2018.03.26 (Mon) column

2017年の「仮想通貨税制」を振り返る

Written by 氷犬

はじめまして、氷犬(@icedog_410)と申します。

私は日頃税務に関する仕事をしていまして、仮想通貨に関する税制について個人的に関心を持っています。また、一投資家として、いくつかの仮想通貨を保有しています。最近、Twitterのタイムラインなどを見ていると、「仮想通貨と税金」という話題がホットになってきているように感じます。

例えば、「雑所得で最大55%の税率はやりすぎ。稼いでも半分国に持っていかれる」とか、「アルトコインの利益計算がめんどくさすぎる」という意見をよく見ます。なんとなく心当たりはありませんか?

同時に、仮想通貨投資家・ホルダーの税制への理解度が足りていないということも感じます。これは一概に誰が悪いという話でもありませんが、やはり仮想通貨を所有する以上、税金は切っても切り離せない問題の一つです。

税制への理解が不足していると、「仮想通貨は分離課税とすべき」「少額決済の免税化を」というような意見は”仮想通貨投資家のポジショントーク”程度のものに留まってしまいます。たとえポジショントークが盛り上がったところで何も残りませんので、その意見に説得力を持たせるための裏付けが必要です。

そこでこの度、会計に携わる者として、仮想通貨に関わる方が税制を調べ、考える上での助けになればと思い、BTCNさんのスペースをお借りして記事を書かせていただくことになりました。まずは仮想通貨元年と呼ばれた2017年を振り返り、「日本の仮想通貨税制」をおさらいしましょう。

2017年4月改正資金決済法の施行

2016年に資金決済法が改正され、2017年4月に施行されました。改正資金決済法においては、仮想通貨が正式に通貨として定義されました。この法律で「仮想通貨」という名称が使われていることから、世間一般では暗号通貨ではなく、仮想通貨という呼称がポピュラーなものとなりました。

仮想通貨が通貨として定義されたことによって、仮想通貨の取引(使用・トレード)にかかる消費税は非課税となりました。正確に言うのであれば、仮想通貨に関する取引は非課税取引となりました。支払手段としての通貨の譲渡等については消費税がかかりません。例えば、円で何か物を買ったときの円の譲渡(支払)には消費税がかからないのと同じことです。

これまではモノとして扱われていたため、仮想通貨の取引には消費税がかかっていましたが、改正資金決済法は消費税を気にせずに取引に使用することができるようになりました。

2017年9月ビットコインについてのタックスアンサー公開

No.1524ビットコインを使用することにより利益が生じた場合の課税関係(リンク)

タックスアンサーとは、国税庁がホームページで公開している税に関する一般向けの解説集です。

これによって、ビットコインの使用によって発生した利益は、原則として雑所得となり、所得税の課税対象となる(所得税がかかる)ことが広く周知されました。

しかし、この中では”ビットコインの”使用という書き方がされており、ビットコイン以外のアルトコインの使用やトレードについて触れているようには見えません。そのため、仮想通貨同士、あるいはアルトコイン同士のトレードによって得た利益は、課税の対象となるのかどうかについて、課税対象になる・ならないという議論を生みました。

2017年12月「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」の公開

2017年12月1日、国税庁が仮想通貨の取扱い指針を示した文書「仮想通貨に関する所得の計算方法等について(情報)」が公開されました。

この取扱い指針では、仮想通貨の売却・使用・交換等について触れられており、現状考え得る仮想通貨の課税関係については、ほぼすべてが記載されています。一方で、取得レートの基準が明確化されていないなど、所得計算をするにあたっての情報としてはまだ不十分であると言えます。

また、仮想通貨による利益の所得区分が雑所得となることにより、累進税率が適用されるため、最大で所得税の税率が45%、住民税の税率10%をあわせて最大税率が55%となることが話題になりました。

以上が2017年の仮想通貨に関する税制についての主要なトピックです。

仮想通貨税制の今後の展望

「仮想通貨税制」とはいうものの、仮想通貨にあわせて税法が改正されたわけではありません。あくまでも既存の金融商品(株式やFX)を参考にして、税法の条文に当てはめ、解釈しただけであり、今後取扱いが変わることも十分考えられます。

昨年はバブルのように仮想通貨のマーケットキャップ(時価総額)が大きく成長したため、急いで対応する形として、国税庁がとりあえずの指針を示したものであると私は解釈しています。

界隈では、これらの税制に関しての不満がよく見られますが、一会計人の立場からすると、現時点の解釈・制度としては仕方がないのかなという印象です。例えば、総合課税の最高税率が45%というのは今に始まったことではありません。仮想通貨によってそれが再認識されただけで、もともとそういう税制を敷いている国なのです。

「仮想通貨による所得は分離課税とすべき」「仮想通貨の少額決済は免税とすべき」など、仮想通貨をめぐる税制についてはいくつか興味深い意見があります。ブロックチェーンを始めとした仮想通貨の技術やその利用については、税制によってその発展が阻害されるようなことは避けるべきだと考えています。

しかし、一朝一夕で技術がすさまじく発展するわけではないように、税制も一筋縄でいくものではありません。税制の改正については、会計税務サイドからの視点も含めた上で議論していく必要があるでしょう。
議論をする前に、まずは(仮想通貨を抜きにした)既存の税制とその考え方について理解を深めていただければ、と考えています。

次回以降は現在ホットなトピックである、「仮想通貨の分離課税」「少額決済の免税化」について触れていきます。


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