なるように、それぞれのプロジェクトには固有のゴールがあり、それに適した設計が必要なのは言うまでもない。故にコンセンサスアルゴリズムを論じる際には、どこまでが比較可能で、どこからが比較不可能であるかの範囲の設定を注意深く行うことが重要だ。


Hugo Nguyen [LTC] on Twitter: "1/ Here’s why I think Ethereum & Proof-of-Stake are bad ideas."
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