2018.05.10 (Thu) news

他国に市場シェアを明け渡したくない米SEC、ICO規制に迷い

Written by 真田雅幸

仮想通貨市場が生み出したイニシャル・コイン・オファリング(ICO)は、企業に限らず個人やプロジェクトのための新たな資金調達手段だ。ブロックチェーン上に発行されるICOトークンは、既存の証券会社などを通さずインターネット上で取引することができる。

米証券取引委員会(SEC)は、ICOが証券に該当するのではとの見解を強め調査を行ってきた。ICOは、イーサリアムのERC20トークンを利用すれば誰でも簡単に発行できてしまうため、詐欺まがいの資金調達に使われることも多かった。

2月に行われた公聴会の場でSECのジェイ・クレイトン長官は、「私の見解ではすべてのICOは、証券に該当する」と発言していた。ICOが証券として正式に認定されれば、ICOの発行にはSECの承認が必要になり、SEC公認の取引所でしか取引ができなくなる。

これまでの規制の流れから推測するに、ICOはすぐに証券であると認定されるものと思われていた。しかし、SECはICO規制にイマイチ踏み込めないでいる。当局としても新たな技術革新の可能性の芽を摘むことはしたくないようだ。

5月2日に上院で開かれた公聴会でSECのヘスター・ピアース委員は、ICOについて以下のように発言している。

「私は規制が新たな技術の発展を阻害するべきではないと感じており、イノベーションを促す適正な規制方法を我々は模索しています」

同委員はICOの市場動向を注視するとともに、他国の規制当局の動きにも目を向けているようだ。イギリス、U.A.E、シンガポールなどはフィンテック分野の規制構築に成功していると語っている。

仮想通貨やICOのような新興市場の規制を間違えば、自国のイノベーションを阻害するだけでなく、他国に市場のシェアを明け渡すことにもなりかねない。大手仮想通貨取引所バイナンスは、マルタやバミューダ諸島の政府と連携しながらICO市場の世界展開を狙っている。

バイナンスは、ICOがベンチャーキャピタル(VC)を通じた資金調達より効率が良いと主張している。ベンチャーキャピタルでは、起業家は投資家向けのプレゼンやペーパーワークを多くこなさなければならない。一方、ICOではプロジェクトのビジョンを表現する良質なホワイトペーパーを用意することが最も重要なタスクとなり、起業家はよりプロジェクトの開発に自身のリソースを使うことができる。

VCでは通常、少額の投資を受け付けておらず、特定の組織や人物しか参加することができない。しかしICOでは、1万円のような少額でもプロジェクトに投資できる。さらにICOはVCからの投資よりもスピーディーに大金を調達することが可能だ。仮想通貨EOSはERC20トークンを使ってICOを行っており、メインネットをローンチする前にも関わらず1.6兆円規模(1EOS=1970円)の資金をすでに集めている。

ICO市場は、未成熟であり多くの問題も抱えている。投資家は自身でプロジェクトの内容をリサーチし、起業家が今まで何をしてきた人物なのかなどを調べなければならない。また、ICOトークンは一般の証券とは異なり配当金やプロジェクトの所有権を約束するものではない。

VCを通じた資金調達に係るプロセスのコストと調達額とに鑑みると、これから多くの起業家がICOを通じて資金調達を行うようになっても不思議ではないだろう。

小売業界ではアマゾン、自動車業界ではウーバー、ホテル業界ではAirbnb、映画業界ではネットフリックスなどのIT企業が、それぞれの市場で存在感を増している。デジタルプラットフォームを提供する企業が、物理的なモノを消費者に販売している企業をディスラプトしていると言える。

ICO市場のプラットフォーム化は、物理的な現金を所有していないIT企業が金融業界をディスラプトする可能性を秘めている。SECはIT業界のイノベーションの流れを妨げないためにも、ICO規制を慎重に進めているようだ。


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