2018.05.02 (Wed) news

仮想通貨による少額決済の非課税化が難しい理由

Written by 氷犬

こんにちは、氷犬(@icedog_410)です。

前回のコラムでは、仮想通貨分離課税の実現可能性について取り上げました。今回は仮想通貨の少額決済の非課税化について考えてみます。

非課税とは

そもそも非課税(化)とはどういうことなのでしょうか。

所得税は、原則として個人に対して発生したすべての所得について課税されます。例えば、労働で手に入れたお金でも、投資活動の利益でも関係なく課税の対象になります。このすべての所得が課税の対象となるという考え方を、専門用語で包括的所得概念と呼んだりもします。

しかし、所得の中には、国の政策上所得税をかけるべきではないものや、課税することが難しいものがあり、それらの所得には所得税がかからないことになっています。所得税がかからない所得のことを非課税所得と呼びます。有名なものでいうと、NISA(少額投資非課税制度)や損害賠償金、宝くじの当せん金などがあります。

よく「自分は所得が非課税なのですが...」と言っている人がいますが、大抵の場合それは所得を計算した結果、所得税がゼロであっただけであり、厳密に言うと非課税とは言いません。つまり、非課税(化)とは「本来課税されるものであるが、政策上の配慮等によって課税対象から外されること」を言います。

仮想通貨の少額決済と現状

現在、仮想通貨をトレードしたり決済に使用したりすると、その都度利益が確定し、所得の計算を行うという扱いになっています。例えば、1ビットコインを50万円の時に購入し、70万円の時に決済で使用すると利益を確定したとみなされ、所得を計算しなければなりません。この場合は20万円の利益が発生しているので、その利益に対して所得税がかかります。

仮想通貨を年に数回程度使用するだけであれば、所得の計算にも大した手間はかからないかもしれませんが、日常的に決済に使用することを考えたときには、その手間はかなりのものとなってしまいます。例えばあなたがお店で300円のコーヒーを注文したとします。その支払いを仮想通貨で行うと、その時点で利益を確定した扱いとなり、仮想通貨の購入時と比べて発生した利益、あるいは損失について所得計算を行い、翌年3月15日までに所得税の確定申告をする必要があります。

このような形で年数百回の決済を仮想通貨で行った際には、その決済のすべてについて所得の計算をしなければなりません。現状の税制は仮想通貨を決済に使用することへディスインセンティブとなっており、仮想通貨決済の普及を難しくしています。

少額決済の非課税化の例

仮に仮想通貨の少額決済を非課税とするのであればどのような仕組みが考えられるでしょうか。

1つは「1回当たり一定額までの使用であれば非課税」とする方法です。よく「1回10万円までの少額決済であれば非課税とすべき」という意見を見ますが、この方法だと億単位の利益が出ていても、10万円以下の決済を延々と繰り替えすことによって一切税金がかからなくなってしまうため、節税スキームとして利用される危険性があります。いくらまで、という金額の設定にも合理的な根拠を見出しづらいですし、この形が採用されることはまずないでしょう。

もう1つは、「仮想通貨専用の所得区分を設定し、所得控除を行う」方法です。例えば、仮想通貨の使用等によって、1年間に30万円の利益が発生したとします。その30万円の利益を雑所得ではなく、「仮想通貨による雑所得」など専用の所得区分に分類し、その所得金額から50万円の所得控除額を差し引いて税計算を行うというものです。30万円の所得から所得控除の50万円を引くと、差額はマイナスとなり税額は発生しません。

この仕組みは既に他の所得区分でも制度化されていて、例えば、一時所得はその所得から50万円を控除した上で税計算を行います。また、税の種類は違いますが、贈与税であれば年間110万円までの贈与であれば課税されません。正確に言えば非課税になるわけではないのですが、利益が一定額まで課税されないのであれば仮想通貨を使用することへの抵抗感も薄れるのではないでしょうか。

少額決済の非課税化が難しい2つの理由

さて、非課税所得と少額決済について考えたところで、実際に仮想通貨の少額決済が非課税となるのかどうかについて考えてみます。結論から言うと、現時点で仮想通貨の少額決済の非課税化はかなり難しいだろうと私は考えています。

理由としては次の2つです。

① 税法の枠組みを見直す必要がある

仮想通貨を所有することによって得られる利益は一方では誰かの損失になっています。現状、市場で取引されているものなので、誰かが大きく利益を上げればそのぶんだけ誰かが損失を被っています、そこで仮想通貨の少額決済を非課税としてしまうと、利益に対して課税されないため、利益を得る人は利益を得て損失を被る人は損失を被るだけの結果となってしまいます。

税制度は原則的に誰かが得た利益の一部を市場に再分配する仕組みでもあるので、一方的に誰かが得をするような制度は作りにくいのです。所得に対して課税されないのであれば、次は消費への課税、つまり消費税を増税するなどの対応が必要となりますが、税率を8%から10%に上げるだけでも相当な抵抗にあっているのですから、消費税の増税による対応は現実味が薄いでしょう。

② 仮想通貨の技術が実用段階にない

時価総額上位のビットコインやイーサリアムはスケーラビリティの問題を抱えており、昨年12月から今年の1月にかけて、トランザクション数の大幅増加による送金詰まりや手数料の高騰がありました。

現在はトランザクション数がかなり減っているので落ち着いていますが、そのうちにまた同じように送金詰まりの問題は起きるでしょう。ビットコインはLightning Network、イーサリアムはRaiden Networkなどの技術によってスケーラビリティ問題を解決しようとしていますが、まだ開発段階であり、実用に耐えうるかどうかは実際に動かしてみるまではわかりません。

このように技術的な問題を抱えている状態では、国としてもわざわざ税法を改正してまで仮想通貨に関連する技術を推進する動機に欠けるところがあります。

キャッシュレスな決済手段としての需要はある

先日、経済産業省が「キャッシュレス決済の比率を2025年までに40%、将来的に80%を目指す」との提言を出しました。

仮想通貨による少額決済の非課税化は厳しいという他ありませんが、国としても緩やかに仮想通貨に関する技術を推進することは間違いないので、今は動向をじっくり見守りたいと考えています。


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